TS-511XNの修理 受信不能 ガリガリ音のみ
投稿日 201708/06
オークションでジャンクとしてTS-511XNが安く出品されていましたので、さっそく落札しました。
入手したTS-511XN(上)
到着したTS-511XNは見た目はかなり上物で、おそらく早いうちに故障し長く押し入れにでも放り込まれていたのでしょう。受信不能です。スピーカーがガリガリいうだけ。
ここは焦らず電源を入れる前に一通り目視点検。
焦げた部品、割れた部品などがないか
配線の切れ、接触などがないか
基板パターンの剝れ、錆びなどはないか
基板の真空管のピンのパターンの半田にひび割れは無いか
水没の跡は無いか
交換された部品や、改造跡はないか
などを点検します。
入手したTS-511XNは本体のみで電源がありませんが、当局は開局当時からTS-511Xを所有しているので、その電源が使えます。(だから落札したのですが)
フロント、内部ともに比較的綺麗
短期使用の長期保管品か?
このTS-511XNはシャーシの左半分がへこんでおり、そのためVFOも傾いている
重いものが当たった痕跡はないが
電源ケーブル、外部VFOのソケット、ファンのコード、アンテナを接続して電源オン。真空管のヒーター点火を確認します。
音量ボリュームを上げていくと、ガリガリいうばかりで信号が受信できません。はやりジャンクか?それにしても物は綺麗です。なんとか生かしたい!
うちに来て間がないので、まだすねているのかも知れませんので、しばらく電源を入れたまま放置しておきました。
その間にいろいろ観察です。
まずトランシーバの心臓部VFOの発振を確認します。発振出力の端子がVFOボックスの横に出ているので、オシロのプローグを簡単に当てられます。可変範囲も問題ないようです。
Sメータはなにやら信号らしきもので触れています。そこで、グリッドディップメータを持ち出して、7MHzに合わせSメータの針が振れるかを確認します。受信しているようです!
これで受信部は動いているなと判断。
そうこうしていると、一瞬受信ノイズが聞こえました。また一瞬、交信の音声らしきものが聞こえました。うむ! これはオーディオ段が悪く不安定なようだと判断。
さっそく、音量ボリュームの中点をグランドに落してみます。ガリガリ音はピタッと止み、静かになりました。
TS-511XNは、回路図のようにオーディオ(AF)段は1枚の基板(送信時ミュート回路、サイドトーン回路も乗っている)になっています。検波出力は一旦2SC458 1石のプリアンプに入り、音量ボリュームを経由して低周波増幅および電力増幅に入ります。送信時ミュート回路(RLが入力)は、送信時にオーディオ段を停止させる回路ですが、ミュートはこの1石アンプで行っています。スケルチが効いたように、スピーカの音が時々消えるような現象は送信時ミュート回路を疑ってみるべきです。
トリオ TS-511X回路図より一部抜粋(AF UNIT周辺)
中央最下部にAG GAIN(音量ボリューム)がある
まず、このボリュームの中点をグランドに落してみる
ガリガリ音が消えるとオーディオアンプはOK
DETとAV2間をショートしてプリアンプをバイパス
これで受信音回復
音量ボリュームの中点をグランドに落してガリガリが止まるということは、2SC458のプリアンプか、それより前段ということになります。この時点では、C14 0.47uFが怪しいとふんでいました。
次にこのプリアンプをバイパスするために、回路図のDETとAV2をショートしました。これであっさり受信OK! 原因はプリアンプと確定。
AF UNITのDETとAV2をショートしてみる
ガリガリ音がなくなり受信可能になった
そこで、まずカップリングコンの0.47uFを交換しましたが直らず。ときどき受信音が聞こえるという現象から2SC458が壊れていると判断し交換。これで直りました。
まったく問題なく受信できています。
原因はプリアンプの2SC458だった
高校時代からストックしてあった2SC458が今頃役に立ちました。
今回入手したTS-511XNは見た目は綺麗ですが、VFOボックスが左に傾いています。よく見るとシャーシの左半分が少しへこんでおり、それにともなってVFOが傾いているようです。相当大きな力が加わらないとこうはなりませんが、重いものが当たった跡や傷はありません。不思議です。最初はシャーシがへこんだ時のダメージがどこかにあるはずだと、探しましたが見当たりませんでした。
交換したカップリングコン 0.47uFとプリアンプの2SC458
ガリガリ音の原因は2SC458だった
とにかくジャンクで入手したTX-511XNが受信可能になったので一安心。細部の調整や送信部の確認は今後のお楽しみです。
(JF1VRR)