送電鉄塔巡視路のルートを想定する

投稿日 2021年10月14日

これはあくまでも想定であり、実際のルートはまったく違う可能性があります。実際とどう違うかに主眼は無く、あくまでもあれこれ想像して楽しむ遊びです。

送電鉄塔巡視路1_01.jpg

​高圧送電線「新秩父線」の埼玉県秩父市浦山にある53号から56号鉄塔の巡視路がどこに付けられているのか。
先日この辺りを登山のために歩いたときに得た情報をもとに想定してみた(緑線)

登山では、たびたび高圧送電鉄塔の巡視路に出会うことがあります。たとえば「=>新秩父線 54号に至る」などと書いてある黄色の杭で、そこに巡視路があることがわかります。その杭には送電線の名称と送電鉄塔の番号。そしてその方向が書かれています。それは送電鉄塔を管理する会社の巡視員が利用する鉄塔巡視路上で鉄塔の方向を示しています。登山道とは違うため、巡視路を登山で利用することはほとんど無いと思いますが、たまに登山道と巡視路が重なっていることもあります。それは送電鉄塔が登山道のある尾根上に建っていたりする場合です。

​バリエーションルート(一般道以外のルート)で登山をする場合、道の無い尾根や稜線を歩いたりする訳ですが、地図を見て、歩く尾根や稜線上に送電鉄塔がある場合、その鉄塔への巡視路があることを期待します。道の無いバリエーションルートを登るとはいえ、尾根の取付き点から送電鉄塔まで巡視路を利用できれば、その踏み跡を利用して登れ、確実に鉄塔までは行けるからです。場合によってはステップが付いていたり、手すりやロープ、クサリなどで補助して安全策が講じられている巡視路もあります。できればそういう巡視路を利用させてもらって、少しでも楽をしたいわけです。

​しかし、巡視路の存在を期待して現地に行っても、見つからない場合があります。登ろうとしているルートと、送電鉄塔巡視路の位置が違うからです。登山者が登ろうとするルートと、巡視路の付け方が違うということです。なんとか巡視路の入口を見つけようと、目印の黄色い杭を探し回ることもあります。しかし、簡単には見つかりませんし、あっても随分違った場所のため、登りたい尾根を大きく逸れていたりします。なぜでしょうか。

​送電線は多くの尾根や稜線の上空を渡るように張られています。鉄塔を建てやすい尾根のピークなどを選んで、尾根や稜線を跨いでいます。ある尾根のピークから、隣の尾根のピークへというように。このような山内に点在する送電鉄塔を巡視するための道は、当然一般的な登山道とは異なるルートをとります。登山道のように山頂を目指す道ではありません。とにかくそれらの送電鉄塔を効率よく巡視できれば良いのです。そのような鉄塔巡視路は鉄塔より上へは続いておらず、近道や危険のないところを選んで次の鉄塔へと続いています。登山道や、バリエーションルートで山頂を目出すルートとは、目的が違うのです。

前置きが長くなりましたが、送電鉄塔の巡視路がどこを通っているのか、鉄塔の位置から想定し、できれば現地に確認に行くことは、面白く、知的な遊びであり、登山に役に立つ事でもあります。今回は、先日登った「蕎麦粒山北尾根」(仮称)に建っている「新秩父線 54号鉄塔」の巡視路がどのように付いている可能性があるかを想定してみたいと思います。

​さて、「蕎麦粒山北尾根」は埼玉県秩父市の浦山の奥にある「広河原谷」の最奥にある尾根です。一般登山道の無いバリエーションルートで、東京都と埼玉県の都県境にある「蕎麦粒山」(標高1473m)から派生する尾根です。浦山の民家のある川俣から「広河原逆川林道」を4.5Km(1.5時間)ほど歩いたところにあります。詳細は以下をご参照ください。

蕎麦粒山北尾根から鯖粒山、仙元尾根下降

​登った当日、54号の巡視路を期待しましたが、我々が取付きたい位置には、黄色い杭は無く、巡視路の入口はありませんでした。この尾根の末端にはP872という、下からは見上げるようなピークがあります。送電鉄塔はそのピークの更に上の尾根上にあります。巡視路はそのような急斜面は普通避けるので、巡視路はないと覚悟し、先人の誘導マーク(赤ペンキ)があったことから、その時は尾根筋を外さないように登ることにしました。

