TS-670 なつかしいリグ

投稿日 2023/01/05

Kenwood Quad Bander TS-670
7MHz、21MHz、28MHz(29MHz FM)、50MHz(51MHz FM)の4バンドを搭載
オプション
PS-21 13.8V 4.5A 電源
GC-10 ゼネラル・カバレッジユニット 0.5 - 30MHz
VS-1 音声合成ユニット 周波数読み上げ
MB-430 モービル・マウンティングブラケット
MC-42S 500Ωダイナミック・ハンディー・マイク

その昔、一世を風靡したKenwoodのTS-670です。当時、電話級(4級)の免許を取って、さてHFに出たいなと考えたとき、購入対象候補のひとつになるのがこのTS-670でした。7MHz、21MHz、28MHz、50MHzの4バンドが搭載されているQuad Banderです。パワーは10Wのモデルのみ。100Wへのパワーアップはできません。

​モードはSSB(LSB/USB)、CW、AM、FMを搭載しています。FMの標準搭載はうれしいですね。29MHz、51MHzのFMにも使えます。

​小型の無線機ながらVFOはA/B 2個搭載しており、スプリット運用(Aを受信、Bを送信に使うなど)も可能です。この時代に登場したメモリ・チャンネルと、そのスキャン・モードなども搭載しています。RF ATT、ノイズブランカ(NB)、CW用フィルター(オプション)、AM用フィルター(オプション)、IFシフト機能、スケルチ、周波数ステップ、送信パワー調整、音声合成ユニット(周波数を読み上げ)VS-1 (オプション)などの機能があります。ゼネラル・カバレッジユニットGC-10(0.5MHzから30MHz)も面白いオプションです。

​モービル・ブラケットも用意されているため、当局では購入当時よく車載で移動運用に使っていました。HFと50MHzのアンテナは別々のコネクタに接続できますし、同じコネクタにつなぐこともできます。送信パワーが10Wに限られる点が少し残念ですが、50WのリニアアンプHL-50Bなどをつないでパワーアップするのもよいかも知れません。

Kenwood Quad Bander TS-670のカタログから
7MHzは国内常用バンド
21MHzはコンディションの良い時に7MHzではできない局と
28MHz(29MHz FM)はコンディションのよいときに国内遠方やDXと
50MHz(51MHz FM)は移動や国内のローカル。夏場のEs発生時のエキサイティングな交信など

搭載バンドは7MHz、21MHz、28-29MHz、50-54MHzですが、免許をとったばかりの初心者にとっては、興味のそそられるバンドをうまく選んで搭載していると感じるでしょう。TS-670の販売当時ははまだWARCバンドは無かったし、3.5MHzはアンテナが張れない。14MHZは免許が無いので出られない。144MHz, 430MHzは性に合わない。となると、7、21、28、50MHzでよかったし、大変興味深いバンドに出られる無線機だったのかも知れません。特に50MHzのSSBとFMに出られる点は、このリグで50MHz初デビューを考えた局も多かったと思います。また、ちょっとマニアックですが、29MHzのFMにも出られる点。10WながらDX相手にスプリット運用もできるなど、ちょっと冒険もできる点もよいですね。

モービルも意識されていて、ダイヤルロック、ダイヤルトルクの加減、VS-1音声合成ユニット(VS-1)による周波数の読み上げ。メモリ・チャンネルとスキャンモードなど。スケルチなど車載に便利な機能も搭載しています。

CWについてはセミ・ブレークインで、エレクトリック・キーヤーは搭載されていません。ブレーク時間とサイドトーンの調整はできるようになっています。CWフィルターは1つ搭載可能です。

TS-670のRFユニット
SSBフィルター 8.83MHz YK-88S3(標準)
CWフィルター 8.83MHz YK-88C 500Hz/YK-88CN 270Hz(オプション)
AMフィルター 8.83MHz YK-88A(オプション)
左端はFMユニット

TS-670のIFユニット
左端はゼネラル・カバレッジ・ユニット GC-10(オプション)
上部ダイヤルの左 音声合成ユニット VS-1(オプション)

TS-670のコントロール・ユニット
三段の真ん中に挟まっている基板
CPUやPLL回路など

TS-670のフィルター・ユニット
手前はファイナル・ユニット

TS-670の代表的な故障「受信感度低下」はフィルター回路のリレーの接触不良が原因

リレーをすべてomron G6E-134P-US 12V(​黒い箱状に見える)に交換済み

オプションでGC-10 ゼネラル・カバレッジユニットを搭載できます。このユニットは0.5MHzから30MHz、つまり中波のラジオ放送から30MHzまでの短波を連続的に受信できるようにするユニットです。つまり当時はやっていたBCLにも使える無線機に変身します。周波数は1MHz単位で切り替えられます。AMのラジオ放送もよく聞こえ、外国の短波放送なども、AMの独特の音とフェージングの電波をよく聞いたものでした。

TS-670は、IFが8.83MHzのシングルスーパー・ヘテロダインです。この頃はすでにPLLが搭載されており、いささか複雑な周波数構成で搭載ハムバンドからGC-10の0.5MHzから30MHzをカバーできるようになっています。VFOやRITもPLLの一部です。このようなPLLを駆使した無線機は、昔のVFOとキャリア発振のミックスくらいのわかりやすい回路ではなく、様々な周波数の信号が内部で作られ、それらを逓倍したり、分周したり、ミックスしたりして複雑な周波数構成になっています。

​これまで車載で使ったり、自宅で使ったりと、引っ張りまわすことの多かったリグですが、感度低下の故障(フィルター・ユニットのリレー交換で対応)以外は、故障はありません。このような昔のリグは、メインダイヤルの周波数飛びや、ディスプレイの抜け、致命的なPLLの不調などが起こるものですが、このTS-670に限ってはまだ現役で使える状態を保っています。

(JF1VRR)

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