特別ご開帳の金峯山寺蔵王堂
投稿日 2016年11月30日
大阪の実家に帰省するに際して、奈良吉野に宿をとり、夫婦で金峯山寺(きんぷせんじ)蔵王堂を訪れた。
晴天の伊勢神宮にお参りした後、林道のような国道(酷道)422号線をひたすら走ってやっと辿りついた吉野。すでに暗くなり始めた吉野の山々には、雲が低く垂れこめていた。
宿は上千本にある「桜美荘たいら」。その名の通り庭にはシダレザクラの大木。桜の時期に来たらさぞ見事だろう。
落ち着いた雰囲気の「桜美荘たいら」
民宿として登録してあるとのこの宿。部屋も料理も格は旅館。吉野の穴場と思う。
女将は気さくな愛想の良い吉野美人。吉野桜を愛でる会の理事をもお勤めという。吉野の桜の維持、奥千本の桜の献木活動に力を注がれているようだ。今は桜は無いがこの女将にお会いしただけでも来た甲斐があるというもの。
女将に蔵王堂の前の人出の多い理由をお聞きしたら、蔵王堂の金剛蔵王権現様の特別ご開帳期間中だとのこと。何も考えずに訪問した我々にとってはラッキーだ。
この宿は、吉野の多くの寺が集まる中千本から少し上の離れたところ、上千本にあるので静寂に包まれている。朝、小鳥が鳴きだすまで物音ひとつしない静けさ。霧の中の小雨で、山肌の杉木立も幻想的に見え隠れし深山の雰囲気満点だ。そうそう、夢見心地ではっきりしないが、まだ暗い頃、下の方でホラ貝と、梵鐘の音を聞いたような気がする。蔵王堂の一日の始まりだろうか。
桜の献木と、再訪をお約束し宿を離れた。
奈良吉野 金峯山寺蔵王堂
手前は境内の四本の桜
右に愛染堂
今回の特別ご開帳は国宝の仁王門大修理勧進とのこと。朝9時ごろ。雨というのに参拝者がすでに来ていた。入場料を払って拝観。普段は拝めない三体の巨大な蔵王権現様を拝み、発露の間での懺悔、迫力の護摩供養、愛染堂大祭、官長のご法話などなど。ひとつの寺に6時間も滞在。
修験道のこのお寺。行者はすべて在家の家族を持つ身。仕事ももっているそうだ。一般的なお坊さんとは違うんだそうで、このため目線の高さが我々と同じ。寺の中はピリッとした感じは一切なく、保養所の中に居るようだった。だから6時間も居れるのだろう。
1300年もの歴史がある修験道。修行の人たちは自分のためではなく、「利他」つまり自分以外の人のために修行し祈るとのこと。だから金峯山寺の祈りは世界平和を願うもの。
幼いころ亡き母に手を引かれて訪れた金峯山寺蔵王堂。その大きな建物は今でもその時のまま存在して我々を迎えてくれた。私にはその時のお香の香りさえも、未だにそこに漂っているように思えた。
(熊五郎)
コメント(2)
- 修験道のきびしさより温かみのある名刹なのですね。お宿も落ち着いた感じでいかにも吉野という土地にふさわしいようです。 2016/11/30(水) 午前 11:39
- そうですね。修験道の修行はきびしいようですが、人はやさしく親切です。そして吉野は美しいです。(熊五郎) 2016/11/30(水) 午後 0:29