QTV-07S KEN無線電子のトランスバーター
投稿日 2023/05/22
KEN無線電子のユニットで組んだ430MHzのトランスバーター
IF は50MHz
パワーアンプはM57716 オールモード10W
当局がまだ430MHzのSSBでQRVできなかった頃、無銭家で高級な無線機に手が届かない境遇でなんとかしたいと考えて購入したのが、このKEN無線電子のトランスバーター QTV-07Sでした。
50MHzのSSBもそうでしたが、144MHz、430MHzのSSBにQRVしたい場合は、手持ちのHF機を活かしてアップコンバートするのが、よい選択肢でした。当局も若い頃28MHz<->50MHzと50MHz<->144MHzのトランスバーターを自作して使っていました。このQTV-07Sは50MHz<->430MHzのトランスバーターですが、さすがに430MHzともなると、いろいろ実験はしてみたものの自作はうまくいかず、当時トランスバーターの半完成品を販売していたKEN無線電子に頼ってみた訳です。
大きい基板がトランスバーター本体 QTV-07S
XTAL Ch1,2,3を実装 (430MHZから442MHz)
右に スタンバイ/ALC/T-IFコントロール回路ユニット CCA-10
背面左 パワーアンプ・ユニット LB-6207B
背面右 RF検出回路付き同軸リレー・ユニット CRR-5
ケースはLEADのRC-2
本体のQTV-07Sを中心に、パワーアンプ・ユニットのLB-6207Bや、コントロール・ユニットCCA-10、同軸リレー・ユニット CRR-5などを組んでトランスバーターとしてシステムアップしました。それらをケースに組んだのが上の写真です。
なお、QTVシリーズは430MHzのQTV-07Sの他に、50MHzのQTV-6D、144MHzのQTV-2Dがありました。いずれも完全調整済みで出荷される基板ユニットです。1200MHzも後に出たかもしれません。当時QTV-07Sで定価19.300円となっていました。QTV-07SはIFとして28MHzと50MHzを選べますが、当局は50MHzで注文しました。
トランスバーター・ユニット QTV-07S 左
スタンバイ/ALC/T-IFコントロール回路ユニット CCA-10 右
回路構成は一般的なもので、局発(XTAL)/2逓倍に2SC2026、2逓倍2SC2026、2逓倍2SC3355の8逓倍構成で、XTALはIFが50MHzの場合、47.5MHzが標準装備。48.0MHz、48.5MHz、49.0MHzはオプションでした。つまり標準で430MHzから434MHzの4MHzをカバーしていますが、オプションXTALをすべて装備すると446MHzまでカバーします。
IF 50.0MHz - 54.0MHz
Ch1. XTAL 47.5MHz 430.0 - 434.0MHz 標準装備
Ch2. XTAL 48.0MHz 434.0 - 438.0MHz オプション
Ch3. XTAL 48.5MHz 438.0 - 442.0MHz オプション
Ch4. XTAL 49.0MHz 442.0 - 446.0MHz オプション
受信部のRFアンプはGaAs FET 3SK121、ミキサーはND-482C2-3R使用のDBM、ポストアンプは2SK125となっています。インピーダンスは入力(ANT)、出力(IF OUT)ともに50Ωです。
送信部はミキサーがND-482C2-3R使用のDBM。アンプ1段目 2SC3358、アンプ2段目 2SC3355となっています。インピーダンスは出力(ANT)、入力(IF IN)ともに50Ωです。IF入力は13mW必要。出力は150mWとなっています。
QTV-07Sは写真のように両面フラット基板の片面にパターンを描いたもので、マイクロストリップ・ラインは使用せず、430MHzの部分はすべて1ターンのコイルです。
パワーアンプ・ユニット
三菱のパワーモジュール M57716 (430MHz SSB)
オールモード 入力 MAX 200mW 出力 17W
パワーアンプ・ユニットのLB-6207Bは三菱または東芝のパワーモジュールを使用するキットで、パワーモジュール、ヒートシンク以外の基板、部品がキットになっています。430MHzのリニアアンプの場合は、パワーモジュールにM57716を別途購入し、ヒートシンクも用意します。特殊な部品は無いし、基板のパターンも単純なので、自作するのも容易です。
M57716(MAX 17W)のドライブ電力のMAXは200mWです。QTV-07Sのアンプの出力は150mWとなっています。LB-6207Bは当時3100円だったようですが、パワーモジュールは秋葉原の店頭で当時5000円してました。別の実験でM57716を2個くらい昇天させていますので、数回購入したのでよく覚えています。430MHzともなると、バイポーラ・トランジスターでリニアアンプを作るのはちょっとハードルが高いので、このようなパワーモジュールはありがたいですね。メーカー製のトランシーバーでも10W程度ならパワーモジュールの使用が散見されます。
430MHz ANTはNコネクタ
TS-670などの50MHzのリグを親機とする
電源を切れば親機は50MHzのアンテナに切り替わるようになっている
送受の切り替えはスタンバイ/ALC/T-IFコントロール回路ユニットCCA-10Nで行っています。切替信号は親機から取ります。正論理のRM(リモート)端子と負論理のRM端子があるので、親機に合わせます。キャリアの検出やアンテナラインへのDC重畳式ではありません。430MHzのアンテナはNコネクタになっています。(MコネクタのCCA-10Mもありました) 親機と50MHzのアンテナはMコネクタです。トランスバーターに電源を入れなければ親機は50MHzのアンテナにつながる様になっています。この切替は高周波リレーのG4Yを使用しています。親機のIF信号は100Ω 5W//100Ω 5Wの50Ωダミー抵抗で受け、5pFを通して半固定抵抗でQTY-07Sに必要な13mW程度にしています。送信レベルメーターは送信出力を検波してメーターを振る簡単なものです。回路は自作できる範囲です。ちなみにCCA-10はTS-670用が6300円でした。
ユニット接続図(QTV-07Sの説明書より)
4つのユニットを上図のように接続します。チャンネルの切り替え(局発のXTALの切り替え)は、ダイオード・スイッチとなっているので基板から出ている電圧をロータリー・スイッチで切り替えるだけです。パワーユニットにはバイアス回路が搭載されているので、電源をつなぐだけです。同軸リレーユニットのCRR-5は430MHzの送受ラインを切り換えますので、リレーにはG4Yが使われています。G4Yは当時店頭に並んでましたが、今は入手性が良くないようです。G4Yは1200MHzでも使える高周波リレーです。
当局はその頃のメインリグだったTS-670(7, 21, 28, 50MHzのトライバンダー 10W) を親機として使用していました。使用感はひじょうに快適です。TS-670の50MHzはFMも出られ、50から54MHzをフルにカバーしているので、親機としては最適です。
V/Uのオールモード機が出そろった今では、専用機のほうがコンパクトで便利かも知れませんが、当時はトランスバーター方式がよい選択肢でした。親機の受信性能がそのまま活かせ、回路は自作もできる範囲で投資も手ごろでした。
(JF1VRR)