浦山大日堂からグミの滝、一杯水、大平山

2023年05月10日 晴れ 単独

投稿日 2023年05月12日​

若かりし頃、昭和60年(1985年)4月29日、細久保谷を遡行してグミの滝に至り、杣道(そまみち)を林道まで戻ったと記録にある。もう40年近く前のことである。あの杣道はどうなっているだろうか。グミの滝はあの時のように落ちてるだろうか。山自体は無くならないし、滝もそう簡単には消滅したりはしないだろう。しかし杣道は心配だ。道が無くなれば滝に近づくのも容易でなくなる。

​そんなことを考えながら幾年月。最近また秩父の浦山界隈を足しげく通うようになって、グミの滝をもう一度見たい思うようになった。いろいろ計画を立てる中で、今回思い立って緑まだ新しいこの時季を選んでグミの滝へと足を運んだ。

​埼玉県秩父市浦山の細久保谷は右俣の本流(ホンセン)と左俣(シセン)に分かれる。ホンセンには天目山林道が沿うように都県境まで延びている。シセンはグミの滝以外大きな滝の無い比較的容易な沢で、傍を杣道が走っているということもあって、沢登り初心者の私でも一人で入渓できた。​昭和60年のこのときはグミの滝手前のワサビ田にあった番小屋は健在で、近くに橋も架かっていた。遡行を終えてグミの滝を目に焼き付け、橋を渡って杣道を拾いシセンの入口へと戻った。このときはグミの滝より上、つまり都県境までシセンの源頭を詰めることはしなかった。

​今回はそのグミの滝を再訪するのと、滝までの道の状態を確かめること。そしてグミの滝上の源頭部から都県境の一杯水まで辿ることを最低限の目的とした。最近の浦山界隈の散策で、天目山林道のシゴー平営林署小屋上の道が屈曲するところに「一杯水、三ッドッケ」を示す道標①が健在ではっきりした踏み跡が入っていることに気づいた。その踏み跡に100mほど入ってみたら、がっちりした木橋や、シセンの入口から来る道の合流点にも道標②があった。これは行けると思ったのはこの時だった。

​浦山川俣の大日堂からシゴー平の手前まで車で入れないことはないが、下山を大平山経由にしたかったので林道を歩くことにした。シゴー平まで1時間である。シゴー平から先もよい道が続く。天目山林道だ。屈曲点に道標①があるのでそこから入る。以前熊の糞があったので、今回は用心のため熊鈴を手に持って鳴らしながら歩いた。道は一般道と変わらないほど踏まれている。植林杉の根元にネットが巻かれているので、このような作業の人が入るのだろうか。道は沢床から高いが奥で沢が近づいてくる。そこから道は怪しくなり植林は消えて自然林になる。ワサビ田跡が見えたら滝は近い。秩父わさび生産組合の「無断に採取することを固く禁じます」の看板がむなしい。古い有刺鉄線に気を付けながら段状のワサビ田を登って行くと倒壊した小屋があり、近くに道標③がある。もう橋らしきものは無かった。

​グミの滝はワサビ田の奥にあるが、三方岩壁に取り囲まれているためまだ見えない。水流に沿って危なっかしい落ち葉を踏みながら奥へ向かうと、堂々とした滝が見えてくる。高さ20mと言われる見事な滝だ。

​思い出の場所だけに、やや長居しすぎたが、道標③に戻る。道標③はやや傾いているが、一杯水方向は正しく指している。つまり水流を渡って対岸の斜面から小沢に廻り込んでグイっと高度を上げる。これはグミの滝を高巻くためにそうなっているのだ。上の斜面を廻り込んだところでグミの滝の落ち口が下に見える。

​すぐに再びワサビ田跡が展開する。きれいに段状になっており、往時はワサビが見事だったろうと想像する。ここにも秩父わさび生産組合の看板がある。沢はまだ水流が元気だったが、源頭の気配となって消えてしまった。コバイケイソウが目立つようになり傾斜が増す。源頭部の約200mの登りはキツイし、アブのような虫がうるさく付きまとう。

