稲含山から白髪岩(原三角測点)
2015年12月9日 快晴 2名
投稿日 2015年12月10日
三角点の元祖、原三角測点の存在を知り、さっそく出かけました。
稲含山から白髪岩(原三角測点)
(国土地理院の電子地図をカシミール3Dでカットし情報追加)
原三角測点(げんさんかくそくてん)は、明治15年ごろ内務省地理局が設置した三角点で、現在存在が確認されているのは雲取山、新潟の米山、そして今回訪れた白髪岩(しらがいわ)の三か所だけのようです。
非常に貴重な三角点をぜひこの目で見てみたいと、熊谷のYさんとともに出かけました。
白髪岩はハイキングで有名な群馬県下仁田の稲含山(いなふくみやま)から南南西に直線で約2.2kMほど離れた場所にあります。標高1512m(と言われている)のピークですが、原三角測点があるにも関わらず、国土地理院の地図には標高記載もない普通の一ピーク扱いです。つまり国土地理院は三角点のあるピークとは認識していない、または外したということになるかと思います。
この白髪岩は、下仁田町の最高峰のようです。実際登ってみると非常によい位置にあるピークだとは思いました。ただ、近くの直線で約2.1km離れたところには赤久縄山1523mが、約1.5km離れた所には白髪山(名前がまぎらわしい)1521mなどがあり、また白髪岩自体は少し細長いピークであることから、あまり三角点を置くにふさわしいとは必ずしも思えません。
原三角測点
一般的な三角点標石は四角柱だがこれは四角錐の台形
原三角測点
一般的な三角点標石は四角柱だがこれは四角錐の台形
明治15年10月設置とある
白髪岩には原三角測点の傍らに、地元の下仁田町中小坂鉄山研究会の岩井氏が書かれた説明文があります。奇しくも我々が登ったこの日、稲含山山頂で岩井氏とお会いし、原三角測点について説明をいただきました。岩井氏は稲含山の神守の役にもあられ、この日で775回目の登頂とのことでした。氏は研究会の名称からもわかるように、この地の鉱山についてお詳しいようで、下仁田界隈では昔、鉄が産出したとのこと。また稲含山近くではマンガンが産出したと教えてくださいました。また、原三角測点に使われている石材は南牧村から切り出された椚石(石英質安山岩)とのことで、東京の財務省の建物の壁面にも使われているとのことでした。明治15年と言えば西暦1882年。今から133年前ですが、原三角測点に触った感触は非常にきめ細かく、表面がきれいで、細く刻まれた文字は今でも鮮明でした。
白髪岩へのアプローチ
四つほど考えられると思います。
1. 御荷鉾スーパー林道の白髪岩登山口から
2. 夜叉のようらくから南小太郎山、白髪山経由
3. 稲含山から
4. 下仁田町桑本からP1499経由
いずれも一般ルートではなく道不詳のルートを歩かなければなりません。
1.はもっとも近く、原三角測点の確認だけなら手っ取り早い方法と思います。2.は南小太郎山と白髪山を経由して、山深いこの地域をたっぷり味わえるルートかと思います。4.は北西に延びる長い尾根を登るルートで、ほぼ直接白髪岩に近づけるルートですが、国土地理院の地図に破線(古い道)があるものの、いまでは道不詳と思われます。今回我々は初回とあって熊谷からの侵入が比較的しやすく車が確実に置けることを考え、3.の稲含山からのルートを選びました。(富岡の小幡から舗装道を神の池まで入りました)
稲含山からの登路
稲含山へはハイキングガイドなどにある一般ルートで登りました。車を神の池駐車地に置いて、一ノ鳥居、二ノ鳥居、神の水、稲含神社を経由して山頂に至ります。
稲含山山頂は360度の展望です。よい位置にあることから、北アルプス、八ヶ岳、金峰、日光連山、谷川岳、吾妻連峰、浅間山、浅間隠、鼻曲、妙義山、榛名山、赤城山、筑波山など。岩井氏によると、今日は筑波が見えないので99点だとのこと。スカイツリーや浦和のスタジアムなども確認できるとのことです。ただし南側の秩父の山々、東京と埼玉の県境の山々、富士などは見えません。
