温度調節計による簡易恒温槽
投稿日 2017/01/18
さまざまな試験を行う場合、一定の環境温度が必要になる場合があります。電子機器や部品の試験の場合、ほとんどそうと言えます。計測データを採る場合は、簡易に済ませる場合は最低でもその時の室温を明記しておく必要があります。温度を一定にできるなら、それに越したことはありません。
そこで恒温槽があれば20℃や25℃などでの恒温で試験を行うのに便利です。ただし、恒温槽を購入するとなると高価で手が出ませんので、真夏などで冷却しなければならないような場合を諦めるとして、加温だけで制御できる冬季であれば簡単に作ることができます。以下は、当局で以前から使っている簡易恒温槽です。
簡易恒温槽
見栄えは悪いがなかなか使える
アルミケース代用の槽を保温材とともに段ボールに封入してある
上蓋を取れば簡単に内部にアクセスできる
制御は温度調節計、熱源にはAV100Vのランプを使用
20℃に設定して使用中
PID制御でほぼ正確に設定温度が保たれる
温度制御装置は自作してもよいのですが、今回は温度調節計を使用しました。FA関連の会社を経営している友人からもらったものです。
使用した温度調節計は横河のUT150です。2000年ごろに販売されていたものですので、すでに新しいモデルに入れ替わっていると思いますが、アマチュアが使うには十分です。温度調節計はオークションなどでも出回っているようです。
UT150は小型で扱いやすい温度調節計です。電源はAC100VまたはDC24V。測定入力が熱電対、温度抵抗体、電圧入力から選べます。出力はリレー接点、電圧パルス、電流出力(4-20mA)から選べます。アラーム出力もあります。
今回は温度測定に熱電対を使用し、リレー接点で熱源のAC100V 20Wのランプ2つをON/OFFしました。
簡易恒温槽の内部
電気二重層キャパシタを試験中
左に熱源のランプと、空気撹拌用の小型ファン。右端に熱電対が見える
ランプをON/OFFして温度を制御する
外乱や熱源の不足等でPID制御が集束しない場合は、
ケースの大きさ、保温方法を検討する
恒温槽の本体は他で使用していたアルミのケースです。部品を取り外したので穴が開いていますが、その穴が電源や熱電対などを差しこむ穴になっています。ケースのサイズは奥行30cmx幅25cmx高さ20cmです。あまり大きな物の試験には使えませんが、この程度ですと、大きさが手軽で邪魔にならず、温度の制御もそこそこ早く反応し、電子部品などの試験には十分という感じです。アルミケースは段ボール箱に入れ、隙間を梱包材で保温しています。
熱源はAC100V 20Wの電球2個です。寒い冬でも2個の電球で25℃まで簡単に上がります。ある程度気温が高くなってきたら1個でも制御可能になります。
槽内で小型のファンを回して空気を撹拌しています。DC24VのファンをDC12Vで弱めに回しています。
恒温槽の温度変化
1144秒(19分)で20℃に達し、1700秒(28分20秒)まで少しバウンディングがあって、
そのあとほぼ20℃で安定しています。
20℃に達する時間、バウンディングの時間は周囲温度によります
PID制御は大きく長いバウンディングがなく、安定しています。
温度は、サーミスタを使用したPIC温度ロガーで記録しています。
関連記事: PIC 24FJ64GB002使用の温度ロガー
温度調節計のUT150は、パネル面に設定温度(SP)、現在温度(PV)が大きく表示されており、ボタン操作でSPを簡単に変更することができます。
制御はPID(他の制御モードもある)制御で行うので、設定温度にかなり正確に制御されます。冬季であれば温度の降下は簡単(ランプがOFFになれば簡単に降下する)ですので、寒い日を選び室内暖房せずに10℃から25℃位の範囲で便利に使えます。
以上のように、冬季などの周囲温度が低い時期においては、小型の槽であれば簡単に恒温制御できます。ちょっとした試験に活躍しています。
(JF1VRR)