6DT6 デュアルコントロールグリッド五極管

投稿日 2016/11/03

6DT6は一見6AU6と外観がよく似た7ピンの小型MT管です。しかしこの球が一般的な五極管と違うのは、シャープカットオフのコントロールグリッドを2つ持つ点です。

GE製 6DT6 Dual Control Grid Pentode
外観は6AU6に似た7ピンMT管

この球のデータシートを見るとFM検波用となっています。実際アナログテレビの回路図を調べてみると、使用例が多く見られます。テレビの前期は6AL5等の双二極管を使用したレシオ検波が主流だったようですが、6DT6が開発され中後期は6DT6の採用が増えたようです。

6DT6のベースピン配置は7ENです。7ENの球は6DT6、6DT6-A、3DT6、3DT6-A、4DT6、4DT6-A、5GX6、5HZ6、6GX6、6GY6、6HZ6、12DT6があります。5GX6、6GX6、6GY6、6HZ6もデュアルコントロールグリッド五極管です。

このピン配置は7極管の6BE6と同等と言えます。ネットを調べればラジオの6BE6を6DT6に差し替えても問題なく受信できたとの記事があります。

6DT6使用のFM検波回路
カラーテレビ RCA 14インチポータブルテレビ
誠文堂新光社 「無線と実験 501回路集」より

テレビでのこの球の採用例は上図のような回路になっています。中心周波数4.5MHzのFM検波回路です。右端に切れている次段は6AQ5の音声電力増幅段です。このように6DT6では出力が大きいようで、直接電力増幅段をドライブしています。6BQ5を直接ドライブする回路もあるようです。一方ゲーテッドビーム管の6BN6でもドライブを省略したものがありますが、その場合はgmの大きい6BK5や4M-P12などを電力増幅段に採用しています。

6DT6同等の5極ユニットが、コンパクトロンの6BF11、6AD10、いずれも異特性複合五極管(一方の五極部は電力増幅用)に採用されています。これらの球については後日とり上げたいと思います。

6DT6によるFM検波の原理は、なかなか難しいものがありますが、第一制御格子(g1)にはFM信号(テレビの場合は中心周波数4.5MHz)を加えます。第二制御格子(g3)にはクォドラチュア同調回路を接続しています。4.5MHzの交流信号によるプレートに向かう電子流の空間電荷作用によってg3に生じた電圧が4.5MHzに共振したクォドラチュア同調回路により90度ずれ、周波数変化(中心周波数からのズレ)によって第二制御格子の電圧が変化し、プレート電流の振幅を変化させる。とまぁこんな感じの原理のようです。ロックド・オシレータと呼ぶようです。

計測はGE製の6DT6で行いました。Eg1(第一制御格子(第一グリッド)電圧)またはEg3(第二制御格子(第三グリッド)電圧)のいずれかをパラメータとし、もう一方を0V、+0.5V、+1.0Vに固定しました。0V固定のグラフは6DT6のデータシートに載っています。Escr(スクリーングリッド電圧)は100V固定とし、各Eg1またはEg3におけるEp -Ip特性を計測しました。

グラフは

左がEg1をパラメータ(+3.0V から-3.0V変化)とし、Eg3を固定した場合。
右はEg3をパラメータ(+3.0V から-3.0V変化)とし、Eg1を固定した場合。

いずれもEscrは100V固定です。

静特性計測回路

〇 一方のEgが0Vの場合

 Eg1: +3V -から -3V Eg3: 0V                               Eg3: +3V -から -3V Eg1: 0V

〇 一方のEgが+0.5Vの場合

 Eg1: +3V -から -3V Eg3: +0.5V                             Eg3: +3V -から -3V Eg1: +0.5V

〇 一方のEgが+1.0Vの場合

Eg1: +3V -から -3V Eg3: +1.0V                                Eg3: +3V -から -3V Eg1: +1.0V

6DT6 GE No.401

(JF1VRR)

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