太陽電池の特性を実測する(その2)

投稿日 2014/09/09

前回は1.15Wの小型太陽電池のI=V特性を計測しましたが、今回は25Wの太陽電池です。

前回同様、太陽電池(ソーラーパネル)に電子負荷をつないで特性を調べてみました。

今後の本格使用に備えて以下を確認しておくことにしました。

〇I-V特性の計測と最大パワー時の出力の確認(傾斜角可変)

〇部分的に影に入った場合の影響

〇最大出力時の電圧を維持した場合の特性

今回使用した太陽電池は、OPSM-SF1025 25Wのパネルです。仕様は以下の通りです。以前秋月電子で購入しましたが、今は扱っていないようです。

日射強度1kW/㎡ AM1.5 パネル温度25℃の条件下

公称最大出力 Pm: 25W

公称最大出力動作電流 Ipm: 1.39A

公称最大出力動作電圧 Vpm: 18V

公称短絡電流 Isc: 1.53A

公称開放電圧 Voc: 21.6V

寸法: 540 x 445 x 30mm

重量: 3.2kg

逆流防止ダイオード内蔵

太陽電池 OPSM-SF1025
芝生の上に置いただけです
傾斜角は約30度です
わざと陰を落して実験中

日射強度1kW/㎡ AM1.5 パネル温度25℃の条件下というのは、JISC8919に定められている条件のようですが、日射強度1kW/㎡というのは年に数回しかない空気の澄んだ晴天の最高日射という最も条件のいい日射だそうで、そうそう望めません。

AM(Air Mass)は太陽光が空気の層を通過する距離に比例した数値で、赤道直下がAM1.0で、緯度によって異なります。日本はちょうどAM1.5ということです。

また、太陽に対してパネル面の受光角が最適の場合の話だと思います。

残念ながら太陽光に代わる一定の光源は持ち合わせがないので、太陽光で計測するしかありません。なるべく安定した日射の日を選んで実験しましたが、気まぐれな自然相手ですので、設備の揃った実験室のようには行きません。日射量、入射角、気温などが時々刻々変化します。

〇I-V特性の計測と最大パワー時の出力の確認(傾斜角可変)

I-V特性は、太陽電池の代表的な特性で、負荷の短絡(ショート)から解放(オープン)の出力電流と出力電圧の変化です。よく見るグラフですが、形はローパスフィルターのような特性で、ほぼ電圧一定(定電圧)の部分と、ほぼ電流一定(定電流)の部分からなります。

計測は簡単で、太陽電池に抵抗負荷(可変抵抗)をつなぎ、出力電圧と出力電流を観測します。電子負荷はこのために最適なツールで、CVモード(電圧一定モード)にして、プロットしたい出力電圧になるように電圧を設定しながら、各電圧の出力電流を記録していきます。

太陽光を一定に減衰(つまり暗くする)のは難しいので、今回は傾斜角を変えてみました。これはパネルの性能を見るという意味ではなく、入射角度の影響を見る意味があります。

傾斜角度は、0度、30度、45度、60度、90度(垂直)で実験しました。パネルは太陽の方向に向けて傾斜角度だけ変えています。(9月9日11時計測 晴れで比較的安定)

安定した晴れ 9/9 11:00ごろ 傾斜角を変えて実測
0度、30度、45度、60度、90度(垂直)

今回は30度、45度がほぼ同じ結果になっています。0度、90度ではさすがに若干パワーが落ちています。(最適な傾斜角度は太陽の高度によって変わります。)

実験の結果から(パネルが太陽に向いている場合)30度から60度の範囲であれば大差無いパワーが得られるようです。ただし、日射が斜めから差す(パネルが太陽に向いていない)場合は、また変わってくると思いますが。

傾斜角30度で3回実測
最大パワーは13.06V辺りで18.5W出ています
日射が安定していると、このようにほぼ同じ曲線を描きます
18.5Wは公称最大出力電力25Wの74%です

上記グラフで、右端が公称開放電圧 Voc方向となりますが、21.6Vにはなっていません。これは逆流防止ダイオードのVfや、接続ケーブルの電圧降下などの影響と思われます。

またこのパネルの公称最大出力動作電圧 Vpmは18Vとなっていますが、実験の結果は13.06Vあたりになっています。

一般的にはVoc(上記グラフでは19.06Vあたり)からVpm(上記グラフでは13.06Vあたり)までの領域(定電圧領域と言えなくもない)が使用範囲となります。ただし電圧範囲を監視するするのが面倒な場合は、簡易的にはVpm固定で制御する方法を採用するようですが、公称最大出力動作電圧をそのまま信じて採用すると、最大パワーを取り出せないことになりそうです。いずれにしても出力電圧がVpm以下に下がるような電流を吸い込まないように制御する必要があります。

定電圧領域がなるべく垂直に立っており、最大パワー点が右にあるほどパワーの出るパネルと言えます。

〇部分的に影に入った場合の影響

本格使用のときは、もちろん一日中陰が落ちないような場所に設置しますが、ちょっと興味があって実験してみました。

このパネルにもバイパスダイオードが付いています。もしこのパネルを複数組み合わせた場合、そのうち一枚に陰が落ちてて出力電圧がダイオードのVf以下に下がった場合、そのパネルをバイパスするためのダイオードです。ただし、これはパネル全体の話ですので、今回のようにパネルが1枚しかない場合は、無効です。

今回はパネルの一部に陰が落ちた場合に出力がどうなるかを確認しておきました。先の写真のようにポールを立てて陰を落しています。

一部が陰に入った太陽光パネル
出力電流、電力2: 陰が無い場合
出力電流、電力5: 陰を入れた場合

太陽光は一定ではないため、厳密な比較はできませんが、一部が陰が落ちただけで、明らかに大幅なパワーダウンとなりました。 

〇出力電圧を14.0V一定にして一日放置してみる

これまでの実験で13Vから14V付近が最大パワーが出る電圧ということが分かったので、出力電圧が14.0V一定になるように電子負荷でコントロールし、出力電流の変化を見てみました。

日射が一定ならば出力電流も一定ですが、太陽光は時々刻々変化します。

この日は晴れときどき曇り、のち小雨という、わりと変化の激しい天気でした。

太陽電池の出力電圧が14V一定になるように
吸い込む電流を自動調整しながら1日放置
正午前から開始したため全体には右下がりだが、
夕刻かなり暗くなるまで14Vを維持している

開始は11:30分。すぐに太陽は南中し、あとは徐々に西に移ります。このため出力電流は全体的に右下がりとなっています。時々太陽が雲に隠れ、急降下しています。15時前あたりから完全に曇り、16時ごろ雨が降ってきて中止しました。

日射が強いと1.4A(19.6W)くらい取れています。15時以降は曇ってかなり暗くなりましたが、それでも出力電圧14.0Vを維持しています。

まとめ

以上の実験結果から、パネルの固定設置の祭の傾斜角度は30度から60度くらいの範囲内であれば、パワーへの大きな影響はないようです。

パネルが一枚の場合、一部分でも陰が落ちるとパワーに大きな影響があることが確認できました。

最大パワーがとれる電圧Vpmは、公称最大出力動作電圧の18Vにくらべ、13Vから14V付近とかなり低いことが分かりました。公称値を信じて制御すると最大パワーでの運転ができない可能性があるようです。

朝から夕方まで、よほど暗くならない限り、一定電圧を保持することができるようです。今回は14Vを夕方暗くなるまで一日中維持できました。吸い取る電流さえ制御すれば多少曇っても最大パワー電圧を維持できる(定電圧領域で運転できる)ようです。

(JF1VRR)

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