CAT4238 LEDドライバ

投稿日 2016/12/07

​直列10個のLEDをドライブできる安価なLEDドライバ オン・セミコンダクターのCAT4238を試してみました。

現在LEDドライバはさまざまなものが市販されていますが、今回のドライバは電池やモバイルバッテリでの使用を目的としたものです。このため昇圧DC-DCコンバータに定電流源を加えたような構造です。このようなLEDドライバーは各社から販売されていますが、CAT4238は秋月電子で2個100円という安さに引かれました。

CAT4238は、外付けのコイルとショットキバリアダイオードが必要ですが、電源電圧2.8Vから5.5Vで、20mA程度のLEDなら10個ドライブできます。正にリチュームイオン電池などでモバイルな投光器のようなものを作るのみは最適です。

CAT4238の特徴は以下の通りです。

特長
・高電圧 LEDストリングを駆動(38 V)
・最大87%の効率
・0.6 mAと低い静止時GND電流

・調整可能な出力電流
・1 MHz固定周波数、低ノイズ駆動
・ソフトスタート“in rush”電流制御

・1 µA以下のシャットダウン電流

・オープンLED過電圧保護

・1.9 V (UVLO)で自動シャットダウン
・サーマル過負荷保護
・2.8~5.5Vの電源で動作
・LED駆動電流:5~30mA(外付け抵抗による)
・調光機能:直流電圧制御、PWM制御

LEDドライバーの中にはほとんど外付け部品の不要なものもありますが、CAT4238で必要となる外付け部品は、下記のように安価なものばかりですから、配線さえいとわなければ採用の価値はあります。

LED以外の使用部品と価格(秋月電子)は以下の通りです。

CAT4238 50円 (2個100円)

47uHのインダクタ 10円 (10個100円)

ショットキバリア・ダイオード (1S4) 20円

4.7uF コンデンサ 20円 (10個200円)

0.22uF コンデンサ 10円 (10個100円)

抵抗 1円 (100個100円)

合計111円

LEDは発光色、Vf、If、照度、半減角、形状などで選択しますが、価格は様々です。

白色、Vf 3.6V If 20mA 高照度、半減角60度、砲弾型のLEDが10個100円程度で売られています。あまり安物だと後で照度が落ちたりすると聞きますので、要求する信頼性との相談です。

というわけで、光らせるだけなら211円+a程度でできるということになります。

今回の回路はCAT4238のデータシートに記載されている下記の回路をそのまま作ってみました。

CAT4238のデータシートにある推奨ボードレイアウトに近づけて作った

銅箔切り貼り基板

回路は参考記事を参照

オン・セミコンダクター CAT4238のデータシートより
20mA定電流でLED10個の場合

今回はこの回路で、Vin 対Vout(入力電圧に対する出力電圧の変化)、および電流値を計測してみました。

回路は一般的なものですが、このICの場合、電流計測がローサイド側(FB端子)を見ているので、シャント抵抗(15Ω)がLEDのカソード側にあります。このためFB端子からラインを延ばさなければなりません。LEDストリングが長い場合は配線が厄介です。これに対して電流計測をハイサイドで行い、LEDのカソード側を接地(GND)できるLEDドライバもありますが、こちらの方が配線で有利です。

CAT4238で高照度LED 10個を点灯してみた
ブレッドボードで配線した
コイルやダイオードなど外付け部品が必要だが2個100円と安いのが魅力
データシートに掲載の回路そのまま
LEDは別メーカのもの(右上)に交換しても試してみた

モバイル・バッテリ(5V)で点灯中

入力電圧Vinを1.0Vから5.4Vまで変化させたときの出力電圧Voutと電流Iout

CAT4238 Boost 10 LED Driver
実測、入力電圧(Vin) VS 出力電圧(Vout),出力電流(Iout)、および目視の照度
照度は目で見た感覚的なもの
右軸はIin(mA)
4.2Vf付近からの急激な照度低下の原因は不明

計測結果より、Vin 2.0V位から点灯し始め、3.0V位で最高照度に達しました。このときの照度はまぶしくて見ていられないほどです。3.2V付近でIoutが17.5mA前後でほぼ一定になりました。ところが4.0Vを超えたとき突然Voutが若干低下、Ioutは急激に低下し照度がガクッと落ちました。

注意すべきはON/OFFやPWM調光に使用するSHDN(負論理)端子の扱いですが、この端子の電位によっても多少照度が変わるようです。ただし、フル照度で使用する場合一般的にはVinにつなぐと思うので、今回はVinにつないだまま計測しています。

今回の計測結果はVinが4.0V以上に高くなってくると、逆に照度が落ちる結果となっていますが、このような結果は腑に落ちません。モバイルバッテリが電圧低下してくると逆に照度が増すのですから使用上問題です。LEDを別の製品に変更しても同じです。ただ、この現象がIC自体からくるものなのか、その他の要因によるものかは不明です。(照度低下については、ブレッドボードによるバラック配線の影響の可能性があるので、データシートに記載されている推奨ボードレイアウトで再計測する予定です。)

再計測してみました。以下の記事を参照してください。

参考記事:CAT4238 LEDドライバ その2

PWM調光はまだ試していませんが、LEDストリングの点灯という点では、3V程度から10個のLEDを点灯させることができ、十分な性能と思います。 

最近は性能のよいモバイルバッテリも出回っており、LEDも超高照度のものもあります。LEDドライバーも多種多様でさまざまな用途の光源を設計できるようになりました。一昔前はLEDは単に表示灯(インジケータ)としてしか使われていませんでしたが、今では照明に使われるようになり、光源としての位置が確立しています。要求に合うLEDドライバを適切に選んで様々な照明を作ってみたいものです。
 

(JF1VRR)

​コメント(2)

  • こんにちは、CAT4238で検索してきました。私がやった時は3Vから急に電流が殆ど流れなくなったりチラチラしたりと挙動不審でした。おそらくブレッドボード上での検証が良くないのだと思います。基板に最短距離で配線すればもう少し良い結果が得られるのではないかと。ところでデータシートの回路図を見ながら配線したらSWとSHDNのピンが逆になっていて1個壊してしまいました。よく見ないといけませんね。 [ 通りすがり ] 2016/12/30(金) 午後 1:36
  • > 通りすがりさん High Frequency Switchingなのでバラック配線の影響は多分にあると思います。CAT4238のデータシートにRecommended Board Layoutが載っているので、近く試してみたいと思っています。ありがとうございました。(JF1VRR) 2016/12/30(金) 午後 4:02

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