EF-850の動作確認と調整 AM検波部
投稿日 2017/02/05
EF-850は昭和30年代に販売されたナショナルのMW/SW, FM 3バンドラジオです。
先日からEF-850の電源部、低周波増幅部の順で動作状態を波形観測等で確認してきました。
関連記事: 3バンドラジオ EF-850の回路構成
関連記事: EF-850の動作確認と調整 電源部
関連記事: EF-850の動作確認と調整 低周波増幅部
所有のEF-850はオークションで入手したものですが、前オーナーが劣化が疑われるコンデンサーや抵抗等の交換を行って、ある程度整備されていました。
このラジオをなるべく良好な状態にもっていくために、各部の点検をしていきますが、前回低周波増幅部の動作が確認できたので、今回はその前段、AM検波部の点検です。
3バンド・ラジオ ナショナル EF-850
以下のようにブロックを分けて進めています。
電源部 低周波電力増幅部と低周波電圧増幅部 <- 前回
AM検波部 <- 今回
FM検波部
中間周波増幅部
MW/SW周波数変換部
FMチューナー
同調指示部
EF-850 3バンドラジオ回路図
AM検波部
EF-850のAM検波は一般的な5球スーパーで使われている12AV6の双二極部を使用したものです。
EF-850のAM検波部と波形観測点
A点は振幅変調された中間周波(455KHz)
B点は半波整流された中間周波(455KHz)
C点はフィルター通過後の半波整流信号
左の12BA6が中間周波増幅1段目ですが、FMと共有されているので、すこし複雑な回路になっています。
この12BA6のプレートには増幅された中間周波(455KHz)が現れますが、音声信号で変調されています。今回はSSGで搬送波1MHzを1KHzで振幅変調した信号をラジオに受信させ、波形を観測しました。
CH1: 1KHzで振幅変調された中間周波(455KHz) (A点)
CH2: 12AV6で半端整流された信号 (B点)
観測波形の様に中間周波トランスの1次側(A点)では、B電源電圧に455KHzの中間周波数が乗り、それは1KHzの低周波で変調されています。
その信号を中間周波トランスの2次側に取り出し、12AV6の双二極部(プレートをショートして一極で使っている)で整流しています。このため観測波形のようにB点には上半分が切り取られた半端整流波形の信号が現れます。半波整流しただけなので、455KHzが1KHzで変調されていることには変わりありません。
CH1: 半波整流された中間周波(1KHzで変調されている)(B点)
CH2: 検波フィルター通過後の信号(C点)
C点の信号は約-7.6Vの直流分の上に1KHz 約3Vの信号が乗っている
フィルターによって位相もずれている
12AV6で半波整流された中間周波から変調信号(ここでは1KHz)を取り出すため、250PF、47KΩ、120PFのフィルターで中間周波(455KHz)を取り除いています。このフィルターは一体になった3端子の1個の専用部品です。中身が分かっているので、壊れても対応できます。検波信号は一旦250PFに充電され、フィルターを通過して出てきます。この信号は負の直流電圧に低周波信号が乗っています。
音声再生には直流分は不要なので、音量調節のボリュームを通過後、コンデンサ0.022uFで直流分がカットされます。その後12AV6の三極部で増幅されます。
CH1: フィルターを通過して負の直流成分の上に変調信号が乗っている(C点)
CH2: 2.2MΩと0.03uFのフルターで低周波交流信号をカットし、
約-5.3Vの負の直流分が残った(D点)
この電圧は同調度合いによって大きく変化する
搬送波が全く受信されていない(放送に同調していない)場合は、ほぼ0V
検波フィルター(仮称)を通過した信号は、負の直流成分の上に変調信号が乗っています。音声信号は増幅してスピーカを鳴らせますが、直流分のみを取り出すために2.2MΩと0.03uFで構成されたフィルターを通しています。(D点)
取り出した負の直流分はAVC(Auto Volume Controle)と、同調指示のための信号として使います。直流成分は放送電波の強さによっても変化し、また放送に最も同調したときに負に最大となります。このためこの電圧を見れば、電波の強さと同調の状態が分かります。このフィルターの時定数をどのように設定するかは、MWとフェージングの多いSWなどでの違いで決める必要がありますが、難しい問題です。
検波フィルターにしても、このフィルターにしても、いろいろ時定数を変えて見て、音質や聞き易さ等にどのように影響するか実験してみたいものです。
(JF1VRR)