6BM8を分解する
投稿日 2017/06/02
6BM8を分解する
(物理的に)壊れた6BM8がありましたので、分解してみました。
真空管の内部はなかなかお目にかかれないと思います。
6BM8は言わずと知れた三極五極複合管でオーディオ界では人気の球です。
三極部は高μ(70)の電圧増幅、五極部は5Wの電力増幅用です。
ベースピン配置は9EXです。
静特性を計測した記事があります。
参考記事: 6BM8、8B8 三極五極複合管
今回の6BM8(東芝)はガラス管が破損していましたので、スプーンで軽く叩きながら残っていたガラスを取り除きました。写真のようにベース部分のみ残して自立している状態にしました。
6BM8(東芝製)のガラス管を取り除いた
ガラスはスプーン等で軽く叩けば割れる
ベース部分にひびが入らないように注意する
ガラス管を取り除いた6BM8をサイドから眺める
左端が三極ユニット、中央の白く光っているのはシールド板
右側に五極ユニットが見える
分解ですが、まずニッパーなどでベースピンと各電極との配線を電極側で切り離します。つぎに、上下のマイカ板を取り外します。電極のカシメ部分を真っすぐにし、配線を注意深く取り除きます。グリッドの取外しは特に要注意です。
ベースピンを切り離した。
トップ側のマイカ板
かなり細かい加工がされている
五極ユニットのカソード・スリーブにはヒーターが折り込まれていますが、簡単に抜けました。三極ユニットのヒーターとカソード・スリーブは分離できませんでした。(強く引っ張れば抜けると思いますが)
五極ユニットのコントロール・グリッドは放熱板が付いているため、マイカ板から分離しませんでした。
6BM8を分解して各ユニットを並べてみた
上段左からゲッター、五極プレート、五極サプレッサ・グリッド、
五極スクリーン・グリッド、五極コントロール・グリッドとトップのマイカ板、
五極カソード・スリーブ、五極ヒーター
下段左からピンベース、シールド板、三極プレート、三極グリッド、
三極カソード・スリーブとヒーター、ボトム・マイカ板
(6BM8にかかわらず一般的な事として)真空管を作る上で、その構造がどのように特性に影響するかですが、
1. ヒーター電力が大きいほどエミッション(電子放射)が大きくなる。
2. カソードの面積が広く、温度が高いほどエミッションは大きくなる。
3. 一般的にカソードからの電子放射効率を上げるために、カソード表面には酸化被膜が塗布される。(写真のカソード・スリーブは酸化被膜のため白い粉をふいたようになっている。)
4. カソードとグリッド間の距離はμに関係ないが、グリッド巻き線が細かく、巻き線が太いほどμが大きくなると言われている。
5. グリッドをカソードに接近させるほどgmが高くなる。(ハイgmの球のグリッドは細い線を狭い間隔で巻き、カソードに近づける必要がある)
6. プレートはプレート損失による温度上昇を抑えるため面積を広くし、必要なら放熱板を付ける。プレートの材料は熱放射のよいアルミクラッド鉄板等が使われる。(写真の6BM8の灰色のプレートは、三極、五極共にアルミクラッド鉄板と思われる)もっとプレート損失の大きい球では、カーボナイズド鉄板(鉄板の表面にカーボンを塗布して黒くしたもの)が使われる。ビーム管などのプレートは黒いものが多い。
7. 内部抵抗が低く、μの低い三極管はグリッドとプレートの距離が短い。
8. 五極管の第二グリッド(スクリーングリッド)は、巻き線を細くし、ピッチを荒くしてなるべくスクリーン電流が流れないようにする。カーボナイズ(黒化)して熱放射をよくする。(写真の6BM8のスクリーン・グリッドは他のグリッドと比べると光沢の無い黒色であることから、カーボナイズした巻き線が使われているようです)
9.上下のマイカ板は絶縁を良くするために白色のマグネシアを吹き付けてある。(ほとんどの球のマイカ板は、このために白く見えます)
真空管の構造と特性がどのような関係になるのか、もっと勉強しなければなりません。
(JF1VRR)