LM2596T-ADJ で正負両電源を作る
投稿日 2025年05月08日

LM2596T-ADJ使用の正負両電源
入力電圧15Vで1.24vから14Vまで可変可能
出力電流容量は正側が3.0A、負側が2.6A
LM2596 2個で正負両電源が作れる
LM2596は反転レギュレータ構成が可能な降圧レギュレータです。これまで正の降圧レギュレータと降圧反転レギュレータを個別に計測をしてきたので、以下をご覧ください。
LM2596T-ADJ使用の降圧レギュレータ
LM2596T-ADJ 降圧反転レギュレータ
これらの計測結果よりLM2596は負荷に対して非常に安定であることが分かりました。出力電流は正の降圧レギュレータで3.0Aまで、降圧反転レギュレータでは2.6Aまでとれるようです。今回は、これらを組み合わせて一枚の基板に実装し、正負両電源を作ってみました。
正の降圧レギュレータと降圧反転レギュレータはほぼ回路が同じ
LM2596使用の正の降圧レギュレータと、降圧反転レギュレータの回路は両者ともほぼ同じです。データーシートに回路例が載っています。電圧可変型を作るのでLM2596T-ADJで回路を描いてみると、以下のようになります。見て分かるように、降圧反転レギュレータは、正の降圧レギュレータにD1とD3を追加し、本来のGNDから負電圧を取り出すだけです。

正負両電源の回路
LM2596T-ADJを2個使用し、降圧レギュレータ(正側)、降圧反転レギュレータ(負側)を構成
負側は正側にD1、D3を追加し、本来のGND側を負の出力としている それ以外は同じ
この回路ではまだ遅延スタート回路は組み込んでいない
データーシートの回路図を加工
この回路を一枚の基板に実装してみました。手持ちの部品の関係でデーターシートどおりの部品定数や推奨部品を使っていないため、100%の性能は出ていないと思います。基板裏のパターンも銅箔で作った手作りです。放熱フィンも小さく十分とは言えません。
正電源と負電源の立ち上がり方に差がある
LM2596の5ピン ON/OFFは遅延スタートのピンですが、これをGNDに接続すると遅延スタートなしとなります。遅延なしの両者の立ち上がり波形をオシロで観測すると、以下のように正の降圧レギュレータ(設定電圧は9V)は約940usで立ち上がっていますが、降圧反転レギュレータ(設定電圧は-9V)の方は1.8msで立ち上(下)がっています。しかも降圧反転レギュレータでは、一旦正側に持ち上がり、その後徐々に下降しており、正側と全く違います。 もちろん入力電圧の立ち上がり(上のCh1の波形)方の影響も受けていると思われますが。

遅延スタートなしの立ち上がり波形
Ch1は入力電圧の立ち上がり(1Vx10/div)
正側出力電圧(Ch.2)は+9Vに安定するまで約940us、負側(Ch.3)は-9Vに安定するまで約1.86msかかっている
負側は一旦300usくらい(入力電圧が6Vくらいになるまで)、約+700mV正側に上がり、その後緩やかなスロープで-9Vに至る
この立ち上(下)がり方の違いを問題にするかどうかは、用途にもよるかと思いますが、正側と負側でスロープが異なるのはあまり良い事ではありません。たとえば正負両電源を使用したアンプなどで使用すると、この立ち上がりの差がスピーカーからの「ポツ」音となって現れるかもしれません。
遅延スタートの回路は5ピン(ON/OFF)に以下のような回路を付け加えます。

遅延スタートはこのようにC1、R1、R2を付け加える
今回は正側のC1を0.03uF、不側を0.01uFとした
R1、R2は同じ
データシートより抜粋
この遅延スタートは、そもそも入力電流に追いつかない電源の配慮として立ち上がりに遅延をかける機能ですが、特に負側(降圧反転レギュレータ)の場合は、比較的入力電流が大きいので、遅延スタートを利用して配慮しておくに越したことはありません。負側を遅延スタートで遅らせると、あまりに正側との差が出るのは好ましくないので、遅延スタート回路のコンデンサの容量を調整し、正負の出力電圧が同じタイミングで揃うようにしたいものですが、なにせ負側が緩やかなスロープで立ち上(下)がるものですから、ほとんど意味がないとも言えます。とりあえず、なんとか合わせてみたのが下図です。

正側の遅延スタート回路のコンデンサを0.03uF、負側を0.01uFとした場合の立ち上がり波形
正負ともに約7.6msで+9.0V、-9.0Vに到達している
ここまで遅延がかかると、入力電圧が十分安定(15V)している
このように合わせても、負側が緩やかに下降しているのであまり意味がない
自作の電子負荷で2A流してみる

自作電子負荷で2Aの負荷テストを行ってみた
正の降圧レギュレータと降圧反転レギュレータに同時に2Aの負荷をかけてみました。それぞれ単体で計測した結果は、冒頭のリンク先を参照してください。ここでは放熱フィンは小型のもので不十分ですが、外側にアルミ板等をねじ止めして、熱容量を拡大できるようになっています。
組み込みができる小型で電流容量数アンペアの正負両電源を作る手段として、反転レギュレータはひとつの選択肢です。少ない部品数で、手持ちまたはどこでも手に入る部品で作れます。今回使用したLM2596以外にも反転レギュレータ構成のとれるレギュレータICがあります。また、部品を選定すれ(小型のインダクタやコンデンサを使え)ばもっと小型に作れます。機会をみてシャットダウン回路、入力低電圧誤動作防止回路、リプル低減回路の計測をやってみる予定です。
(JF1VRR)