トラ技の付属基板でBD9778Fの実力を見る
投稿日 2012/09/12
ちょっと古い雑誌の付録ですが、トランジスタ技術 2008年10月号の別冊付録「最新DC-DCコンバータの実力と使いこなし」CQ出版 馬場清太郎氏著に付属のDC-DCコンバータ基板を使用して、DC-DCコンバータの実験を試みました。
このDC-DCコンバータ基板にはロームのスイッチングレギュレータIC BD9778Fと周辺回路が搭載されていますので、すぐに実験にとりかかることができました。回路は、非絶縁降圧DC-DCコンバータで、基本仕様は入力12Vで出力5V 最大出力電流0.7Aです。IC自体は2Aまで取れますが、使用しているインダクタの0.77Aが制限になっているようです。
写真1 実験に使用したBD9778F搭載の付録基板
2008年ですから、その後各メーカからより高性能なスイッチングレギュレータ用の専用ICが発表されていると思いますが、DC-DCコンバータの基本的な動作や性能を勉強するにはうってつけの基板です。
BD9778Fは、出力にパワーMOS FET(Pチャネル)を内蔵しており大電流出力(2A)が可能です。入力電圧の耐圧は35Vまでとなっており、動作温度も-40から125度で、条件の厳しいカーオーディオやカーナビゲーションのような用途から小型携帯機器など広い応用範囲が考えられます。
動作時の消費電力は0.69Wですが、何といっても特徴はスタンバイ電流が0uAであり、省エネ化に貢献できます。
発振周波数が固定のICも多いのですが、DB9778Fの場合は、50Kから500KHz可変となっていること、また外部同期機能も搭載しているので、ノイズ設計などでの最適化に便利です。ただし基板は300KHz固定になっています。
形状はSOP8で小型です。最近はオンボードで負荷回路のニーズに最適になるよう設計したローカル電源化する傾向があるので、省スペースも大事です。
写真2 BD9778F搭載の実験基板
IC以外の使用部品ですが、
インダクタは表面実装型のSLF6028T-220MR77 22uH 0.77A、
出力側のコンデンサはTCFGD1A107MCR 100uF 16V ESR 0.7Ωmaxのチップコン、
フリーホイールダイオードにはロームのショットキーバリアダイオード RB050L-40 40V 3A Vf 0.55V
が使われています。
入力側のコンデンサは、手持ちの100uF 25V(ESR不明)の電解コンデンサをつなぎました。
写真3 基板の回路図 VR, R4, C4, SW1は実装していない。
さて、実験は次の項目を確認する形で行いました。部品の最適値を追及した訳ではないので、結果は参考程度のものであり、ICの実力を示しているわけではありません。
実験環境は0-50V 1Aの定電圧電源、電子負荷、オシロスコープです。
○出力電流-出力電圧、リプル特性
0Aから最大1.325Aまで流した場合の出力電圧の変化とリプルを見ます。
リプルは0.7Aと1Aの場合の波形を観測しました。
○効率
入力された電力のうち何%が出力できるか。効率はシャントレギュレータで60-80%、スイッチングレギュレータでは80-90%です。
○入力電圧-出力電圧特性
入力電圧の許容変動範囲を確認します。
写真4 実験の様子 1Aを流してリプルを観測中
写真5 出力電流-出力電圧,リプル特性
出力電流を0から1.325Aまで0.025Aステップで流した場合の出力電圧とリプル特性です。
定格最大の0.7Aで出力電圧 4.93V リプル 41.6mApp(0.84%)
1Aで、4.91V 62.4mVpp(1.3%)でした。
リプルは出力電圧の1%に抑えるのが一般的言われているようですが、定格最大の0.7Aでは1%以内に収まっています。(計測では0.875Aまで1%に収まっています。)
写真6 リプル 出力電流0.7A
リプルの振幅は出力コンデンサのESRにもよります。
周期は1.48uS x 2 = 2.96uSですのでスイッチング周波数は約340KHzということになります。
写真7 リプル 出力電流1A
波形が反って上端がとがってくるのはインダクタの飽和が原因とのことです。
写真8 効率
出力電流0.2Aから0.875Aまでの間、効率85%以上。最高は0.4Aの87.48%でした。
1Aを連続で流しても、ICはほんのり暖かくなる程度です。ロスの少なさを実感します。
写真9 入力電圧 - 出力電圧特性 出力電流0.7Aの場合
入力電圧 5.5Vのとき出力電圧4.59V 6V以降4.93Vでした。
(JF1VRR)