LUXKIT パワー・アンプ Model A3600
LUXKIT A3600の出力管8045Gを(EL34(ハーモニクス製)) 6CA7に改造
もう購入してから47年も経つが現役です
今回は我が家に君臨する往年の名機 LUXKIT Model A3600です。このA3600は昭和51年(1976年)に秋葉原のオーディオ・ショッピングセンターなる光陽電気というお店で購入したもので、当時の価格は67,000円でした。今でも領収証が残っています。重い重いこのキットを友人に助っ人を頼んで何とか自宅まで運んだものでした。
写真を見てアレっと思った方もおられるでしょう。そうです、A3600が採用している出力管は8045Gという球ですが、このA3600はそれよりほっそりしている6CA7に改造しています。残念ながらオリジナルの8045Gは1本昇天し、入手困難だったためやむなく6CA7の三結に改造したという訳です。いうなればA3600からA3500にランクダウンしたことになります。
もう47年もの間、私のオーディオシステム(そんな大そうなものではない)の中核アンプとして活躍してくれています。
LUXKIT A3600のアセンブリ・マニュアルより
オリジナルの8045Gを搭載した
8045Gpp 50W/50W
重厚感がある
A3600のオリジナル出力管8045GはNECとLUXMANが共同で開発した球と聞きます。その見かけはいかにもパワーが出そうな風格です。放熱フィンが異彩を放っています。私の感じたところでは、この球は不安定なところがあり、バイアス電圧の微妙な変動によってすぐに赤熱する扱いにくい球という印象です。そのためか一本赤熱の結果昇天させてしまいました。
LUXKIT A3600のオリジナル出力管 8045G
A3600の回路はこれと言って特徴をもつものではないと思いますが、A3600のために開発した8045Gの性能を発揮させるために出力トランスもOY-15を強化したもの(OY15-3.6K H.P)を使い、ドライバー段も新しく6240Gという双三極管を開発してムラード型位相反転回路を採用しています。初段アンプは6AQ8です。
ヒーターが6.3V 2.5Aという大食らいの8045Gのため、電源トランスにはS-2007が使われています。このトランスは6.3V 5.5A x 2 6.3V 2A x 1 370V 400mA 90V 180mAという構成です。電源部は余裕があるようで外部に引き出せるようになっていて、プリアンプのA3300などの電源として使用可能です。
A3600の回路図
LUXKIT A3600の組み立てマニュアルより
A3600の機構関係は、まず鉄製のがっちりしたシャシに重い電源トランスや出力トランスを重量バランスを考えて左右に配置しています。出力管の熱の影響が無いように出力トランスとチョークの間に金属板を立ててあります。最も熱に弱いのは電解コンデンサーですが、これらは最も熱源から遠ざけてあります。これ以上適切な配置は無いかなという感じです。
シャシは高さ4cmほどの薄型で、バックパネルにはスピーカー出力、入力、レベルボリューム、プリアンプ用電源出力、ヒューズ、電源スイッチなどが直線的に配置されています。フロントパネルは電源のパイロットランプのみです。上の写真にあるように、網状の金属カバーが付きます。
キットの組み立て、配線は丁寧に説明されている
LUXKIT A3600の組み立てマニュアルより
A3600の裏面(配線面)
キットの組み立てほどわくわくすることは無い
47年前のわくわくが蘇る
回路のドライブ段はプリント基板になっていて、それをシャシの上に配置し、金属カバーがかかっています。このA3600は完全バラキットですので、配線はすべて購入者が行わなければなりません。プリント基板の部品もすべてハンダ付けします。配線の手順はすべて組み立てマニュアルに丁寧に説明されており、その通り行えば何の問題もありません。とくにアース線の配線はマニュアル通りに行わないと、後でハム等に悩まされることになるかも知れません。一応、マニュアル通りの配線で、耳を近づけても聞こえるようなハムやノイズはありません。
A3600(6CA7三結改造)の実測周波数特性
-3dBの範囲は概ね7Hzから70KHz
例によってA3600の周波数特性を計測してみました。周波数特性は当然ながらマニュアルに載っています。
L.Ch、R.Chともスピーカーの代わりに8Ωのダミー抵抗を接続し、その両端電圧を交流電圧計で計測しました。入力のレベルボリュームは右に回しっきりです。グラフは1KHzを基準にした偏差です。-3dBの範囲は概ね7Hzから70KHzとなりました。これはマニュアル記載とさほど変わらない値です。1KHzからの偏差-1dB内に入るのは、10Hzから40KHzですので、これもマニュアル通りです。
このA3600は、おそらく部品定数の差が影響していると思いますが、聴いていて分かるほどではないものの、R.Chのほうが若干入力感度が高いようです。しかし、A3600のレベルボリュームは(クリック付きの)ステップタイプA型で、L Ch./R Ch.のバランスを正確にはこのボリュームで合わせることはできませんので、微妙なところはプリアンプで調整するしかなさそうです。
5Wの場合の低域の乱れは何度計測してもこのようになります。原因はわかりません。
無線と実験 1982年3月号に掲載された森川忠勇氏の記事
「GE 6550によるLUX KIT A3600の改造実験結果について」
友人からコピーをいただいたもの
14ページも使って詳細に書かれている
冒頭でも書きましたが当局の所有するA3600は出力管をオリジナルの8045GからハーモニクスのEL34、つまり6CA7に変更しています。これは8045Gをバイアス電圧の変動と思われる赤熱で一本昇天させてしまい。やむなく改造したものです。
8045GはA3600のためにNECとラックスが共同で開発した球を聞きますが、けっこう神経質な球のようで、当局のように昇天させてしまうケースが多く、代替球への改造を望む方も多いように思います。この8045Gは一本は勿論、特性の揃ったペアを求めるにしても、その入手性の悪さから、あきらめざるを得ません。
そのような事情で8045Gに似た代替球として6550への改造実験結果が詳細に雑誌の記事になっています。それは「無線と実験 1982年3月号」の森川忠勇氏の記事です。この記事によると6550がその見かけ(スタイル)、ピン配置、回路変更が最小限という意味で最適ではないかというものです。6550はほぼ常にオークションに出ていますので、現在でもさほど入手性が悪い球ではありません。
当局の場合は6550は採用せず、いささか迫力に欠けますが6CA7を三結で採用しました。上記の周波数特性はすべてこの6CA7のものですのでご注意ください。
当局のA3600は主にBluetoothのレシーバー、Youtube付きのテレビ、自作のイコライザーアンプでレコードを聞いたりしています。いい加減な耳なので音質等のレポートはできませんが、主にクラシックを聴いていても遜色ない音で鳴っています。購入してしばらく8045Gが昇天するまでの音は再現できませんが、6CA7でも十分だと思っています。
最近はロシアの事情もあってか、新品の真空管もお高くなってきました。ただでさえ部品の高価なオーディオ界ですが、よい音を求める人の気持ちは今も変わらず、真空管アンプのファンは多いようです。男のロマンといったところでしょうか。
(JF1VRR)