56(UY-56) 検波増幅用 傍熱三極管
投稿日 2015/05/16
OBにいただいたUY-56の特性を実測してみました。
マツダのUY-56
手持ちはこれ一本のみ
このような古い国産球ははっきりした特性データがなかなか見当たりません。
ネットで得られる情報ではヒータ電圧/電流はUY-56Aの場合2.5V 800mAとなっていますが、今回2.5Vで実測した限りでは正常な計測値が得られませんでした。。(グラフ1)
当局手持ち球の個体不良の可能性がありますが、ヒータ電圧を上げて、ヒータ電流が約1A流れるようにして計測した結果、まずまずの結果が得られました。
グラフ1
UY-56をヒータ電圧2.5Vで点火した場合の特性
グリッド電圧が浅い場合に、特性が右に寝てエミッション不足を示している
ヒータ電圧が2.5Vの場合、
覗きこんでなんとか点火しているのがわかるくらい、
ヒータが暗い
今回の球はUY-56であり、UY-56Aではありません。56と56Aのはっきりした違いは不明ですが、56Aはヒータ電流を800mAに低減したものとの情報があります。
では、UY-56は何アンペア流せばよいのかよくわかりません。
電圧を高くしすぎてヒータを切ってしまっては元も子もないので、とりあえずヒータ電流約1A流れる、3.3Vで計測してみました。
2.5Vでは明らかにヒータの点火状態は暗く、のぞきこまないとわかりません。しかし3.3Vで点火すると下部のヒータがすこしはみ出た部分が赤熱しているのがわかります。このほうが正規の点火状態に見えます。(3.3Vという中途半端なヒータ電圧の球が存在するのかどうか不明)
ヒータ電圧による特性への影響は12BH7Aで以前実験しています。
この実験によると、ヒータ電圧が低い場合、とくにグリッド電圧が浅い(0Vに近い)ほど顕著に影響が表れることが確認できます。
エミッションが不足するために、プレート電圧が高くなるにつれ、カソードからの熱電子の供給が追い付かず、特性が寝てしまっています。
今回UY-56のヒータを2.5Vで点火した場合、このエミッション不足時の特性に似ています。(グラフ1)
グラフ2
UY-56をヒータ電圧3.3Vで点火した場合の特性
このときヒータ電流は約1A
3.3Vであれば、ヒータは通常の点火状態に見える
代表値 Vp 200V Vcg -12.5V Ip 4.21mA
そこでエミッションを上げるためにヒータ電圧を3.3Vにしてヒータ電流を約1Aながすようにして計測するとそれなりの特性が得られました。。(グラフ2)
ただし、グリッド電圧の浅深によって、特性が等間隔ではありません。
はたしてこの球がエミッション低下による不良減少現象なのか、ヒータ電圧を3.3Vとして使うべきなのかは不明です。(手持ちのUY-56が1個なので比較のしようがありません)
UY-56は、ラジオなどの検波出力を増幅し、電力増幅段をドライブする目的でつくられたようですが、検波兼増幅は6Z-DH3Aが複合管として登場したため、UY-56は衰退したと想像します。
さて、UY-56の正しいヒータ電圧は何ボルトでしょうか?
正しい使い方は古いラジオの回路図などで推測するくらいしか思い浮かびませんが、いずれにせよ、古い球を使う場合は、このようなこともあるということでしょうか。
補足 2015/05/16
古い資料によると56のヒータ電圧/電流は2.5V 1A。UY-56Aは2.5V 800mAです。
56から56Aでヒーター消費電力の改善が行われたとのネット上の情報通りです。
当局の手持ち球はUY56と表記されていますが、ヒータに2.5Vを加えると850mA
流れます。56ではなくUYをつけてUY56と表記されていることからUY-56Aの可能性が
あります。
もしそうだとしたらUY-56Aのエミ減球と言えそうですが、しかし、2.5Vではヒータは極端に
暗くしか点灯しないため、エミ減のような現象に見えているだけという可能性もあり
ます。また、ヒータに1Aくらい流せば正常値に近い特性を示します。
このことから、実際はこの球は56であり、ヒータに1A流す球ですが、何らかの原因で
ヒータの抵抗値が高くなり、2.5Vで850mAに減少し、UY-56Aのヒータ規格ように見えて
いるが、1A流さないと正規の特性が出ない球である。
と言えそうです。
ご注意
これはあくまでも手持ち球の個体における実測値です。これがこの真空管の本来の特性を表しているわけではありません。
(JF1VRR)