谷川岳 湯檜曽川ゼニイレ沢遡行
1984年(昭和59年)10月28日 単独
投稿日 2009年09月24日
すでに初雪を迎えた谷川岳でしたが、この日は冷たい雨。車の中で上がるのを待ち、晴れ間の差したのを期に、白毛門山頂まで一気にかけ上がった遡行でした。
晩秋のヒッゴー沢を行く
ゼニイレ沢遡行図
土合の駐車場に着いたのが6時半。水上あたりから降り出した雨は、駐車場では、まとまった雨になっていたが、南の空が心持青く感じられたので回復するのを待つことにした。
やがて雨は霧状となり、陽も差すようになったので、レインジャケットをはおって出発した。
林道を歩く。紅や黄の落ち葉が絵の具をちりばめたパレットのようだ。マチガ沢を過ぎて少し行くと、やがてゼニイレ沢のスラブが姿を現す。ほぼ源頭まで見通すことができ、西ゼンのそれのように水がキラキラ流れ落ちる様子が手に取るように見える。
一ノ倉沢を湯檜曽川本流まで下る。ゼニイレ沢の出合いは、一ノ倉沢のほぼ対岸にある。湯檜曽川の河原でワラジをつける。流木を拾って杖にし、増水ぎみの湯檜曽川を渡渉する。
一ノ倉沢付近の林道から 紅葉のゼニイレ沢 その1
ゼニイレ沢はゴーロ状の押し出しで出会っている。上部はスラブ状であることが、ここからでも見て取れる。そのスラブはあまり広くはない。左俣が紅葉の中に食い込んでいる。
ゴーロの押し出しを登り、姿を現した一ノ倉沢の岩壁を何度も振り向きながら高度を上げていく。
やがて左に岩床が現れる。滝は無いがナメ状の岩床を水がすべり落ちている。
左俣を分けてさらに進むとスラブ帯となる。スタンスやホールドは豊富にあり、快適に登ることができる。
8mの滝が現れ左を小さく高巻く。この滝の上にはコケ付きのスラブがあるが、このスラブもスタンス、ホールドとも豊富だ。このスラブの上部に滝がかかっており、直登はむずかしいので、左の潅木を強引に高巻く。
もう一段滝があり、ここからトユ状のツルツルの岩床となって悪い。直登できず左を高巻く。
一ノ倉沢付近の林道から 紅葉のゼニイレ沢 その2
この上部で源頭らしくなり、2,3の枝沢を分ける。右上方は急で、上部が岩壁なので左に入る。草付きやガレがあって、熊笹に入ると白毛門からの枝尾根に出る。
シャクナゲやツツジ、熊笹の混じる尾根の藪漕ぎが始まる。潅木の根元をつかんで強引に登る。上部にはすでに雪があり指先が凍えそうに冷たい。がむしゃらに頑張って気が付いたら白毛門山頂から少し下の登山道に飛び出していた。白毛門の登山道に出るまで約30分の孤独な藪漕ぎだった。
山頂で着替え、ゆで卵をほおばって休むまもなく土合へ向け下山した。
山頂から10分ほどのところで女性が登ってきた。午後2時ごろであったが、女性一人でこの時間では、下山途中で暗くなっては危険と思い、山頂から戻るのを待って、一緒に下山し、高崎まで送った。車中でいろいろ山の話をした。白山に登りたいと言っていた。孤独で冷たい遡行の帰りは春野を歩くようだった。
(熊五郎)