簡易設計でLPFを作る バターワース5次
投稿日 2021年01月27日
前回3次のLPFを作りましたが、今回は5次のLPFを作ります。カットオフ周波数は同じ6MHzです。
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設計は今回もCQ出版「LCフィルター設計&製作」の正規化LPF簡易設計法に従います。この設計法はインピーダンス1Ω、カットオフ周波数1/2π(約0.159)Hzで正規化された設計値から、50Ω、6MHzに換算するため簡易に設計できます。
形式はバターワース パイ型の5次LPFです。設計の詳細は上記図書を参照ください。
M = 6 x 10^6Hz / (1 / 2PI)Hz = 6000000 / 0.159154 = 37699335.24
K = 50Ω / 1Ω = 50.0
L1o = 1.61803H / M = 0.043uH
L1n = L1 x K = 0.043 x 50 = 2.15uH
L2o = 1.61803H / M = 0.043uH
L2n = L1 x K = 0.043 x 50 = 2.15uH
C1o = 0.61803F / M = 0.016uF
C1n = C1 / K = 328pF
C2o = 2.0F / M = 0.053uF
C2n = C1 / K = 1061pF
C3o = 0.61803F / M = 0.016uF
C3n = C1 / K = 328pF
LTSpiceによるシミュレーション性能 3次と5次の比較
3次 5次
5.000MHz -4dB -1dB
6.000MHz -7dB -8dB
10MHz -15dB -28dB
15MHz -18dB -42dB
20MHz -27dB -52dB
LTSpiceによるシミュレーション結果
上は前回作成した3次LPFの特性
下は今回設計した5次LPFの特性
今回もコイルはトロイダル・コアを使って巻きました。コンデンサーは手持ちの近い値のものを使っていますので設計どおりとはいきません。
トロイダル・コアは#6材 10MHZ - 30MHZの黄色、サイズT-25のT-25-6を使いました。T-25-6の100回巻き当たりのAL値は27です。これで2.15uHのコイルを作る場合の巻き数Nは、
N = 100 x √(2.15 / 27) = 28.22回
逆算は L = 27 x (28.22 / 100)^2 = 2.15uH
トロイダル・コアはきりのいい巻き数でしか巻けませんので28回とすると、
L = 27 x (28 / 100)^2 = 2.12uH
となります。2.15uHと2.12uHの違いはわずかなので特性にほとんど影響はありません。
実際に巻いてみると28回で2.504uHとなりました。これをL1で使用しました。L2も巻く必要がありますが、3次の時に巻いた2.85uHのコイルがありますのでそのままL2流用しました。設計とちがいますが、まぁ、よしとします。(トロイダル・コアのコイル巻きは結構たいへんなので、このへんは手抜きです)
コンデンサはちょうどの値のものはありませんので、あるものの組み合わせで間に合わせることになります。C1とC3の328pFは100pF 3個と33pFのセラミックコンデンサーの並列で作りました。C2の1061pFは1000pFのチップコンデンサーで間に合わせました。
実装は、前回の3次LPF基板の部品を外して5次に作り変えました。
バターワース パイ型5次LPFの実装
実装を終えたLPFの特性をNanoVNAで観測してみました。結果は6.000MHzが-3.7dB、10MHZが-25.5dB、15MHzが-42.6dBとなりました。
LTSpiceによるシミュレーション性能 3次と5次の比較
3次 5次 5次実装
5.000MHz -4dB -1dB -1.5dB
6.000MHz -7dB -8dB -3.7dB
10MHz -15dB -28dB -25.5dB
15MHz -18dB -42dB -42.6dB
20MHz -27dB -52dB -57.8dB
まずまずの結果です。
次に矩形波を入力して、基本波以外の高調波成分がどの程度減衰するかを観測してみました。5.000MHz 50% Dutyの矩形波です。前回作った3次LPFの結果も掲載します。
入力矩形波のスペクトラム
バターワース パイ型3次LPF通過後
基本波5.000MHz -22.5dBm、10MHz -63.9dBm、15MHz -52.0dBm
基本波との差 10MHz 41.4dB, 15MHz 29.5dB
バターワース パイ型5次LPF通過後
基本波5.000MHz -25.0dBm、10MHz -78.0dBm、15MHz -74.5dBm
基本波との差 10MHz 53.0dB, 15MHz 49.5dB
今回試してみたLCフィルターの簡易設計法は非常に有効であるというのが感想です。これだけ簡易に設計できるというのはアマチュアにとって福音です。また、コイルを巻くにあたってのトロイダル・コアの使用は、巻き数によってかなり正確にインダクタンスが設計できるということも実装を容易にしています。
LTSpice、NanoVNA、TinySAなどの無償、または廉価なツールもアマチュアには手放せないものです。先輩諸氏に感謝します。
(JF1VRR)