​目の前が明るくなり、林の向こうにはもう斜面が無い。やっとキツイ斜面は終わり一杯水にたどり着いた。幸い水は飲めるくらいの勢いで出ていた。極上の一杯である。ここから長沢背稜を歩き、七翅山から、大平山を経て川俣に戻るまで約11kmを歩かなければならないと思いつつも、冷たい水が胃に落ちるのが分かって、生きて帰るエネルギーが再び湧いてきた。このあと一杯水避難小屋から稜線を歩き、七翅山から大ダルミの天目山林道に降り立ち、再び登って大平山。独標から峠ノ尾根で川俣に下った。20km 10時間半のややハードな山行であった。

​グミの滝までの道は意外と明瞭で歩き易いが、ところどころザレの斜面で道が消えかけていたり、小沢をまたぐところが崩壊していたりする。慣れない人が一人で安易に入れる道ではない。奥は道が無くなり沢筋やワサビ田跡を歩く。グミの滝はかなり近づくまで見えない。グミの滝より上へは、道標③が示すとおり対岸に渡る。おそらく昔ここに橋があったのだろう。今は対岸の古い赤テープがこっちだよと言っているのみで、対岸の小沢を巻くように急登していく。この登りはグミの滝を巻くためで、やがてグミの滝の落ち口が下に見える。再びワサビ田跡を下に身ながら登って行くとやがて水流が消え、源頭となって長沢背稜の一杯水手前に突き上げる。

埼玉県秩父市浦山 川俣の大日堂から細久保谷をグミの滝
長沢背稜線の一杯水、七翅山、大ダルミ(天目山林道)
小平山から峠ノ尾根で細久保、川俣へ下山
赤実線:GPS歩行軌跡
(国土地理院電子国土地図に情報追加)

主な通過時刻:
浦山川俣の大日堂駐車場 7:53
シゴー平 8:53
滝下のワサビ田 一杯水、三ッドッケ入口(道標①) 9:16
道標② 9:25
グミの滝手前(道標③) 10:29
グミの滝 10:40 - 11:25
グミの滝手前(道標③) 11:33
滝上のワサビ田 10:18
長沢背稜一般道(道標④)  13:24​
一杯水 13:28
一杯水避難小屋 13:36
七翅山 15:10
大ダルミ 15:41
大平山 15:59
P1469 16:23
独標 16:55
送電鉄塔61号 18:00
地蔵峠 18:11
浦山川俣の大日堂駐車場 18:29

​所要時間:10時間30分
総歩行距離:20km​

​浦山川俣大日堂駐車場 標高 458m
グミの滝 標高 1044m
一杯水 標高 1451m
七翅山 標高 1651m(最高点)
オオクビレ 標高 1539m
大平山 標高 1603m

シゴー平上の林道屈曲点にある道標①
奥へ「一杯水・三ッドッケ」を指している
右の「林道・大平山」とは天目山林道経由で大ダルミから大平山
「シゴー平・川俣」は来た道

グミの滝への道はかなり奥まで明瞭​​

グミの滝手前にワサビ田跡がある

ワサビ田の上にある道標③
「一杯水・三ッドッケ」を指している
一杯水へは道標通り右へ沢を渡り対岸の小沢の廻り込むように登って行く

グミの滝
道標③の少し奥にある
三方岩壁で囲まれておりやや屈曲しているため、道標③からは見えない
20mくらいのりっぱな滝

道標③から高巻いてグミの滝の上(落ち口が見える)に出ると
再びワサビ田跡がある
きれいに段状になっている

長沢背稜(都県境)にある道標④
川俣」を示している
ここから一般登山道
一杯水までは数分

一杯水避難小屋
稜線の南斜面はうららかでピンクや白のツツジが美しい

稜線歩きは楽しい
のんびり歩きたい、まだ行程は長い

七翅山(ななはねやま)の山頂
地図ではわからないがいくつかのピークで成っている
七つあるのかな?

大ダルミ
天目山林道に降り立つ

大平山山頂
三等三角点「大平」標高1603.91m

​独標
途中にある小ピーク

地蔵峠
峠ノ尾根の末端
左は毛附、奥は細久保集落、川俣

(雅熊)

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