笠取山 唐松尾 将監峠周回

2018年05月05_06日 晴れ 3名

投稿日 2018年05月08日

先日、いつもの3人が集まったG3山サミット(山会議)で、GWは奥秩父に行くことになり、いろいろ考えた結果、車で行けて周回できる一泊ルートということで、Yさんお勧めの笠取山から将監峠に決まりました。泊まりはテントによる野営で、将監小屋のテント場を利用することになりました。

5月5-6日はGW最後でしたが、絶好の山日和となりました。少し雲はありましたが日中暖かく、夜はほとんど無風という、山では珍しいほどのよい天気に恵まれ、リュックが少し重かった以外は余裕で楽しめた山旅でした。

笠取山(かさとりやま)は、多摩川源流の山で、最も奥の水源地を水干(みずひ)といい、東京湾まで138Km長の多摩川の源頭とされています。今回は稜線を辿ったので水干には寄りませんでしたが、東京都を潤す水の源ということで、重要な地域と言えます。また笠取山の近くは多摩川のほか、荒川、富士川(笛吹川)の3河川の源流でもあります。

東京都水道局の看板(部分)
東京都の水道水源林の範囲が説明されている
この図のように奥多摩湖の上は山梨県の丹波山村や小菅村、甲州市になっている
川の名は多摩川から丹波川や小菅川に変わる
水資源が広大な領域で維持管理されていることが分かる
笠取山は(ハカマゴシ)となっている

ところで、東京都の水がめと言えば、多摩川上流部(奥多摩町)にある奥多摩湖(小河内ダムによって作られた人工湖)ですが、この奥多摩湖は東京都と山梨県の県境ぎりぎりで東京都にあります。このため湖の上流はすぐに山梨県に入ります。つまり、奥多摩湖の水のほとんどは、山梨県(北都留群丹波山村や小菅村、甲州市)に降った雨が流入したものなのです。

「山梨県ありがとう」と言いたいですが、笠取山などの山域を歩いて目に付く看板(源流の道、水源地ふれあいのみちの水干の説明、林道通行注意など)は東京都水道局のものです。やはり、山梨県に入っているとはいえ、東京都にとって大事な水源地ですから、東京都水道局が管理しているようです。水源は単に水が溜まっているダム湖だけではないということですね。

ところで、笠取山山頂は二か所ありますが、西側のピークにある比較的新しい山頂標は「山梨百名山 山梨県」となっています。ところが少し東側にある図恨点(標高1953m)のあるピークの山頂標は「環境庁」となっています。そして多摩川の源頭「水干」は環境庁の山頂標のあるピークの約100m下にあり、そこから多摩川が始まっているようです。水源の管理は東京都にお任せですが、自然環境は甲州市のもの。地名に関しては東京都は出しゃばれないということでしょうか。川名も多摩川と呼ぶのは奥多摩湖までで、山梨県に入ると丹波川などになり、多摩川という名前は消えます。なんとも微妙です。

今回歩いた作場平(さくばだいら)から笠取山、唐松尾山(からまつおやま)、将監峠(しょうげんとうげ)、将監小屋、三ノ瀬は山梨県甲州市に位置します(丹波山村との境、埼玉県との境を含む)。 国道411号(青梅街道)が塩山市に抜ける手前です。上にも書いたように水域は多摩川水系に属します。稜線は多摩川、荒川、富士川(笛吹川)の分水嶺です。登山用に付けられた道以外は、基本的には水源管理用に古くからある道と思われます。このため、稜線ではなく多摩川側の山腹を水平に付けられている道も多いように思います。そのような道は概ねよい展望は望めない樹林歩きとなります。ただし、今回のルートの「西御殿岩」のように、稜線上にピークがあって、それを逸れている登山道から往復できるようになっています。大展望を得たい場合は寄ってみる価値はあります。

この山は花崗岩(花崗閃緑岩)の山で、いたるところに花崗岩の大岩が露出しています。その形はほとんどが角のとれた丸い形をしています。林道の脇などでは「まさ土」化して、もろい土堤を作っています。沢にもまさ土が流入し、花崗岩独特の沢景を作っていますが、チャートなどの堅い岩の沢と違い、花崗岩の山の沢は、まさ土で覆われるためあまり美渓にはならないようです。

稜線は笹原状が広がっている場所が多いのですが、笠取山から唐松尾山までの稜線は花崗岩の露岩が多く、痩せています。展望こそあまりありませんが、露岩を越えながら歩く稜線は愉しませてくれます。ところどころシャクナゲがトンネルになるほど茂っているためか、「緑の回廊」と呼ばれているようです。南の斜面の林相は主に唐松ですが、鹿が樹皮をはがすため対策に追われているようです。鹿害と思われる立ち枯れの唐松が多く、対策が成功しなければ笹原になってしまう可能性もあるかと思います。いずれにせよ、大事にしたい自然です。

