小平から父不見山 

2020年12月03日 曇り 2名

投稿日 2020年12月06日​

今回は群馬県と埼玉県の県境にある父不見山(ててみえじやま)に登りました。群馬県側は神流町(かんなまち)。埼玉県側は小鹿野町(おがのまち)です。どちら側にも登山口はありますが、2019年の台風19号の影響で埼玉県側の林道が通行止めになっていたため、群馬県側から登ることにしました。

​父不見山とはまた、一風変わった名前です。この山の中で昔迷子になった伝説でもあるのかとも思いましたが、山頂にちゃんと説明板がありました。下の写真を見てください。山自体は地味な山で、近くの山々から眺めても、あれが父不見山と真っ先に同定できるような山ではありません。また麓からも見通せるような山でもないため、父不見という一風変わった名前で、しかも歌に歌われなければ誰も関心を示さないような県界の一ピークに過ぎません。

その歌とは、尾崎喜八の「父不見 御荷鉾も見えず神流川 星ばかりなる万場の泊まり」ですが、群馬県側の万場(まんば)という山里に泊まったときに歌われた歌です。深い谷合いの万場からはすぐ近くの父不見山も御荷鉾山(みかぼやま)も見えず、見えるのは上空にぽっかり空いた星空だけだったのでしょう。

ただ、万場は、利根川の支流である神流川に沿った十石街道、現在の国道462号の通る谷合ではもっとも大きな宿場町でしたので、秩父から小鹿野を経、県界の稜線を越えて人々や物資の往来が盛んだったようで、この付近には有名な峠が多数あります。今回登った父不見山付近には、東から土坂峠(つっさかとうげ)、杉ノ峠、坂丸峠、矢久峠(やきゅうとうげ)または屋久峠などがあります。土坂峠は今では車道がトンネルで抜けており、便利な生活道路となっています。矢久峠も今回訪れませんでしたが、林道が抜けているようです。杉ノ峠(今回訪れなかった)と坂丸峠は昔ながらの姿のままのようです。

今回通過した坂丸峠は昔ながらの雰囲気を残した峠で、石の祠と、薄い板石に「左 やま道 右 秩父道」と刻まれていました。間違いなく秩父との交通路だったようです。今回我々は万場の少し西側の小平から坂丸峠に向けて登りましたが、その道は登り口から峠まで丸くえぐられた窪状の道で、昔から往来が多くよく踏まれていることを伺わせます。少なくとも小平から坂丸峠までは馬でも歩けそうな緩斜面の比較的広い道で、露岩もほとんどありませんでした。

そんな古い峠道で坂丸峠に至り、県界の稜線を長久保の頭(ながくぼのあたま 二等三角点 大塚 標高1065.79m)から父不見山まで歩きました。父不見山までの稜線の道は、途中のピークを避けて南面をトラバース状に付いており、よく管理された杉の美林です。凹地の上の尾根に出ると対峙する尾根のほうから犬の鳴き声がしていました。それも何か盛んに吠えるような鳴き方です。猟の季節なのでこちらに来なければいいな程度に思いながら山頂を目指しました。山頂で食事をしているときもまだ鳴いていましたが、食事を終えて坂丸峠に向けて往路を引き返していた時には鳴き声がやんでいました。猟が終わったのかと思いつつ、坂丸峠から少し下ったところを歩いていると、小沢を通過したところで後ろから二頭のかわいいビーグル犬がついてきました。電波発信機を付けた猟犬でした。鳴いていた猟犬が主人から離れて、我々の匂いを辿ってきたようです。そのまま小平の車道まで下りてしまうわけにはいかないので、首輪に刻印されている番号に電話して小平の登山口で待っていた飼い主に無事引き渡すことができました。付きつ離れつついてくる犬たちは、とてもかわいいものでした。

今回のルートでは以前にあった山火事の影響は感じませんでした。朝からどんよりした天気で、早々晴れるだろうとの予測でしたが少し天気の回復は遅く、登っている最中は晴れることなく、稜線上は薄いガスの中でした。

猟犬との愉快なハプニングに遭遇した我々は車を置いた道の駅万葉の里にもどり、帰路につきました。そのころの頭上は青空。父不見も御荷鉾も見えませんでしたが、最後にきれいな青空が見えた山行でした。

国道462号 神流町の小平から父不見山を往復するルート
坂丸峠まではよく踏まれた古道で歩きやすい
概ね群馬側は自然林で明るい。埼玉県側は杉の植林
赤実践:GPS歩行軌跡
(国土地理院電子国土地図に情報追加)

主な通過時刻:
道の駅万葉の里駐車場 9:02
小平の登山口 9:24
途中の林道 10:16
坂丸峠 10:56
凹地 11:28
長久保の頭 11:50
父不見山山頂 12:09 (昼食)
坂丸峠 13:18
小平の登山口 14:30
道の駅万葉の里駐車場 14:52

所要時間:6時間
総歩行距離:11.5km​
 

国道462号 万場の少し先にある道の駅「万葉の里」
駐車場を使わせていただきました

小平の登山口
国道の脇の一段上の林道にある

坂丸峠への道は古い峠道
露岩がほとんどなく、窪状で歩きやすい

途中林道を通過する
案内板と建物の痕跡があった

坂丸峠
傍らに石祠があり、板石に「左 やま道 右 秩父道」とある
この道標は埼玉県側の森戸を示している

長久保の頭
二等三角点 大塚 標高 1065.79m
埼玉県側は摩利支天を示している

父不見山山頂
「三角天」と刻まれた石碑があるが思っていたより小さい(写真の左手道標の下)

父不見山の由縁

猟犬に遭遇(ビーグル犬)
仲のよさそうな犬たち
小平の登山口で飼い主に引き渡した

​(熊五郎)

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