パッドとしてのアッテネーター

投稿日 2021年02月16日

アッテネーターはもちろん減衰器ですが、別名「パッド」とも呼ばれます。パッドは詰め物とか衝撃吸収器といういみですが、電気回路ではインピーダンス整合器という意味で使われます。

​電気信号の電力はインピーダンスの不整合点で反射してロスとなります。なるべくロスを出さないようインピーダンスを整合させるのが電気回路の勘所と言えます。ただ、さまざまな回路を組み合わせるとき、大きなインピーダンスの差があると、整合回路を挟まなければなりません。高い周波数のなるほど、それは厳密に行わなければなりませんが、そこそこの高周波、300MHz程度までであれば、簡易に済ませることがあります。そこで登場するのがパッドです。

​パッドはインピーダンスの整合に使いますがそもそもアッテネーターですので減衰を覚悟して回路に挟むわけです。したがって回路全体としては最終的に目的のゲインになるように、パッドで減衰した分をアンプの増幅度を増やしたりして調整する必要があります。

ATT_1.jpg

自作アッテネーター
インピーダンス50Ω
上から3dB、10dB、30dB

​これはアッテネーターとして作成したもので、パッドとして使う場合は回路に組み込む

さて、パッドは単なるアッテネーターですので、抵抗3本を組み合わせた簡単な回路です。入出力共にインピーダンス50Ωのパッドは、整合がとれている場合、入力側から見ても出力側から見ても50Ωに見えるということですので、SWRは1.0となります。実際に下図のような3dBのパッドの場合で、出力側に50Ωがつながっているとすると、入力側から見たインピーダンスは50Ωとなり、SWRは1.0です。下図の抵抗値は簡易設計で決めた入手可能な抵抗値ですので、50.6Ω SWR 1.01とぴったりとはいきません。

​つぎに極端な不整合を考えると、それはショートとオープンですので、それぞれの場合の入力側から見た合成抵抗を計算すると、図のようにショートの場合17Ω、オープンの場合154Ωとなるので、それぞれのSWRは2.94と3.08です。つまり出力側にどのようなインピーダンスの回路がつながっても約3.0以下には収まることが保証されています。その代わり3dB減衰(1/2)しますが。

                                     パイ型3dBアッテネーター

次に10dBのパッドの場合は下の図のようになります。3dBパッドと同じ計算で10dBパッドの場合はSWR約1.3以下には収まるということになります。インピーダンスマッチングとしてはよいのですが、10dB減衰すると次段のアンプで取り戻さないといけません。

                                   パイ型10dBアッテネーター

​3dBパッドの場合SWR 3.0以下、10dBパッドの場合SWR 1.3以下が保証されるわけですが、ほんとうかどうか確認してみます。ベクトルネットワークアナライザで簡単に観測できます。

NanoVNAで3dBパッドのSWRを観測中
50Ωの純抵抗(キャリブレーション用)を接続

3dBパッド 50Ωの場合のSWR 周波数範囲0.1 - 500MHz
50KHz 1.002 250MHz 1.119 500MHz 1.224

3dBパッド ショートの場合のSWR 周波数範囲0.1 - 500MHz
50KHz 3.042 250MHz 2.901 500MHz 2.571
3dBパッド ショート(0Ω)の場合のSWR 周波数範囲0.1 - 900MHz

3dBパッド オープンの場合のSWR 周波数範囲0.1 - 500MHz

50KHz 3.057 250MHz 3.118 500MHz 3.132

10dBパッド 50Ωの場合のSWR 周波数範囲0.1 - 500MHz
50KHz 1.021 250MHz 1.031 500MHz 1.051

10dBパッド ショートの場合のSWR 周波数範囲0.1 - 500MHz
50KHz 1.190 250MHz 1.212 500MHz 1.226

10dBパッド オープンの場合のSWR 周波数範囲0.1 - 500MHz
50KHz 1.248 250MHz 1.231 500MHz 1.219

CQ出版社「トロイダル・コア活用百科」より抜粋
プリミックスVFO回路
中央のDBMの入出力に3dBパッド、10dBパッドが挿入されている

上の回路は実際にパッドが挿入されている例です。中央のDBMの入力側水晶発振回路と出力側のBPFの間に3dBパッドが「挿入されています。上のVFOの出力とDBM間には10dBパッドが挿入されています。こうしておけばインピーダンスをあまり気にせずに回路設計が出来ます。BPFは50Ωで設計されています。VFOとの間に10dBパッドが挿入されているのは、DBMに入力するにあたり水晶発振回路の出力と十分差をつけるためにVFO側の減衰量を多くしているのだと思います。

(JF1VRR)

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