真空管のエミッションを計測する
投稿日 2010/11/15
オークションで出回っている真空管試験機は多くがエミッションを計測して、真空管の良否を判定するものです。これはテレビのサービスマンが、現場で手軽に不良球を見つけることができるように、簡易な試験を可能にする試験機です。
真空管の劣化はヒータの熱電子放出能力(エミッション)が衰えることによるものが多いようで、エミッションを測定することは、その簡易さ、スピードの面で理にかなっていると言えそうです。
真空管試験機がどのような測定結果と根拠で良否をメータ表示しているかは、別の機会に調べてみることにして、今回は6AQ8と12BH7A 5本のエミッションを計測してみることにしました。
計測回路は以下の通りで、陰極(カソード)以外の電極をすべてプレートにつなぎ、実質二極管の状態にして、プレートに電圧(Ep)を加えます。
どの程度のプレート電流が流れるのかデータが無いので、電子回路シミュレーターTINA7で調べてから実測することにしました。
6AQ8 TINA7によるシミュレーション Ep 4Vで約40mA
6AQ8は電圧増幅三極管ですが、この手の球にしてはヒータ電流が大目の0.435Aで、高μにするためにエミッションを高めていることが予想されます。TINA7の解析結果のように、Ep 4Vでプレート電流が40mAくらい流れるようです。
12BH7A TINA7によるシミュレーション Ep 4Vで約18mA
それに対して、12BH7Aは中μの電圧増幅三極管ですが、Ep 4V で約18mA流れるようです。
もちろんTINA7の解析結果は真空管の劣化は考慮されていません。
さて、実測はどうでしょうか。
6AQ8, 12BH7A 5本の実測結果
実際、6AQ8 (63)のエミッションは高いようで、ここではEp 4VでUNIT1が35mAくらい、UNIT2が31mAくらい流れています。
12BH7Aは、5本計測してみましたが、管理番号D 59の球がUNIT1,2の値が揃っておりEp 4Vで、約15mAですので、ほぼシミュレーション通りです。ただこのように5本計測してみるとかなりばらつきがあることがわかります。これは使用年数や使用環境の影響かも知れません。
この12BH7A (D 59)のEp-Ip特性実測データは、ここにあります。
(JF1VRR)