簡易設計でLPFを作る バターワース3次

投稿日 2021年01月26日

カットオフ周波数6MHzのLPFを作りました。目的は5MHzのVFOのスプリアスを取り除くためです。

​設計は、CQ出版「LCフィルター設計&製作」の正規化LPF簡易設計法に従います。この設計法はインピーダンス1Ω、カットオフ周波数1/2π(約0.159)Hzで正規化された設計値から、50Ω、6MHzに換算する方法で、簡易にフィルターの設計ができます。

形式はバターワース パイ型で、3次LPFとします。設計の詳細は上記図書を参照ください。

​まず、手順に従って設計し、LTSpiceでシミュレーションしてみました。

​M = 6 x 10^6Hz / (1 / 2PI)Hz = 6000000 / 0.159154 = 37699335.24 正規化周波数と目的周波数の比を得る
K = 50Ω / 1Ω = 50.0 インピーダンス係数を得る
L1o = 2.0H / M = 0.053uH 正規化L値をMで割る
L1n = L1 x K = 0.053 x 50 = 2.65uH 50Ωに換算する
C1o = 1.0F / M = 0.026uF 正規化C値をMで割る
C1n = C1 / K = 520pF 50Ωに換算する
C2o = 1.0F / M = 0.026uF
C2n = C1 / K = 520pF 

​LTspiceによるシミュレーション性能
5.000MHz -4dB
6.000MHz -7dB
10MHz -15dB
15MHz -18dB
20MHz -27dB

バターワース3次 LPF カットオフ周波数 6MHzで設計
LTSpiceでシミュレーション

では実際に作ってみます。コイルはトロイダル・コアを使って巻きました。コンデンサーは手持ちの近い値のものを使っていますので設計どおりとはいきません。

​トロイダル・コアは#6材 10MHZ - 30MHZの黄色でよいかと思います。サイズは小さくてよいので手持ちを探したところT-25がありました。ということでT-25-6を使いました。T-25-6の100回巻き当たりのAL値は27です。これで2.65uHのコイルを作る場合の巻き数Nは、

​N = 100 x √(2.65 / 27) = 31.33回

​逆算は L = 27 x (31.33 / 100)^2 = 2.65uH

​トロイダル・コアはきりのいい巻き数でしか巻けませんので31回とすると、

​L = 27 x (31 / 100)^2 = 2.59uH

​となります。2.65uHと2.59uHの違いは下のようにほとんどありません。

バターワース3次 LPF カットオフ周波数 6MHzで設計​
L1を変数にして2.65uHと2.59uHでシミュレーション
ほぼ重なっている

実装は小さなフラット基板の上に行います。トロイダル・コアT-25-6に巻く線材は2UEW 0.16mm ポリウレタン銅線です。33回も巻くので細い線を使いました。巻き終わってLCRメーターで測定すると2.85uHでした。ちょっとカットオフ周波数が下がりますがこのままいきたいと思います。

​トロイダル・コア T-25-6にポリウレタン銅線31回巻き
2.85uHとなった

​基板上に組み込んでLPFを完成させます。コンデンサーは520pFですが手持ちがないので1000pFのチップ・コンデンサーを2個直列にしました。小さい長方形の基板を用意し、銅箔を張りSMAコネクタを取り付けました。

​小型長方形の基板に銅箔を貼り付けSMAコネクタを取り付けた
トロイダル・コアに巻いたコイルとコンデンサーでパイ型のLPFを実装
コンデンサーは1000pFのチップ・コンデンサーを2個直列にした

​コイルが設計では2.65uHに対して実際には2.85uH。コンデンサーは520pFが無いので1000pF直列の500pFになってしまいました。これでNanoVNAで特性を観測します。

​設計通りとはいきませんが、カットオフ周波数(-3dB 赤マーカー)が5.79MHz。10MHz(緑マーカー)が-13.6dB。15MHz(青マーカー)が-21.2dBとなりました。

シミュレーション性能と実測
6.000MHz -7dB -3dB
10MHz -15dB -13.6dB
15MHz -18dB -21.2dB
20MHz -27dB -28.5dB

​設計値とそんなにかけ離れた結果にはなっていません。

​次回は5次を作ってみます。

​(JF1VRR)

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