2SC1815GR 同調型1石アンプを作る
投稿日 2022年03月03日
2SC1815GRによる同調型1石アンプのシミュレーション
エミッタ接地の一般的な回路に7MHzの同調回路を持たせたもの
振幅10mVの入力信号(sig)からコレクタに700mV(out)を得ている
36.98dB(70.65倍)の電圧利得がある
2SC1815のトランジション周波数(fT)を見ると80MHzとなっていますので、7MHzくらいなら余裕で増幅してくれそうなので、7MHzの同調型1石アンプを作ってみました。例によってまずはLTSpiceによるシミュレーションからです。
使用したトランジスタは2SC1815GRです。ネットから持ってきたデバイス・モデルではhFEが300となっています。回路はCQ出版の「定本 トランジスタ回路の設計」を参考にしました。この本では2SC2671 fT 3.5GHzを140MHzで使っていますが、ここでは7MHzとしました。
回路は上記のように一般的なエミッタ接地回路ですが、コレクタ側に並列同調回路を持っています。この同調回路を7MHzに共振させるにはコイルを5uHとすると、コンデンサに102pFが必要です。ただ、あまりにも特性がシャープなので、そのままシミュレーションすると出力波形が歪みますので、1KΩの抵抗を抱かせてQを下げています。
シミュレーションにおいて、入力が無い状態(sigV=0V)で各部の電圧を見ると、
Vb(Q1) 1.65V
Vc(Q1) 4.5V
Ve(Q1) 926.95mV
I(R3) 509.028uA
Ib(Q1) 9.198uA
Ie(Q1) 2.809mA
I(L1) 2.800mA
Vbe(Q1) 722.49mV
Vce(Q1) 3.573V
となりました。
電圧利得は数々のLTSpiceの有用な情報をアップしてくれているYouTubeチャンネルの「伝スパ」を参考に、シミュレーション結果の5周期分の波形から波高値を取り出してdB計算する手法で求めました。あまり正確ではありませんが、36.98dB(70.65倍)の電圧利得が得られました。
i_sig_pp: PP(v(sig))=0.0199946 FROM 0 TO 1.42857e-006
i_out_pp: PP(v(out))=1.41255 FROM 0 TO 1.42857e-006
i_gain: i_out_pp/i_sig_pp=70.6468
dc_db: 20*log10(i_gain)=36.9818
並列共振回路で7MHzに共振させた
少しブロードにするため1KΩを並列に抱かせてある
次にシミュレーションをac解析に切り替えて、共振点を確認してみました。7MHz付近で共振しています。1KΩを並列に抱かせているのでかなりブロードになっています。
空中配線で実装してみた
抵抗は5% 誤差、コンデンサはセラミック、
コイルはFCZハムバンドコイル 7MHz 10Kを使用
電源電圧4.5V
中央がさかさまの2SC1815GR
実装してみる
シミュレーションの結果どおりになるか実装して確かめてみました。並列共振回路は5uH 102pFで自作もできますが、FCZハムバンド・コイルの7MHz 10Kコイルの手持ちがあったので利用しました。FCZ 7MHz 10Kコイルは120pFで7MHzに同調するようですので、インダクタンスは5uH弱のようです。今回は100pFを抱かせて、コアで7MHzに調整しました。1KΩも並列にしてQを下げています。
入力信号端子をショートして無信号状態で各部の電圧を計測すると以下のようになりました。前述のシミュレーションの場合も並記しました。(I(R3)とIe(Q1)は電圧から計算で求めました。)
シミュレーション 実測
Vb(Q1) 1.65V 1.64V
Vc(Q1) 4.5V 4.53V
Ve(Q1) 926.95mV 966mV
I(R3) 509.03uA R3 両端2.89V / R3 5.6KΩ = 516uA
Ib(Q1) 9.20uA ---
Ie(Q1) 2.81mA Ve(Q1) 966mV / R1 330Ω = 2.93mA
I(L1) 2.800mA ---
Vbe(Q1) 722.49mV 688mV
Vce(Q1) 3.573V 3.57V
ほぼ近い値になっています。
電圧ゲインの実測値
7.00MHz 34.47dB(52.9倍) V(out) 529mV
出力電圧の実測波形
次に各周波数のゲインを計測しました。上のグラフと観測波形のように共振特性はブロードで、7.00MHzの電圧ゲインは34.47(52.9倍)、529mVでした。波形観測でも524mVを示しています(観測波形では使用プローブの関係でΔ52.4mVと表示されていますが、実際の電圧はx10倍です)。いずれにせよシミュレーション結果の36.98dB(70.65倍) 700mVとは違っています。別のオシロのFFTでスプリアスを観測しましたが、目立ったスプリアスはありませんでした。
(JF1VRR)