TRIO R10.7 FM中間周波・レシオ検波トランス
投稿日 2017/04/11
TRIO(トリオ)のFM受信機用中間周波トランス(IFT)とレシオ検波トランスがセットになっているR10.7を入手しました。
雑誌「無線と実験」1958年4月号に掲載された新発売の広告と、付属の説明書が1958年発行となっているので、作られてからかれこれ60年にもなる代物です。ちなみに、日本におけるFM放送の実験開始は1957年12月です。
無線と実験 1958年4月号に掲載された
R10.7 新発売の広告
入手したR10.7はかなり保存状態のよい新品です。
珍しいR10.7の新古品
FM用中間周波トランス2個とレシオ検波トランスのセット
TRIOもそうですがSTAR(富士製作所)などは、当時コイルやIFTなどの高周波ラジオパーツを販売してくれていたので、自作派にとっては神様のような存在でした。当然製造販売はとっくの昔に終了していますが、オークションなどを見ると、まだまだ入手可能なようで、喜ばしい限りです。
その中でもR10.7は珍しい存在。珍品といってもよいかもしれません。
トリオ FM IFT R10.7
説明書と、10.7MHz中間周波トランス2個、レシオ検波トランス
1uHチョーク、3uHチョークが含まれている
R10.7はFM受信機を作るための重要パーツです。二段の中間周波増幅を構成するため中心周波数10.7MHzの中間周波数トランスが2個。レシオ検波トランスが1個付属しています。説明書には簡単な規格のほかに、参考回路と調整方法が記載されています。
レシオ検波トランスの自作は、FM受信機を作る上でハードルの高い部分です。古いAM-FMラジオから外してくるか、自作するしかありませんから、R10.7は救世主と言えます。
R10.7の緒元は以下のようになっています。
中心周波数 10.7MHz
帯域幅 ±100KHz(-3dB)
同調容量 10PF 20PF
Sカーブ特性 ±150KHz
大きさ 22 x 22 x 50mm
中間周波トランス(R10.7A/B)の内部
左 第一中間周波増幅用 1次側(P-B) 10PF(10D) 2次側(G-E) 20PF
右 第二中間周波増幅用 1次側(P-B) 10PF(10D) 2次側(G-E) 30PF(30J)
レシオ検波トランス(R10.7C)の内部
一次側(P-B) 20PF
二次側(G-E) 50PF(50J)
説明書に掲載されている参考回路は、高周波増幅1段(6BA6)、局部発振(12AT7 1/2 ハートレー発振回路)、グリッド注入のミキサー(12AT7 1/2)、中間周波増幅2段(6BA6 x2 二段目は兼振幅制限)、レシオ検波(6AL5)、半波整流(5MK9)の構成になっています。この受信機の諸元は以下のように書かれています。
受信周波数 80 - 90MHz
中間周波数 10.7MHz
感度 8uV(SN比20dBの入力)
出力電圧 0.1V(30uV 30%変調時)
消費電力 30VA
高周波増幅段はアンテナ側に同調回路が無いタイプです。局発の漏れ防止はコンデンサと付属のチョークを使うようになっています。バリコンの容量が記載されていませんが20PF程度のものを使うものと推測します。
中間周波増幅は一般的なものですが、二段目は振幅制限(リミッタ)を兼ねています。B電圧を低くして飽和するようにしているようです。
FM検波は、一般的なレシオ検波です。レシオ検波には振幅制限能力があるためリミッターが省略されるケースがありますが、この例では前段で振幅制限しています。レシオ検波は古いFM付きのラジオや、真空管のアナログテレビで多く採用された回路です
検波出力は50KΩと0.001uFのRCフィルター(50uS)でディエンファシスしています。(FM放送は放送局側でプリエンファシス(高音部強調)しているので、受信側で逆操作を行う。)
出力電圧が0.1Vと低めですので、この後低周波電圧増幅を一段通し、さらに電力増幅してスピーカを鳴らすということになります。
R10.7は製作の難しい中間周波トランスとレシオ検波トランスを提供するものです。中間周波増幅とレシオ検波回路は定番通りとなるかと思いますが、FMフロントエンドはもっと高級な回路にして感度や選択性を改善したり、後段にステレオ・マルチプレクサをつないでステレオ化を試すなど、いろいろ実験してみるのも面白いかと思います。
参考関連記事
R10.7 説明書 1/4
R10.7 説明書 2/4
R10.7 説明書 3/4
R10.7 説明書 4/4
(JF!VRR)