CWトランシーバ DSW-II-40を改造する

2026年08月04日

今回はDSW-I-40のハードウェアは一切変更せず、PICマイコンのファームウェアを作り直して、操作スペック上のちょっと不満なところを改良してみました。

DSW-II-40はどんなトランシーバーか

DSW-II-40はコンパクトで軽量な7MHzバンド QRP CWトランシーバーです。送信出力は最大4Wで、電源はDC 9Vから12Vです。DDSを使用したシンプルな回路構成のトランシーバーで、受信部は中間周波数(IF)4MHzのシングルスーパーです。高周波増幅なしでいきなりダブルバランスドミキサーSA602で周波数変換しIF 4MHzに落としてXTALフィルターを通し、SA602でプロダクト検波してAFにし、OP AMP TS922のフィルターを通してAFアンプでスピーカを鳴らします。AGCはありません。送信部はDDSでダイレクトに7MHzをは発振しており、100MHzの帯域をもつビデオアンプ LT1252でファイナルの2SC1971をドライブしています。送信出力は0.1Wから4Wまで可変できます。

送受信周波数信号の生成はDDS AD9835を使用しています。送信周波数は7.000000MHz台をダイレクトに作っています。受信用のOSC周波数として11.000000MHzを生成しています。その差は中間周波数の4MHzです。

マイコンはPICの16C622Aを使用しています。PICで実行されるファームウェアは、DDSへの周波数データの設定、ロータリーエンコーダーによる周波数の可変、エレキー機能、RIT、サイドトーン生成、キーヤースピードの変更、送信チューン機能、キーパドルのリバース、周波数のCWコードによるアナウンス等を司ります。

フロントパネル
GAIN VR: RF GAIN調整用ボリューム (AGCが無いかわりにこれで調整 音量調整代わりにもなっている)
KEYER: プッシュボタン 押すとモールスで"S"(Speed), "R"(Reverse), "T"(Tune), "SK"(Straight Key)をアナウンスするので
    1.5秒以内にパドルキーを叩けば設定される。
RIT: トグルプッシュスイッチ RITのON/OFF
FREQ: トグルプッシュスイッチ 現在の周波数をモールスでアナウンス
RED LED: RITインジケーター(RIT ON時点灯)
TUNE: 周波数可変ロータリーエンコーダー

ファームウェアに関わる主な仕様
送受信周波数範囲: 7.000000MHzから
周波数可変ステップ: 200Hz (RIT ON時50Hz)
電源投入時の初期周波数: 7.040000MHz (RIT SWを押しながら電源投入で7.110000MHz)
電源投入時のキーモード: エレキーモードでパドルはノーマル(左Dash)
RIT SW機能: RIT ONで受信周波数のみ50Hzステップで可変できる RIT LED ON、RIT OFFで送信周波数に戻す RIT LED OFF 
FREQ SW機能: 現在の周波数をモールスでアナウンス 3桁 先行が0の場合無視 7.020000MHzの場合 "20"
KEYER BTN機能: "S", "R","T", "SK"を順番にアナウンス 次の1.5秒の間にDashキーを押して設定
エレキー機能 (フルブレークイン 標準 20WPM サイドトーン 800Hz)

DSW-II-40の回路図 送信部とPIC, DDS

DSW-II-40回路図 受信部

DDS AD9835について

DSW-II-40が使用しているDDSは、アナログデバイセズのAD9835です。AD9835は32ビットの周波数レジスタを2つ(FREQ0とFREQ1)搭載し、瞬時に切り替えることができます。つまり受信周波数をFREQ0に、送信周波数をFREQ1にセットしておき、送受で切り替えて使うことができます。DSW-II-40はAD9835をMCLK 32MHzで使っているので、周波数レジスタにセットする値は次のように計算できます。

FREQ0 = (7000000Hz * 2^32) / 32000000Hz = 939524096 送信周波数 7.000000MHzの場合

FREQ1 = (11000000Hz * 2^32) / 32000000Hz = 1476395008 受信用OSC周波数 11.000000MHzの場合

この値を4つ(8bit)に分割し、それぞれをレジスタの指定を前置して16bitにして、FSYNC,FCLK, SDATAの3本の信号でシリアルに転送します。ちなみに、プログラムでは上記のような計算をするとメモリを食いますので、あらかじめ計算した数値を増減して周波数を変更します。

