白谷沢から棒ノ折山

2017年10月05日 曇り後晴れ 2名

投稿日 2017年10月06日

​今年の仲秋の名月は、見事な姿で登場。その白く美しい姿はやはり女性に見立てるのがぴったりだが、どこか冷たそうで余所余所しいのは、美人だから仕方ないか。今回は月見団子のような、まったく余所余所しくない女性と共に出かけた。

その女性とは妻だが、ここ数年山に行く機会を増やしている。200mほどの超低山から、今回の1000m近い山まで、数座に登ってきたが、意外と妻が問題なく登れることに驚いている。文句や弱音を吐かずについてくるし、体力もそこそこあるようだ。そこで今回の棒ノ折山で1000mまでの山は卒業。ワンランク昇格!といったところか。(笑)

しかし渡してあった地図で自分の位置を一度も確認しようとしなかったことや、何やらイヤホンでスマホの音楽を聴きながら歩くなど、ちょっと注意すべき点はある。まぁ、そのうち余裕がなくなってやらなくなるだろうとふんでいるが。

棒ノ折山有馬ダムから白谷沢ルートで山頂へ
下降は滝ノ平尾根ルート
(国土地理院電子国土地図に情報追加)

棒ノ折山(ぼうのおれやま)は、棒ノ嶺(ぼうのれい)とも呼ばれている。埼玉県と東京都にまたがる県界の山で、埼玉県側は入間川水系、東京都側は多摩川水系となっている。この山を秩父の山と見るか、奥武蔵の山と見るか、はたまた奥多摩の山と見るかは、登山者の選ぶルートにもよるが、実際微妙なところに位置している。いずれにせよ、あまり奥深くないアプローチしやすい位置にあるのがよい。山名に関しては当ブログでは「棒ノ折山」を採用したが、棒ノ嶺や、棒ノ峰など現地の道標でも混乱が見られる。

この山の東側は関東平野からの入り口にあるが、雲取山、酉谷山、天目山、蕎麦粒山、長尾丸山、棒ノ折山と続く県界尾根の東端であり、いわゆる東京都の背稜の一部と言える。雲取山の標高2017mから棒ノ折山の969mまで標高差は1000m余り、距離は約25kmの長大な尾根の末端である。

棒ノ折山山頂
昔はカヤトの草原だったようだが、今は土が露出している
大きな桜の木がある
屋があって雨がしのげる

この山へは、関東平野南部や東京都の住人であれば、青梅線利用か飯能経由で入間川沿いに近付くことになる。私の様に北関東(群馬)の住人であれば秩父経由も可能である。ただ、秩父経由の場合、正丸トンネルを抜けた後、高麗川水系から入間川水系に抜けるために狭い山合いの道で天目指峠(あまめざすとうげ)を越えなければならない。これがいやなら、圏央道ができた今、狭山・日高ICで降りて飯能経由で入るのも選択肢になる。今回往路は秩父から入って天目指峠を越え有馬ダム(名栗湖)のある名栗の河又に抜けた。帰りは暗くなったので峠道を避けて、無難な飯能経由の圏央道を選んだ。

棒ノ折山は標高969mの山で、山頂からの展望は北西から北、東に開けており、つまり秩父や奥武蔵の山々が眺められる。山頂に至るまでは自然林か植林の道であり展望はほとんどないが、山頂付近のみカヤトの草原状になっており、よい展望が開け、山頂にたどり着いた登山者にとっては突然の御褒美という感がある。いわゆる奥多摩のガイドブック的山頂の典型だ。今はかなり土が露出しているが、昔はカヤトの原だったようで、カヤトの平坦地を茅(ぼう)ということから、棒ノ峰などの山名は茅にちなむのではないかとの説もある。

山頂からは、武甲山、大持山、蕨山、武川岳、伊豆ヶ岳、丸山、堂平山、笠山、顔振峠、日和田山、関東平野などかなり広範囲に見える。条件がよければ赤城や妙義、上越の谷川や子持山なども見えるようだ。この山から眺めると武甲山1304mが関東平野のどこからでも見えることが納得できる。入間川や高麗川による浸食で山々は素直に東に向かって高度を下げるため、関東平野から見ればその頂点に武甲山があるようにも見えるのだ。北面が削られながらも山頂が残っているため、その存在感は今も健在。さすが武甲山だ。