「続静かなる山旅」の口絵 藤井 実氏  将監小屋
昭和50年ごろの将監小屋と思われる

「続静かなる山」で、笠取山の執筆を担当した横山厚夫氏によると、笠取山は本来「袴腰山」(はかまごしやま)と呼ぶのが本当であって、笠取山は笠取小屋近くの1802mのピーク(そのピークには三等三角点 点名 高橋がある)であるとしています。その証としてはピークの近くに笠取沼という水溜があるとしています。実際、東京都水道局の看板(最初の写真)をよく見るとハカマゴシとなっています。

将監小屋は上のスケッチ画のように、のんびりしたたたずまいのよい小屋というイメージがありましたが、小屋の前に休憩棟のようなものが建てられたために、山小屋本体がほとんど見えなくなってしまっていました。スケッチ画と違うので個人的にはがっかりでした。バイオトイレ棟も建っています。小屋の近くの斜面にはゴミが散乱していたのは残念でした。テントは段々畑のような感じで50張り可能と聞きます。バイオトイレは匂いがなく快適です。そのせいか野営1人1000円はちょっと高い気がしましたが、しょうがないようです。

作場平から笠取小屋、笠取山、唐松尾山、将監峠、将監小屋、三ノ瀬周回ルート
赤実線:歩行GPS軌跡(一部の乱れを修正)
(国土地理院電子国土地図に情報追加)

通過時刻:
1日目
作場平(駐車場) 7:12
笠取山登山口(水干方面) 7:14
一休坂分岐 7:41 (休憩)
一休坂十文字 7:51
笠取小屋 8:45 (休憩)
笠取山下の鞍部 9:23
笠取山(手前) 9:41 (休憩)
笠取山(奥 標高1953 図恨点) 10:01 (休憩)
水干分岐 10:19
唐松尾山(三等三角点 点名 唐松尾 2109.27m) 12:04 (昼食) 12:25
西御殿岩分岐 12:52
西御殿岩 13:12
西御殿岩分岐 13:30
山ノ神土(和名倉、水平道分岐) 14:23
将監峠 14:41
将監小屋 14:47(野営)

2日目
将監小屋 6:00
ムジナノ巣 6:55
七ツ石尾根道分岐 7:12
三ノ瀬 7:37
水干方面分岐 8:18
作場平(駐車場) 8:40

所要時間:
1日目 7時間30分
2日目 2時間40分

歩行距離:
1日目 約15.4Km
2日目 約9.9Km

4:30に熊谷を発って関越道、圏央道と走り青梅ICで降りて国道411号(青梅街道)を走ります。御岳、奥多摩、奥多摩湖のサイドを走って多摩川の最上流部に入ります。奥多摩湖の先はもう山梨県です。国道はそのまま411号ですが、川の名前は多摩川から丹波山(たんばがわ)に変わります。落合から林道に入り作場平に着いたのは7時でした。

作場平の笠取小屋、水干方面の登山道に入る

作場平の駐車場はすでにほぼ満車。スペースを見つけて駐車しました。トイレの前に登山道の入り口があります。歩き易い唐松の緩斜面を登ります。一休坂を登っていくとやがて沢筋になり、水場があって一段上の平地に笠取小屋があります。トイレ、ベンチ、テーブル、テント場があります。鹿に餌をやっているようで、数頭が集まっていました。

笠取小屋
小広い平地にゆったり建っている
トイレ、テント場、水場、ベンチ、テーブルなどがある

笠取山(袴腰山)
一旦鞍部に降りて、急坂を登り返す
この辺りは多摩川、荒川、富士川(笛吹川)の源流部

トイレの横の幅広の木道をゆるやかに登っていくと分水嶺の小ピークがあり、その先の鞍部に降りたら笠取山の登りです。この登りはストレートについているので急登です。登っていくとどんどん風景が変わり、富士が見えてひと頑張りで最初のピークです。このピークには山梨県の山名標があります。眺めは最高です。東へ露岩を越えて数十mで二つ目のピークです。こちらには図根点があり、標高は1953mです。こちらには環境庁の山名標があります。この真下に水干があります。