​では、「新秩父線54号鉄塔」の巡視路はどこにあるのでしょうか。送電鉄塔が建っているからには、どこかに必ず巡視路があるはずです。そこで当日撮った写真や、Google Earthの登場です。

送電鉄塔巡視路1_03.jpg

​上の地図のE点
広河原谷逆川林道のヘアピンカーブのところにある鉄塔55, 56号への案内杭
朽ちかけた木橋で道が奥に入っている
白いテープに何か書いてあるが見落とした

まず上の写真のように広河原逆川林道のヘアピンカーブのE点に、鉄塔55,56号への巡視路入口があることがわかります。55,56号への巡視路も実際にはまだ歩いていないので想定ですが、地図に緑線で想定してみました。おそらく子尾根に沿って登り、55,56号を巡視した後、仙元尾根の一般道を下降して、尾根の下方にある57,58,59,60号鉄塔を続けて巡視するようになっているものと思われます。

送電鉄塔巡視路1_05.jpg

​蕎麦粒山北尾根と送電鉄塔54号、53号等の位置関係
尾根取付き点には巡視路の入口は無かった
A点をGoogle Earth のストリートビューで見ると巡視路案内杭のようなものが立っている(下の写真)
Google Earth 3Dで作成

送電鉄塔巡視路1_06.jpg

​A点をGoogle Earth ストリートビューで見た画像
木梯子がかけられ、その上に黄色い巡視路案内杭のようなものが立っており、
道が一工場谷の奥へと入っているのがわかる
杭の案内内容は確認できないが、おそらく54号、53号への案内杭ではないかと思われる

登山の当日、尾根取付き点で巡視路案内杭を探しましたが見つかりませんでした。このためP872まで直登しました。家に帰ってどこか近くにあるはずと思い、Google Earthのストリートビューで少し上流方向を見てみました。すると尾根取付き点から200mほど先の一工場谷を林道が跨ぐ屈曲点(A点)に上の写真のように案内杭らしきものが立っています。案内内容は確認できませんが、おそらく54号(B点)への案内杭でしょう。

​また、53号鉄塔(C点)が隣の子尾根の上に建っているので、巡視員の気持ちからすれば、二本いっぺんに巡視してしまいたいでしょう。そのため、おそらく54号、53号への巡視路となっているはずです。

尾根上 54号鉄塔の上D点にある鉄塔案内杭
53号、55号を示している
この地点から隣の53号鉄塔に行けることがわかる
また、55号鉄塔は仙元尾根の鉄塔なので、一旦林道に降りることもできることを示す

上の写真はD点にある鉄塔案内杭です。53号と55号を示しています。つまり53号鉄塔の尾根上の少し上にあるD点から、隣の53号鉄塔に行けること。および仙元尾根にある55号鉄塔にも行けることを示しています。55号へは一旦林道に降りるのでしょう。このことから、A点から登ってきた巡視路は、途中で53号への道を分けて、D点まで来ていると言えます。

送電鉄塔巡視路1_04.jpg

54号、53号鉄塔が正面にくるように見たGoogle Earth 3D画像
A点から一工場谷沿いに付けられた道は、途中の子尾根から54号、53号目指して上っていると思われる
この子尾根は傾斜が緩く大きな露岩も無いように見える
緑線のように巡視路が付いているものと想定
​子尾根上にはうっすらと踏み跡のようなものも見えている
Google Earth 3Dで作成

では、巡視路はA点から始まってどのように、D点や54号、53号鉄塔に至っているのでしょうか。一工場谷はGoogle Earthで鳥瞰する限りでは、厳しい谷ではありません。渡渉があるかも知れませんが、おそらく谷に沿って道があるのでしょう。そして巡視路が付けやすい傾斜がなるべく緩い、岩壁等が無い場所を選ぶはずです。そこで見つけたのが二工場谷が入る手前の小尾根です。この尾根であれば安全に鉄塔の高度まで登れそうです。そして途中から小沢の源頭をトラバースする形で各鉄塔に至る様に道が付けられているのではないかと想定します。定かではありませんが、Google Earthで見ると、この小尾根にはうっすらと踏み跡のような痕跡も確認できます。(冬季の画像なので地面が見えている)

さて、いかがでしょうか。現地を歩いたことがある人には笑われてしまうかもしれません。私も機会があればもう一度現地を訪れて、鉄塔までの巡視路を実際に歩いて確かめてみたいと思います。ただそれまでに、いろいろ情報を駆使して想定遊びをするのも面白いものですし、今後の登山にも役立ちます。

(​雅熊)

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