この山の登山道は東京都側からと埼玉県側の何本かあるが、尾根伝いの縦走路や、隣の岩茸石山、高水山への道もある。特筆すべきはこのような低山にとってはめずらしい沢筋のルート(白谷沢ルート)があることだ。しかもその沢筋のルートは関東ふれあいの道であるため、整備されていて容易に歩ける。夏から秋にかけて沢音を聴きながらの登高は楽しい。ただ沢ルートなので雨後の増水もそうだが、特に切り立った岩壁からの落石や土砂崩れは警戒すべきだ。尾根ルートの滝ノ平尾根はやや退屈な尾根ながらあまり急なところがなく下降に向いている。(露出した木の根で歩きにくいが)冬季はこの尾根が利用されるようだ。(多摩川からの道や、尾根の縦走路は確認していないので書けない。)

ゴルジュを通過する
道はよく整備されており通過に問題は無い

今回は有馬ダム下の駐車場に車を置き、白谷沢ルートを登って山頂に至り、下降は滝ノ平尾根をとった。この周回ルートだと「さわらびの湯」が利用できるし、駐車場も広い。白谷沢は短かいながら美しい渓谷で、いくつかの滝とゴルジュの通過を楽しむことができる。

白谷沢ルートと滝ノ平尾根ルートは岩茸石で合流する。岩茸石から山頂までは木の根が露出しているのでひっかけないようにしたい。また木製の階段は崩壊しており登りはまだ良いが下りは利用せずに脇を歩いた方が無難である。(道を広げることには賛成できないが)

権次入峠
奥が山頂方面

岩茸石は滝ノ平尾根の道を通せんぼするように立ちはだかる大きな露岩であり、登って上に立つことは容易である。岩茸石というと、近くの高水三山の岩茸石山という山もあるので混同しないように注意すべきだ。権次入峠(ゴンジリ峠)から岩茸石に向かう道と、岩茸石山へ向かう道は90度方角が違うので下降する方向を間違えないように要注意だ。

棒ノ折山山頂から左端から大持山と武甲山の山頂部
中央に丸く大きい武川岳

麓の名栗の里は入間川が流れ、谷合いには家から煙が立ちのぼってのどかな雰囲気だ。沢で水流と沢音を楽しみながら登り、明るい山頂では暖かい日差しの下で景色を眺めながら昼食をとった。さわらびの湯で汗を流して帰途についたときはすでに暗くなり、飯能への道すがら出たばかりの仲秋の名月がすこし顔を赤らめていた。

参考

駐車場はさわらびの湯近くに売店のある駐車スペースがある。トイレもある。白谷沢の入り口にも駐車スペースがある。

白谷沢の入り口と、滝ノ平尾根の入り口(橋を渡った民家の前)に登山届のポストがある。

さわらびの湯のある有馬ダムの下の集落は河又という。このため山内の道標でさわらびの湯方面を指す場合、河又や河又バス停となっている。

岩茸石は四差路となっている。名栗温泉への道は「トウギリ林道へ」となっているが、これは湯基入のことで、昭文社の地図では「大名栗林道」となっているのでややこしい。

山内の道標は棒ノ折山、棒ノ嶺、棒ノ峰など、名称に混乱がみられる。

権次入峠からは岩茸石のある滝ノ平尾根への路と黒山経由の岩茸石山への道がほぼ90度で分岐する。岩茸石と岩茸石山は別物であるため間違いやすいと思われる。

白石沢は地図上の東屋の直前まで水流があった。東屋は現在取りはらわれている。(ベンチしかない)

有馬ダム下(さわらびの湯近く)の駐車場 10:14

白谷沢入り口 10:39
最初のゴルジュ 11:20
二つ目のゴルジュ 11:30
白石谷源頭の林道 12:10
岩茸石 12:26
権次入峠  13:04
棒ノ折山山頂 13:19 (昼食) 14:05
岩茸石 14:38
滝ノ平尾根入り口 16:11
有馬ダム下(さわらびの湯近く)の駐車場 16:20
さわらびの湯 800円 アルカリ質の単純泉 18:00まで

(熊五郎)

コメント(2)

  • 最後の写真の山並みがとても素晴らしいです。雲の白い部分の重量感がとても不思議な雰囲気を醸し出しています。 (agewisdom) 2017/10/7(土) 午前 0:26
  • > agewisdomさん この写真はご自宅の西の山々を南側から眺めている感じです。これから11月いっぱいくらいまで秋の山々のシーズンです。(熊五郎) 2017/10/7(土) 午前 11:56

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