LT3080使用の簡易電子負荷
投稿日 2016/03/04
作った電源や電池などを評価するときに、電子負荷があれば重宝します。
一般的にはパワーMOS FETとオペアンプ、電流センス回路の組み合わせで定電流回路を構成しますが、けっこう面倒です。LT3080は原理的には同じものですが、10uA 1%誤差の定電流源を内蔵し、保護回路も充実しているため便利に使えます。
実験中のLT3080
回路は後述のものをバラック配線
電流センス抵抗には1Ωを使用したため
Rsetには100KΩの多回転ボリュームを使用
大形ヒートシンクに取りつけた
1A連続で流しても少し温まる程度(強制空冷なし)
リニアテクノロジにLT3080という便利なレギュレータICがあるので、簡単な電子負荷を作ってみました。
LT3080は外付け抵抗1本で出力電圧を可変できる1.1Aのレギュレータです。秋月電子で1個250円で販売されています。
特徴は内部の制御回路(誤差アンプ)の電源(Vcont)と外部電源入力端子(IN)が別々になっていることです。保護回路も充実しています。
INとVcontをつながなければ、出力Trはオープンコレクタとなるので、LT3080を並列接続して簡単に電流容量を増やすことができます。
今回はLT3080で最大1Aの定電流負荷装置を作ってみました。
以下はLT3080のデーターシートに載っている電流源の回路と同じです。
LT3080使用の定電流回路(定電流電子負荷)
INとGND間に評価対象の電源や電池をつなぐ
Rsetで電流値を0から1Aまで可変できる
Vcontは2V以上40V以下なら何Vでもよい
INとVcontをつないでしまうことも可能(破線)
R1に流れる電流をIoutという
この回路ではINとVcontがつながれていませんが、Vcontは2V以上40V以下なら何Vでもよいため、破線の様につないで使用することもできます。VcontとINを切り離した場合は、Vcont専用に電源が必要になりますが、独立することによりINはオープンコレクタとなり、複数のLT3080のINを共通にして電流容量を1Aの整数倍にすることも可能です。
Vcontには最大40Vまでの電源をつなぐ事が出来ます。後述のように2Vでも動きます。
INとGND間には評価する電源や電池等をつなぎます。最大印加電圧は40Vです。
SETには10uA流れ出るので、100KΩの両端は1Vとなります。
R1を1Ωとすれば、Iout(OUTに流れ出る電流)が1Aのとき、R1の両端は1Vとなり、誤差アンプは平衡することになります。つまりIoutは1Aの定電流となります。
Rsetの可変抵抗100KΩを50KΩに調整すると、両端は0.5Vとなります。このときR1の両端が0.5Vであれば平衡するので、Ioutは0.5V / 1Ω = 0.5Aとなります。
このように100KΩの可変抵抗を調整することにより、0Aから1Aまでの定電流が得られます。
INは先に書いたように評価する電源や電池等をつなぐので、その電源に対する定電流の負荷として機能します。
定電流特性
INとVcontをつないだ場合とINとVcontを切り離し、Vcontに3.0V一定を印加した場合の実測結果です。ほぼ同じように見えますが、電圧が低い場合に違いがあります。Vcontに独立で3.0V一定を印加した場合は、全電流に於いて電圧2Vから安定した電流が出ています。
INとVcontをつないだ場合
INとVcontを切り離し、Vcontに3.0Vを印加した場合
Vcontに乾電池等で3.0V(実験では2.0Vでも動いた)程度を印加しておけば、INに加える電圧が2V程度から定電流動作となる電子負荷と言えます。
定電流100mAであれば、INに加える電圧は31Vまで、1Aであれば14Vまで良好な定電流が得られます。このように電流によって何Vまで安定な定電流が得られるかが決まるので、使用上注意が必要です。
R1 1Ωの両端の電圧を監視して電流値が見られるようにしておけば便利です。
今回、大形のヒートシンクに取りつけましたが、1A連続で流しつつけても少し温まる程度でした。強制空冷は行っていません。(室温は10℃くらい)
LT3080は今回の定電流回路の次に定電圧回路をつなげれば、簡単にCVCC電源が作れる面白いICです。いろいろ利用価値がありそうです。
LT3080を並列にして電流容量を増やす実験は別途やってみたいと思います。
(JF1VRR)