300W 簡易電子負荷の実験
投稿日 2025年09月14日

ヒートシンクの両面に計10個のパワーMOSFETを配置した300W簡易電子負荷
2SK2372を10個使用
エラーアンプはLM358N
電流調整は多回転ボリュームによる手動式
前回IGBTを2個並列にした100Wの簡易電子負荷を作りましたが、思いのほかうまく動き、実用的でした。これに気をよくして今回は300Wに挑戦してみました。
300Wの電子負荷はなかなか1個や2個のパワーMOSFETやIGBTでは実現できませんので、今回はパワーMOSFETを10個並列に接続し、1個当たり最大30W受け持たせることにして、300Wを目指しました。5Vで60A、10Vで30A、50Vで6Aです。1個あたりでは5Vで6A、10Vで3A、50Vで0.6Aの電流を担当することになります。
使用したパワーMOSFETはNECの2SK2372です。大まかなスペックを以下に示します。
Vdss 500V
Id(DC) 25A
Vgs 2.5 - 3.5V
Rds 0.22 - 0.27Ω
安全領域のグラフに今回使用するVdとIdの関係をプロットしてみました。DC使用での安全領域に入っています。

回路は簡易電子負荷ということで、単純な構成です。温度ドリフトや雑音などの考慮はしていません。設定電流値は多回転の精密ポテンショメーターです。今回はFineを設けずCoarseのみとしています。電源は安定化電源からで、OPアンプの電源も兼ねています。基準電圧源は使用していません。エラーアンプのOPアンプはLM358Nを使用しました。選んだ理由は在庫数、安価、電源範囲が広く単一電源でも使えるからです。もっと精密OPアンプを電流検出に使うべきですが、そこは我慢です。ショットキ・バリアダイオードの1N5822は気休めです。電流検出抵抗は0.01Ωとしました。温度係数は不明です。各パワーMOSFETに一つのOPアンプを割り当てているので、特性のばらつきは問題ありません。いろいろ手抜きの簡易電子負荷です。

実装(冒頭の写真)は以前大型のAC - DCインバーターから外したヒートシンクを土台とし、裏表を使ってコンパクトにまとめてみました。ヒートシンクが小さいのであまり長時間大電流は流せません。ちょっとした実験用と割り切っています。
DC使用のこのような用途でのパワーMOSFETの選定は主にドレイン - ソース間の耐圧(Vdss)、DCドレイン電流(Id)、許容損失(Pd)、ドレイン - ソース間ON抵抗(Rds)、ゲートしきい値電圧(VgまたはVth)くらいが要確認のスペックですが、高速にスイッチングするわけではないので、ゲートドライブの諸特性は関係ありません。ドレイン - ソース間ON抵抗は発熱によるドリフトがあるので小さいに越したことはありません。ゲートしきい値電圧は同じFETでも個体差がありますが、個々にOPアンプでドライブする場合は、気にする必要はありません。使用するOPアンプは、電流検出のシャント抵抗が0.01Ωと小さく、発生する電圧が1Aで0.01V(10mV)ですので、0V付近を増幅できるものを使用する必要があります。OPアンプで10倍から100倍くらいに増幅してから基準電圧と比較する方法もありますが、その分誤差やドリフト要因が増えます。基準電圧はできればシャント・レギュレータ等で安定化したほうがよいでしょう。実装は今回FETと電流検出シャント抵抗はヒートシンクに取り付けていますが、OPアンプほか回路は空中配線です。配慮点としてはOPアンプがFETの発熱による影響が少なくなるような配置がよいかと思います。今回使用したヒートシンクは小さすぎるので、連続使用の時間は数分程度です。
(JF1VRR)