ユキワリソウ(雪割草)
投稿日 2025年06月22日

ユキワリソウはわりとお目にかかることの少ない花と感じる。高山におけるユキワリソウと言うとこの写真のイメージであるから山を登る者にとってのユキワリソウはこれだが、ネットで調べると様々な花形、色のユキワリソウが出てくる。それらは園芸種である。ユキワリソウ。つまり雪解けの頃咲く可憐な花のイメージ。歌にも謡われているほどで、国民的な可憐でかわいい花の代表である。
先日の6月中旬。なにもこの花を見るために山に登ろうなんて趣味は私にはないが、偶然通りかかった斜面で出遭った。それは「おお、こんなところに!」という感じだった。浅間山の外輪山の一角に「トーミノ頭」(あたま)というところがあり、そこから旧斜面が下の「湯の平」という旧火口平原に落ちている。登山ルートでは「草すべり」と呼ばれている斜面だ。周回ルートを組には草すべりを下らざるを(逆なら登らざるを)得なかったわけだが、以前ここを通過したときは秋だったので何もない急斜面だったのだ。ところが今回は花の斜面となっていたのだ。
それはわずか数十メートの範囲だったろうか。ハクサンイチゲやミヤマキンポウゲ、イワカガミ、ミツバツチグリ、キバナコマノツメなどと一緒に咲いていた。トーミノ頭から数十メートル下ったところだろうか。このため、この急斜面をユキワリソウが咲いているところまで降りてきて、見終わったら登り返す人も多いようだ。それはここを訪れるためには「車坂峠」からがもっとも近くて容易だからだ。
そうやってこの花を見た人は、これを「アサマコザクラ」と呼ぶ人がいる。まるで浅間山の固有種のように。はたしてそういう種があるのだろうか。ここは慎重になるべきだろう。「ハクサンコザクラ」に代表されるようにコザクラという名前もかわいい花の代表のように扱われる。そう、あのサクラソウのイメージである。たしかにユキワリソウもさくらそう科に違いないが。
牧野新日本植物図鑑 p473 1889 ゆきわりそうPrimura modesta Bisset et Moore さくらそう科
(雅熊)