パワーMOS FETで電子負荷を作る

投稿日 2011/10/02

電源やバッテリのテストに重宝する電子負荷装置を作ってみました。

負荷装置、つまり電流を吸い込む装置です。

負荷ということであれば、普通はワット数の大きい抵抗でよいわけですが、

さまざまな電流に対応するには、抵抗では大変です。

そこでパワーMOS FETを使用した電子負荷装置をつくることにしました。

今は、パワーMOS FETは安価に入手可能です。

回路は簡易的なものです。

使用したパワーMOS FETは、秋月電子通商で入手した2SK2372です。

このFETは、Vds 500V、Id 25Aのスイッチング用です。

ゲートカット電圧(スレショールド電圧)は5Vくらいの素子です。

つまり5V以上のゲート電圧で飽和し、完全オン(導通状態)となります。オン抵抗は0.2Ωくらいとなります。

電子負荷では、完全にオンになる直前、つまりゲート電圧が5V以下の不完全なオン領域をつかいますが、電子負荷に使えるのはゲート電圧の可変範囲がたった1Vくらいの範囲です。

完全オンの状態では、オン抵抗が低く、ほとんど発熱しませんが、不完全なオン状態では数アンペアでもかなり発熱します。このため放熱には神経を使うところです。

用途は、電源やバッテリの性能試験などですが、数アンペアも連続で流すことは稀です、

最大3Aも流せればよいでしょう。

このFETのId 最大25Aは完全オン状態での話。非常に発熱する不完全オン状態では、放熱にもよりますが1/10ほどが許容値と考えておいたほうがよさそうです。したがって最大3Aとしておきます。実際には最大何A流せるかは、ヒートシンクによる放熱のよさで決まります。

もちろん、2個のFETを並列接続すれば、流せる電流は増やせますが、ゲートカット電圧の規格値を見ればわかるようにばらつきがあり、平等に電流を流すのはけっこうむずかしいことです。しかし、FETは正の温度-オン抵抗特性を持っているので、温度が早く高くなった素子にのみ電流が集中することはなさそうです。このことからFETは並列接続しやすいということになりますが、このへんは実験で確かめるしかありませんので、次回に譲ります。

回路は以下のようにしました。

VR1とVR2で電流計を見ながら予定の電流(Id)になるように、ゲート電圧を設定します。VR1で微調整します。ゲートには保護のため22Ωを直列にいれてあります。

ヒューズは安全のために入れてあります。とくにバッテリ試験のときは大切です。

ゲート電圧は、12Vの安定化電源からとります。

約3A流しています。4.505Vはゲート電圧です。

ヒートシンク上に組んでみました。右のFETは今回未使用です。

シールバッテリをつないで連続3A流すテストを行ってみました。バッテリは12V 8Ahです。

ヒートシンクの冷却ファンはDC 24V用を12Vで回しています。ヒートシンクは12 x 12cmのものです。

約3Aを1時間連続で流してみたところ、FETに触っていられる程度の発熱です。50-60℃と思います。ヒートシンクも温まりますが、連続運転は問題なさそうです。冷却しながらであれば、3Aくらいならまったく問題ないレベルです。

次回は、FET2個で電流容量を増やしてみたいと思います。

補足:バッテリの試験を行うような場合、このような簡易回路では電流を一定に保つことはできません。バッテリの電圧低下とFETのオン抵抗の熱による変化が原因です。

原因はよく分かりませんが、FETが冷えている状態からスタートすると、しばらくIdに暴れがあるようです。VR1で3Aになるように微調整が必要でした。少し温まってきたら安定します。

今後の進展としては、電流、電圧の設定/監視/記録、冷却ファン制御、自動停止、定電流化など、マイコン制御で使いやすくしたいものです。

(JF1VRR)

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