DSW-II-40の場合、送信周波数 7.000000MHzと受信用OSC周波数 11.000000MHzの差は4.000000MHzですので、

FREQ_4MHz = (4000000Hz * 2^32) / 32000000Hz = 536870912

です。送信周波数は受信OSC周波数からFREQ_4MHzの数値を引けば求まります。

また、周波数可変ステップを100Hzとする場合は、

FREQ_STEP100 = (100Hz * 2^32) / 32000000Hz = 13422

となり、これをロータリーエンコーダーの回転の向きにより1ステップ毎に増減してやります。RITがONの場合は受信周波数のみをたとえば50Hz増減し、RITがOFFになれば、送信周波数 + FREQ_4MHzで元の受信周波数に戻します。

PIC 16F819(右上)とDDS AD9835(中央)、MCLKの32MHz XTAL
AD9835の周りはフィルター

ファームウェアの改良

DSW-II-40が使用するPICマイコン16C622Aはワンタイム品なので書き換えはできません。このため同じピン配置で手持ちの16F819を使用することにしました。16F819のプログラムメモリは2KW、RAMは256Bです。16C622Aは2KW、128BなのでRAM容量が違うだけです。

まずDSW-II-40のPICとDDS AD9835のピン配置は以下のようになっているので、これに合わせてプログラミングします。

PIC16F819
GPIO ピン名 ピン番号 信号名
RA0    17   RIT_INDICATOR
RA2    1    TX_KEY (送信出力)
RA3    2    Sidetone
RA4    3    RIT_SW
RA5    4    不使用
RA6    15   XTAL 4MHz
RA7    16   XTAL
RB0    6    KEYER
RB1    7    B_TUNE (ロータリーエンコーダー)
RB4    10   Dash (パドル)
RB5    11    Dot (パドル)
RB6    12    STEP_SIZE (FREQ) (PGC)
RB7    13    A_TUNE (ロータリーエンコーダー) (PGD)

GPIO ピン名 ピン番号 信号名 AD9835 ピン番号 AD9835端子名
RB3    9    FSYNC     9     FSYNC
RB2    8    MUTE_FSEL  10     FSELECT (送受信周波数切換)
RA0    17    SDATA      8      SDATA
RA1    18    SCLK      7     SCLK
          +5V      13     DVDD
          +5V      14     AVDD
          GND      12     DGND
          GND      11     AGND
          XTAL      6      MCLK 32MHz
          OUTPUT     4      IOUT(電流出力)

書込み環境を用意し、エレキー機能、DDSへの周波数データの設定機能、RIT SWの処理、FREQ SWの周波数モールスアナウンス機能、KEYER BTN機能を組み込みます。2KWのプログラムメモリの93%、RAMの44%を消費しました

ファームウエアの仕様改善点

自分なりに使いやすいように以下の変更を行いました。

電源ON時の開始周波数を7.040000MHzから7.020000MHzに変更
RITを押しながら電源ON時の開始周波数を 7.110000MHzから7.005000MHzに変更
周波数可変ステップを200Hzから100Hzに変更 (ロータリーエンコーダ 1クリックで±100Hz)
周波数が7.000000MHz未満になったらビープ音で知らせ7.000000MHzとする
周波数が7.060000MHz超になったらビープ音で知らせ7.060000MHzとする
FREQ SWの周波数アナウンスを3桁(先頭0はサプレス)とする 例 7.020000MHz -> "200" 7.001300MHz -> "13"
KEYER BTNのアナウンスをモールスで2桁とし、"RS"を追加
 "S" -> "SP" (SPeed) CWスピードを変更する DashキーでUp、DotキーでDown
 "R" -> "RV" (ReVerse) パドルのDashとDotを入れ替える
 "T" -> "TU" (TUne) 送信チューニング機能 Dashキーを叩いている間送信する
 追加 "RS" (ReSet) リセットする(電源オン時の設定に戻す)
 "SK" -> "ST" (STraight key) ストレートキーモードにする

当局は和文CWはやらないので、開始周波数を7.020000MHzとしています。外国局用に7.00500MHzでも開始できるようにしてあります。周波数可変ステップが100Hzなので可変に時間がかかります。このためKEYER SWの"RS"で電源オン時の設定にリセットできるようにしてあります。

(JF1VRR)


 

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