アンテナ・アナライザの製作 予備実験

2026年09月20日

RFワールド No.33
「製作による無線・高周波の実践体験II」2016年2月 CQ出版社
アマチュアでも作れそうなアンテナ・アナライザをやさしく解説

アマチュアにとってアンテナの調整などに欠かせないアンテナ・アナライザですが、CAA-500のような市販品は、もう少しでリグが買えるような価格! 高価で当局などには手が出ません。それでも多くの局が使っているのを見ると、いかに便利な測定器であるかがわかります。最近はnanoVNAが安価で便利ということで大流行。当局もnanoVNAにはずいぶん助けられています。

そのアンテナ・アナライザとは、アンテナのSWRとインピーダンスを計測する装置です。周波数のつまみを回してメーターの針が最低になればその周波数がSWRの最低点。つまりインピーダンスが50Ωに最も近い点です。計測できる周波数は430MHzくらいまでのアマチュアバンドをカバーしているのが一般的です。

では、アンテナアナライザは作れないのかというとそんなことはなく、たとえば製作例としては、RFワールド No.33 「製作による無線・高周波の実践体験II」2016年2月 CQ出版社 に「HF帯アンテナ・アナライザの解析と製作」という記事があります。これを読むと、可変周波数発振器(オシレータ)を用意し、そのRF信号をSWRブリッジに加え、ブリッジの各点の電圧を読んで、メーターを振らせという比較的簡単なものです。記事ではメーターを振らせる方式が紹介されていますが、ブリッジの電圧をADコンバーターで読んで、マイコンでSWRとインピーダンスを計算し、LCDなどに表示することもできます。周波数をHFの範囲にとどめ、SWRブリッジと検波回路等を慎重に作れば、そんなに難しいものではないようです。このような電圧比による簡易的なものでも十分実用になると感じます。

記事で紹介されているアンテナ・アナライザの仕様と回路構成要素は、こんな感じです。

測定周波数範囲 1 ~ 30MHz
測定インピーダンス範囲 5 ~ 400Ω
インピーダンス測定精度 ±5%以内(R=25 ~ 200Ω X = -50 ~+50Ωの範囲内)
電源電圧 12V(単三乾電池8本使用)
消費電流 100mA

オシレータ: リニアテクノロジのLTC-1799使用 矩形波 1~30MHz
LPF: LTC-1799の出力インピーダンスをバッファアンプの入力インピーダンスに整合させ高調波を取り除く
バッファアンプ: 電圧増幅率1の電流アンプ SWRブリッジを駆動 30MHzで-3db
周波数表示: 市販品の6桁表示周波数カウンタ ~65MHz
SWRブリッジ: 100Ω x2並列 1/4Wカーボン抵抗使用 HF用
電圧検出回路: 高周波用ダイオード使用の半波整流回路
電圧補正回路: ダイオードのVfによる電圧降下を補正
SWR/インピーダンス表示部: アナログメータ使用
電源: 携帯のため電池使用で12V 12Vから5Vを作る

以上、いずれも自作できる範囲ですが、SWRブリッジと電圧検出回路、電圧補正回路をしっかり作っておけば、他はいろいろアレンジできるかと思います。たとえば、実験の段階ではオシレータは当面SSGを使用する。SWRブリッジの各部電圧はDMMで読んで、SWR/インピーダンスの値はエクセルで計算するなど。電圧値をADコンバーターで読んでマイコンで計算してLCDなどに表示することもできそうです。

SWR/インピーダンス計測の原理(50Ω系)

RFワールド No.33「製作による無線・高周波の実践体験II」より抜粋

SWRブリッジは50Ωの抵抗(R)をダイアモンド型に組んだブリッジ回路で、一辺がDUT(Zx)、つまりアンテナなどの計測対象物です。c点にRF信号(Vin)を入力します。この回路でSWRはVb(b点とGND間)とVab(a点とb点間の電圧)を計測することで求めることができます。また、インピーダンスはVca(c点とa点間の電圧)とVa(a点とGND間の電圧)を計測することで求めることができます。(記事より) 計算式は後述。この回路はホイートストンブリッジそのものですので、Vabが0V、つまり回路が平衡すればDUTのインピーダンスは50Ωであることが分かります。

この回路で反射係数[Γ](ガンマ)は Γ = Vab / Vb。SWRは SWR = (1 + Γ) / (1 - Γ) = (Vb + Vab) / (Vb - Vab) です。
インピーダンスの絶対値|Zx|は、まずDUT(Zx)に流れる電流Iを求めます。I = Vca / 50。|Zx| = Va / I = 50 x Va / Vcaと計算できます。つまりこのような簡単なブリッジ回路で、各部の電圧が分かれば、簡単な計算でSWRとインピーダンスの絶対値|Zx|が求まります。

