谷川岳 西ゼンを遡行する
1984年(昭和59年)9月15日 2名
投稿日 2010年10月12日
西ゼンは谷川連峰の北端にある平標山(たいらっぴょうさん)の沢です。
毛渡沢仙ノ倉谷の支流です。
この秋、久しぶりに行こうかと目論んでいましたが、都合がなかなかつきません。
このため、古い記録ですが、アップすることにしました。
この沢は広大なスラブを二つもつ沢で、谷川連峰の沢のなかでも、その優美さは他に類をみません。
その美しさを、沢の隣にある尾根につけられた平標新道の途中から眺めることができます。(下の写真)
そこからは白い糸のような流れが、岩肌をすべるように落ちているのがわかります。
おそらくこの光景を見た登山者は、西ゼンに見惚れることは間違いありません。
白山書房「関東周辺の沢」の裏表紙より
平標新道からの紅葉の西ゼン 第二スラブ
JR上越線土樽駅を下車し、林道を歩いてケルンのある平標沢と仙ノ倉沢との分岐に辿り着く。(遡行図左下) このケルンが一般道の平標新同と西ゼンとの分岐点になる。
この日は平標の山頂部には分厚い雲がかかっており、沢の源頭部は雲の中だったが、その雲の中から一本の水の線がキラキラと輝きながら落ちているのが見えた。(注)
遡行図
ケルンからは、しばらく大きなゴーロの沢床が続き、左にダイコンオロシ沢、イイ沢を分ける。
イイ沢から上は滝がいくつか現れ、左に東ゼンを分ける。
やがて小さなスラブが現れ、さほど傾斜のない岩肌を快適に登る。
第一スラブ
15,20mほどの滝があり、ほどなく第一スラブがはじまる。
このスラブも傾斜はゆるく、フリクションを効かせて快適に登る。
高さのある滝は巻いたが、巻くといっても滝のサイドをよじる程度で、大きくは巻かない。
第二スラブの入り口にある20m二段の滝(他のパーティー)
第二スラブの入り口にある20m二段の滝は、シャワークライミングとなり全身びしょぬれになる。
第二スラブは傾斜が急になるが、ザイルを出すほどではない。
ザイルを出すときは、残置ボルトがあるので利用できそうだ。
傾斜があるのでスリップすると危ない。なるべく水線に入らないように乾いたところを選びながら高度をかせぐ。
第二スラブ 小さく登山者が見える
第二スラブの右サイドは、広大で急な岩壁になっており、その雄大な姿に見とれてしまうほどだ。
最上部は、熊笹帯に食い込んだトユ状の窪から水が飛び出ている。
両岸がせまってきて、流れも少なくなってくる。
2,3の支流を分け、6,7mの最後の滝を登ると、水流が一旦消える。
さらに登ると水が湧き出るところがあり、両手がとどくほど狭い窪状となって、右手に入る踏跡を辿れば30分くらいの熊笹の藪こぎで、平標の池とうに出て平標新道と合流する。
1984年(昭和59年)9月15日 2名 ケルンから池とうまで3.5時間
(注) ケルンから見える源頭部の水流は、おそらく中ゼン(東ゼンと西ゼンの間にある沢)のもの。
谷川岳の沢は、7,8月ごろだとまだ沢床に雪渓が残っている場合があるので注意。
今回は平標から松手山を元橋に下山したが、平標から仙ノ倉岳に廻り、シッケイの頭に下り、下降可能なイイ沢を利用してケルンに戻るコースもとれる。ただし特にイイ沢は北向きの沢なので残雪が遅くまで残っているので注意。(イイ沢には9月上旬でも雪渓が残っていたこともあった)
(熊五郎)
コメント(4)
- 山の専門用語はまったくわかりません。でも、ダイコンオロシ沢ってなんか状況が目に浮かぶネーミングですね。奇妙なところに反応してすみません。身近に山にチャレンジするような逞しい人いない、無縁でした。 2010/10/12(火) 午後 11:02
- agewisdomさん、沢の名前は面白いものや、不思議なものが多くあります。その多くは現地のマタギつまり猟師が名づけたもののようです。彼らは山頂よりも沢すじが行動圏なので、地名も沢が中心です。そのため、たとえばシッケイ沢の上にあるピークはシッケイの頭(あたま)というように沢に関連つけて名づけています。なお、沢の名前の由来はほとんどわかりませんし、地図作成時に便宜的に名づけたケースも多いかも知れません。(熊五郎) 2010/10/12(火) 午後 11:54
- 谷川岳 西ゼンを遡行する 熊五郎さん、こんにちは。素晴らしい滝が、そこかしこに沢山あるのですね。
谷川岳といってもどのあたりか、素人には理解できませんが、写真にあるような美しい滝は、できれまそばに行ってみたい
ものですね。ポチ入れます。 [ らくがき楽ちん ] 2010/10/13(水) 午前 11:23 - らくがき楽ちんさん、この沢は沢全体がひとつの滝といっても過言ではありません。上部の熊笹帯から流れ出た水は、岩板の上を滑り落ちています。沢というと狭く暗いところをくねくねと流れているのが普通ですが、この沢はスラブが大きくひらけているので明るく、沢全体がよく見渡せるめずらしい沢です。位置がわかるように、一番上の「西ゼン」をクリックすれば地図が見られるようにしておきます。(熊五郎) 2010/10/13(水) 午後 6:12