白髪岩から
中央の濃い部分は左端が両神山
右に延びる赤岩尾根
ストンと切れ落ちているのは赤岩峠
さらに右の小さなピークは大ナゲシ
稲含山からは東隣にあるピークまでアセビなどの灌木を分けて進み、露岩の痩せ尾根を南下し、200mほど急傾斜を下ります。この急降下は復路では難所となります。最低鞍部から白髪岩までは350mほどを登り返します。1377mのピーク(羽毛山)手前まで登り、笹の中の踏み跡を辿ってピークの西側を巻きます。再び尾根筋に出て次の1461mのピーク(物見山)も西側を小さく巻き、最後の斜面を登ると白髪岩です。ルートには要所要所に岩井氏が付けた目立つピンクテープがありますので迷うことはないかと思います。
白髪岩は標高1512mのようですが、やや北東-南西に細長いピークです。ほぼ中央の木の根元に原三角測点があります。おそらく設置された133年前の樹林は、今生えている木々ではなかったと思われますが、不思議にも大木の根などが原三角測点を押し上げたり、表土が流出して不安定に露出していたり、イノシシなどに周りを掘り返されたりすることなく、設置時の位置と姿を留めているようです。一般的には三角点の標石は表土が流出して根本部分まで露出し、周りの保護石さえ無くなっているのがよく見られますが、この原三角測点は非常に安定しているなと感じました。
白髪岩から
新雪の北アルプスの山々
原三角測点のある場所は、ピークとは言え樹林に囲まれており、夏などはほとんど遠望は利かないと思います。しかし、南西方向の御荷鉾スーパー林道につながる尾根側に出ると非常に美しい展望が開けています。
参考: パノラマ展望室 白髪岩からの展望(南方面)
ここからの展望は稲含山では見ることができなかった南側の山々から北アルプスまでが見られます。近くには二子山、両神山、赤岩尾根、大ナゲシ、宗四郎山。遠くには金峰山や小川山、御座山、武甲山、大持、子持、東京と埼玉の県境の山々、富士(頭部だけ)、南アルプスの一部、八ヶ岳、北アルプスなどなど。何時間眺めていても見飽きない景色です。この日は快晴でしかも空気が澄んでおり、光線の関係もあって非常に美しいシルエット状の山々がありました。
復路はほぼ忠実に来た道を戻りましたが、往路で西に巻いた物見山と羽毛山を踏んで帰りました。問題は先にも書いた稲含山直下の急斜面です。最低鞍部からはまばらな灌木のみの滑りやすい急斜面です。露岩も少なくスタンスのとれない斜面を、木につかまりながら力づくで登ります。上部は大きな露岩の痩せ尾根ですが、気を抜かないように注意が必要です。(夫婦ケヤキの先から最低鞍部まで道があるようです。これを使えば稲含山山頂をパスし、急傾斜を避けて白髪岩に行けるようです。)
通過時刻
神の池駐車地 8:20
稲含山山頂 9:35 - 9:50
最低鞍部 10:24
白髪岩(原三角測点)11:56 - (昼食) - 12:47
物見山 13:06
羽毛山 13:21
最低鞍部 13:56
稲含山山頂 14:45
神の池駐車地 15:40
さいごに
原三角測点については、岩井氏によると下仁田町の資料館に詳しい情報があるとのことでしたが、詳細を聞きもらしたのが残念です。標石はおそらく清掃もされて守られているのだと思いますがいまのところきれいに保存されています。貴重な文化遺産ですから今後も大事にしていきたいものです。
来年は南小太郎山経由と桑本からのルートを試してみたいと思っています。
(熊五郎)
コメント(2)
- 原三角点、初めて耳にする言葉です。墨絵のような景色がとてもきれいです。(agewisdom) 2015/12/10(木) 午後 9:45
- > agewisdomさん 明治15年というと、朝ドラの「あさ」が活躍していた頃ですね。この日は空気が澄んでいて、なかなか見られない見事なシルエットでした。(熊五郎)2015/12/10(木) 午後 10:14