汎用直流電流センサーHPS-10AS、HPS-20AS

2023年07月05日

汎用直流電流センサー HPS-10AS(左)とHPS-20AS
小型でプリント基板で使える
電流値に応じて2.5Vを中心正逆2V(0.5から4.5V)の出力が得られる

U_RDの汎用直流電流センサー HPS-10ASとHPS-20ASの出力を計測してみました。回路の電流を計測する場合、交流であればカレント・トランス(CT)で計測できますが、直流となるとCTは使えず、電流センサーIC等を使って、その出力をOPアンプ等で増幅し、マイコンのADコンバーターで読んでと、いろいろ面倒です。今回計測したU_RDの汎用直流電流センサーは、直流、交流電流に対応し、正逆両方向の電流も計測できるというものです。出力は0A時2.5Vを中心として、電流に応じて0.5Vから4.5Vのリニアな電圧が得られます。電源は+12Vの単電源です。交流は20KHzまで計測できるようです。以下は主な特徴です。

15 x 15 x 10mmの小型(ピンを含まず)
プリント基板対応
絶縁計測可能 一次側 - 出力側 耐圧 AC2000V(50/60Hz) 耐圧 DC500V ≧500MΩ
定額電流(非飽和最大電流 FS) 正逆方向 3, 5, 10, 15, 20, 25Aの型番がある(HPS-10ASは10A、HPS-20ASは20A)
出力電圧 2.5Vを中心に0.5Vから4.5V 方向判別可能
直流から20KHz
出力精度 ±1%FS以内
直線性±1%FS以内
3μS以下の高速応答
ノイズレベル 40mVpp以下(無負荷)
電源 +12V

(詳しくはカタログ等で確認してください。)

HPSシリーズのカタログには簡単な内部ブロック図が載っていますが、それによるとコアとホール素子を利用した電流センサーのようで、アンプも内蔵しています。

今回の計測は、HPS-10ASとHPS-20ASに対して、それぞれ直流は12V、24V、48Vにおける0Aからフルスケール(FS 非飽和最大電流)までの出力電圧の確認。交流はAC100V 50Hzで白熱電球を負荷にして行いました。HPS-10ASのFS)は10A。HPS-20ASのFSは20Aです。

直流での​計測の様子
電源は0 - 50V 50A、負荷は電子負荷
計測内容は以下の通りです。

〇DC 12V、24V、48Vの各電圧で、0AからFSまで正逆方向1Aステップ
〇DC 12Vで0から1A 正方向 10mAステップ
〇電灯線(AC100V) 白熱電球1個から4個を負荷として出力電圧波形の観測
〇DC 12V、24V、48Vの各電圧で、0AからFSまで正逆方向1Aステップ

​12V、24V、48Vの各電圧で、0からFS(HPS-10ASは10A、HPS-20ASは20A) の1Aステップの正方向と逆方向の出力電圧を計測しました。正方向と逆方向は電源(0 - 50V 50A電源)と負荷側(電子負荷)をつなぎ変えて行いました。HPS-10AはFS 10Aに対して正に2V、逆に2Vなので、正逆ともに1A当たり0.2V、HPS-20AはFS 20Aでに対して正に2V、逆に2Vなので、正逆ともに1A当たり0.1Vの変化となります。​​印加する電圧は耐圧以内であれば関係ありません。最も大事な特性は出力のリニアリティーですが、グラフのような変化となり良好な特性です。

HPS-10AS

HPS-10AS
12V、24V、48V 0から10A 1Aステップ (0.2V/A)

HPS-20AS
12V、24V、48V 0から20A 1Aステップ (0.1V/A)

〇DC 12Vで0から1A 正方向 10mAステップ
12Vで、0から1Aまで10mAステップの正方向の出力電圧を計測しました。HPSの出力精度は±1%FS以内ですので、仕様上はHPS-10Aは0.1A、HPS-20ASは0.2Aです。その上で、この計測は10mAの変化に対して、出力電圧がリニアに変化するかを見てみました。HPS-20ASは0.001V/10mAです。結果、グラフのような変化となり良好な特性が得られました。10mAの微小な変化でも約0.001Vステップのかなりリニアな変化が得られています。

HPS-20AS
12V 0 - 1A 正方向 10mAステップ (0.001V/10mA)

交流での​計測の様子
電源は電灯線(AC 100V)、負荷は白熱電球

​〇電灯線(AC100V) 白熱電球1個から4個を負荷として出力電圧波形の観測
交流での計測は、電流を流せる交流電源装置が無いので電灯線(AC100V)での計測としました。負荷は60Wの白熱電球を4個用意し、並列に接続しました。パワー・アナライザで電圧、電流値を監視しています。FS 10AのHPS-10ASで計測しました。

今回使用した4個の60W白熱電球の電流値は、それぞれ、

電球A 0.5394Arms
電球B 0.5807Arms
電球C 0.6097Arms
電球D 0.5959Arms

です。HPS-10ASは0A センターが2.5Vですので、それを中心に交流電圧波形が乗ります。正方向10Aで2V振れるので、A当たり0.2Vとなります。​

​オシロの波形/演算より、
電球A (0.54Arms) は、0.113Vrms / 0.2 = 0.57Arms
電球A + B (1.13Arms) は、0.226Vrms / 0.2 = 1.13Arms
電球A + B + C (1.74Arms) は、0.343Vrms / 0.2 = 1.72Arms
電球A + B + C + D (2.33Arms) は、0.640Vrms / 0.2 = 2.30Arms

​ほぼ電流値と合っていますが、オシロのRMS計算は誤差が大きいものです。なお、オシロはACモードですのでDCはカットされてますが、実際にはDC 2.5Vの上に乗っています。

HSP-10AS 60W白熱電球 A (0.54Arms)
0.113Vrms / 0.2 = 0.57Arms

HSP-10AS 60W白熱電球 A + B (1.13Arms)
0.226Vrms / 0.2 = 1.13Arms

HSP-10AS 60W白熱電球 A + B + C  (1.74Arms)
0.343Vrms / 0.2 = 1.72Arms

HSP-10AS 60W白熱電球 A + B + C + D (2.33Arms)
0.460Vrms / 0.2 = 2.30Arms

以上HPS-10AS、HPS-20ASの出力電圧を計測してみました。結果、非常にリニアリティーのよい電流センサーということがわかりました。HPSシリーズは、​

直流電流が計測できる
正と逆方向の電流が計測できる
リニアリティーがよい
出力電圧が大きい
+12V単電源で使える

という、特徴があるかと思います。バッテリ機器の電流監視、交流回路の電力監視などの応用が考えられます。

(JF1VRR)

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