こうして求めたインピーダンスの絶対値|Zx|を抵抗R1とリアクタンスX1に分解(R1 ± jX1)することができます。このとき方法として各電圧をベクトル(複素数)として扱い、余弦定理を用いて位相差を特定して算出する方法もありますが、計算が複雑です。VNAなどは位相検波方式で求めますが今回はブリッジ回路の電圧しか分かりません。つまりすべてスカラーで計算しなければなりません。今回は電圧比からSWRが分かっているので、R1 =S(|Zx|^2 + R^2) / R(S^2 + 1) SはSWR で計算し、Rが分かればX1はX1 = ±√(|Zx|^2 - R1^2)で計算します。さらに周波数が決まれば、X1からインダクタンス(X1 / 2πf)とキャパシタンス(1 / (2πfX1)が計算できます。また、伝達効率η[%](送り出した電力のうち反射されずに負荷に吸収された電力の割合)をSWRから計算することができます。

SWRブリッジ、電圧検出回路、補正回路を作る

上記の回路がSWRブリッジと電圧検出回路、電圧補正回路です。SWRブリッジは50Ωの抵抗があればよいのですが、入手が容易な100Ωを2個並列にしています。今回は誤差1%のものを選別して使いましたが、誤差0.1%のものも入手可能です。電圧検出回路はいわゆる半波整流の検波回路です。記事ではショットキバリアダイオードのHSMS2820を使っていますが、今回は手持ちの1SS106を使用しました。Vca(c-a間)、Va(a - GND間)、Vb(b - GND間)、Vab(a - b間)の電圧をそれぞれ検出しています。電圧補正回路はダイオードのVfにより降下した電圧を補正します。OPアンプは記事ではNJU7044Dを使用していますが、今回は手持ちの関係で2回路入りのNJM2732Dを使用しました。いずれも単電源フルスイングのOPアンプです。NJU7044Dの入力バイアス電流が1pAに対して2732Dは50nA。対して入力オフセット電圧は10mV対1mVで2732Dの方が高精度です。出力のドライブ能力は7044Dの40mAに対して2732Dは数mAです。これらの違いは今回の回路では問題ない範囲です。

SWRブリッジと電圧検出回路、電圧補正回路、校正回路、メーター切換回路を実装
フラット基板の上に空中配線
7MHzで抵抗100ΩのSWRを表示中(2.07 約34mAを指している)

今回はフラット基板の上に空中配線で実装しました。ブリッジ周りの100Ωのリード、コンデンサのリード、ダイオードのリードは可能な限り短く配線したほうが良いのですが、プローブを当てたり部品配置の関係であまり実現できていません。100uA DCのメーターは、手持ちが1つしかないのでSWで切り替えることにしました。

RF信号はSSGから周波数 7MHz、6.24Vppを入力しています。RF信号は検波回路のダイオード(1SS106)が十分スイッチングできる電圧が必要です。回路図内にDUTとして100Ωの抵抗をつないだ場合の各部の電圧値を記載しました。ほぼ記事と近い値になっています。

操作は、メーターをSWR側にし、校正でメーターが100uAフルになるようにVRを加減し、SWR側に切り替えればSWRが読み取れます。

次にメーターをインピーダンス側にし、校正でメーターが50uA(中央)になるようにVRを加減し、インピーダンス側に切り替えればインピーダンスが読み取れます。メーターが50uAであれば50Ω。100uAであれば100Ωです。これは振れの割合ですので、校正で20uAに合わせれば、フルで500Ωとなります。ただし精度は落ちます。

インピーダンスを計りながら周波数を7.000MHzから8.000MHzのように若干上げてインピーダンスが低下すれば誘導性、上昇すれば容量性と言えます。

以下は各部の交流波形です。記事に近い電圧値になっています。(使用オシロ HO120S)

Vc (RF IN)6.24Vpp

Va 4.160Vpp

Vca 2.240Vpp

Vb 3.120Vpp

Vab 1.120Vpp

SWR/インピーダンスの計測

DUTとして50Ωの抵抗(炭素被膜抵抗100Ω 2個を並列にしています)、100Ωの抵抗、50Ω + L(0.2uH)、50Ω + C (330pF)、50Ω + L(0.2uH) + C (330pF) (いずれも直列)を用意し、周波数を7.000MHzとして各部の電圧を計測し、エクセルに計算式を入れてSWR、インピーダンスの絶対値|Zx|その他の値を計算してみました。

7.000MHzだけでは誘導性か容量性かが分からないので、8.000MHzも計測して判断しています。炭素被膜の抵抗でも若干リアクタンスを持っているのが分かりますが、これが配線による寄生成分かどうかは分かりません。今回は各部の電圧をuAまで計測していますが、少なくともmAレベルまで計測しないと矛盾が出て計算が破綻する可能性があります。