笠取山の手前のピーク
山梨県の山頂標がある
こちらのピークは展望がよい

笠取山のもう一つのピーク
こちらの山頂標は環境庁となっている
図恨点(左の石柱)があり、標高は1953m

引き続き露岩の稜線を辿るとやがて右下の笹原に降ります。道標があり水干経由で笠取小屋への道が分かれます。今回水干には寄りませんでした。笹と唐松林の南側の斜面を歩きます。黒えんじゅ山は気が付かないうちに通過。再び稜線に乗ると露岩が出てきます。黒木の林床がシャクナゲのトンネルになっていて楽しいところです。ところどころに「緑の回廊」との看板があります。最後の登りを頑張ると唐松尾山です。ここには三等三角点 点名 唐松尾 標高 2109.27mがあります。登山道からやや北側にずれています。ここで昼食としました。

唐松尾山山頂は登山道からやや北に寄っている。三角点の場所から更に北に尾根が派生しているようだが、誰かが登山道と間違えたのか、入り込まないようにトラロープが掛けてありました。後で知ったのですが「静かなる山」の唐松尾山を執筆した横山厚夫氏によると、その先4,50mのところに露岩があって視界が開けるようです。西御殿山からでは唐松尾山に隠されて木賊山や甲武信岳、雁坂方面が見えないので、行ってみる価値はありそうです。

シャクナゲの稜線を唐松尾山に向かう
露岩もあって面白い

唐松尾山山頂
三等三角点 点名 唐松尾 標高  2109.27m
ここは展望がない。
展望を得たいなら西御殿岩へ寄る

唐松尾山からは下りとなります。途中の目立たない看板が西御殿岩への道を示しています。リュックを置いて空身になって西御殿岩に向かいました。稜線伝いでもいけるようですが確認していません。西御殿岩は360度の大展望です。普段秩父や西上州から奥秩父の山々を眺めている我々にとって、逆からみた風景は新鮮でした。富士、南アルプス、丹沢、雲取、国師、両神、御荷鉾、赤久縄などなど。大展望をほしいままにしばらく奥秩父の風を感じました。なお、西御殿があるなら東御殿という場所があるのか調べてみましたが近くには見つからず。関係ないですが西御殿(1536m)、東御殿(1487m)という山が乾徳山の南西にあります。

西御殿岩から竜喰山、雲取山方面を眺める

関連記事:唐松尾山 西御殿岩からのパノラマ

リュックを拾って山ノ神土(やまのかんど)へ下ります。山ノ神土は和名倉山(白石山)への道と、笠取方面への水平道などの十字路でもあります。さらに下って牛王院平(ごおういんだいら)のたおやかな稜線を辿り、将監峠(しょうげんとうげ)に至ります。峠からは草付きの斜面を真っすぐ下ると将監小屋が見えてきます。

唐松尾山、将監峠、和名倉山(白石山)、水平道黒えんじゅ方面の十字路

将監峠
背後の草付きの斜面を下るとすぐ将監小屋が見えてくる

小屋に届けを出し野営代(1000円)を払ってテント設営にかかります。テント場は段々畑のようになっています。50張と言われているテント場はゆったり張ってましたが、ほぼ満杯でした。差し入れのワインを飲みながら山話に興じ、ささやかな夕食を作って、明るいうちに横になりました。

将監小屋(右端の青い建物)とバイオトイレ(中央)
左の斜面にテント場
水場(豊富)は小屋の横にある

将監小屋から三ノ瀬までは車が通れる林道
唐松の下を野鳥の声を聞きながら下山する

翌朝は6時出発。下りの道は車が通れるような道です。唐松の緑を楽しみながら花崗岩のまさ土の道をとぼとぼ下り、三ノ瀬に出て舗装道路を作場平まで戻りました。山全体の新緑は標高1500mくらいまで来ていましたが、その上はまだ芽吹いたばかりか、冬枯れのままでした。稜線の春はもう少し先のようでした。

国道411号を少し走って、奥多摩駅の近くのもえぎの湯に寄り、さっぱりして帰路に着きました。

(熊五郎)

コメント(2)

  • 私の通っていたミッションスクールは世田谷区玉川田園調布にありました。あの水の流れがこんなところに続いているんですね。
    昔は教室の窓から流れを眺めたものですが、今は建て込んできっと川なんて見えないでしょう。卒業してから63年、近くまで行ったことあるけど母校を訪ねたことありません。すみませんあまりい関係ないことばかり書きました。 (agewisdom) 2018/5/8(火) 午後 9:23
  • > agewisdomさん 東京は多摩川の奥多摩、荒川の秩父、利根川の奥利根の水がめを控えた都と言えますね。それでもときどき水が心配になりますが。多摩川の上流が山梨県であることを知らない人も多いのではと思います。(熊五郎) 2018/5/8(火) 午後 11:56