SWRブリッジ各部の電圧からSWR/インピーダンス|Zx|他を計算で求める
計算は電圧比による簡易計算
それぞれ7MHzと8MHzで計測し誘導性/容量性を判断
50Ωは100Ω炭素被膜抵抗 誤差1%を2個並列
100Ω炭素被膜抵抗 誤差1%
Lは手巻きの10ターンコイル(直径5mm、長さ10mm) 約0.2uH
Cは330PF セラミックコンデンサ
いずれも直列接続

SWR、インピーダンス(|Zx|)ともにメーターの振れとよく一致しています。このようにVb、Vca、Vab、Vaが分かれば、SWR、インピーダンス(|Zx|)などは計算で求めることができます。これは12bitくらいのADコンバーターで各電圧を読み取れば、マイコンで計算してLCDに表示するなどしてメーターを省くこともできます。また周波数をスイープするなど便利なものができそうです。

計算式(電圧比による簡易計算)は以下のとおりです。

SWR = (Vb + Vab) / (Vb - Vab)
|Zx| = Vca / Va * 50
R1 = S(|Zx|^2 + R^2) / R(S^2 + 1) SはSWR
X1 = ±√(|Zx|^2 - R1^2)
L[uH] = X1 / 2πf
C[pF] = 1 / 2πfX1
η[%] = ( 1 - (S - 1 / S + 1)^2 ) * 100

SWRのメーターの振れとSWR値はいかのとおり(記事より)

SWR   VAB[V] メーター値[uA] メーターの指示角度[deg]
1.0   0     0        -40
1.2   0.09VB  9.1       -33
1.5   0.20VB  20        -24
2.0   0.33VB  33        -13
3.0   0.50VB  50        0
5.0   0.67VB  67        13
10    0.82VB  82        26
∞    -    100        40

1MHzから50MHzまでスイープしてみる

抵抗50Ω、100Ω、50Ω + 0.2uHコイル、50Ω + 330pFセラミックコンデンサ、50Ω + 0.2uH + 330pFをDUTとし、周波数を1MHzから50MHzまでスイープしてみました。多少ふらつきはありますが、この程度ならメーターの針はほぼ動きません。ただし30MHz以上は怪しくなっています。チップ抵抗などを使い、配線をパターン化すれば50MHzくらいはらくらくと思われます。

1MHzから50MHz 抵抗50ΩのSWRとインピーダンスの絶対値|Zx

1MHzから100MHz 抵抗100ΩのSWRとインピーダンスの絶対値|Zx|

1MHzから50MHz 純抵抗50Ω + 0.2uH直列のSWRとインピーダンスの絶対値|Zx|
周波数が高いほどインピーダンスが高くなりSWRも高くなる

1MHzから50MHz 純抵抗50Ω + 330pF直列のSWRとインピーダンスの絶対値|Zx|
周波数が低いほどインピーダンスが高くなり、SWRも高くなる

1MHzから50MHz 純抵抗50Ω + 0.2uH + 330pF直列のSWRとインピーダンスの絶対値|Zx|
0.2uHと330pFの共振周波数は約19.6MHz

実際のアンテナでnanoVNAと比較

nanoVNA センター7.000MHz スパン±500kHz

SWRブリッジ センター7.000MHz スパン±500kHz

ロングワイヤーアンテナを手動アンテナチューナー(NT-616)につなぎ、まずnanoVNAで計測しました。周波数範囲はセンターが7.000MHz。スパンは±500KHz(6.500MHz~7.5000MHz))としました。7.000MHzがSWR最低点になるようにアンテナチューナーを調整しました。

つぎに製作したSWRブリッジで計測しました。6.500MHzから200KHzステップで周波数を可変しながら都度Vb、Vca、Vab、Vaを読み取り、SWRとインピーダンスはエクセルで計算しました。

SWR、インピーダンスともにSWRブリッジの方が高めに出ています。SWR = 1.62、インピーダンス 51Ω

まとめ

SWRブリッジによる電圧比較型簡易アンテナ。アナライザの電圧検出部のみを作成し、各部電圧の計測結果からSWR,インピーダンスその他を計算で求めてみました。使用部品や実装の問題から精度に疑問が残りますが、それでも30MHz程度までなあ十分実用に耐えるのではないかと思います。

今回は実験なのでRF信号(オシレータ)はSSGを代用し、表示はエクセルを利用しましたが、アンテナ・アナライザは機動性も重要ですので、オシレータも内蔵させ、表示はメーターかマイコンによるLCD表示、または周波数をスイープしてTFTグラフィックLCDなどにグラフ表示するなど、好みでいろいろアレンジできそうです。

チップ部品を使い、パターンも起こしてケースに入れ、電池で持ち運べるようにすれば、アンテナ調整などで活躍する測定器になりそうです。

(JF1VRR)

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