必要なものをすべて背負って
投稿日 2009年11月15日
登山では、とくに数泊するような縦走登山の場合は、食料や生活用具のすべてを背負って歩きます。
靴、食糧、水筒と水、コンロ、鍋、燃料、テント、シート、寝袋、衣類、医薬品、キャンドル、ヘッドライト、ロープ、カメラ、双眼鏡、地図、コンパス、筆記用具、ゴミ袋、工具、本、ラジオ、お酒etc etc
これらは、つまり、
普段の生活用具の縮小版です。
テレビやエアコン、冷蔵庫などの贅沢品と、教科書、参考書は持ちませんが。
コリン・フレッチャー著 コンプリート・ウォーカー(遊歩大全)
家を出発し、
最後の乗り物を降り、
最後のコンビニと最後の自動販売機を見送り、
最後の民家でトイレを借り、
畑のおばあちゃん(最後に見た人間)に挨拶した後の数日間は、
自分の体と背中の荷物がすべてとなります。
エネルギーは、リュックの中の食糧のほか、山の自然から若干得られますが、
基本的には粗食に耐えねばなりません。
登山者は生きていくためのすべてを背負い、自分の足で歩き続けなければなりません。
遊歩大全には美しいイラストが添えられている
遊歩大全は、ウィルダネス(wilderness)
つまり大自然の中を歩く人のためのバイブルです。
日本ではバックパッキングで遠距離を歩くといっても、ウィルダネスを歩き続けることはできません。
荒涼たる山や谷、サソリや毒ヘビにしか遭わないような場所は日本にはありません。
しかし、山岳縦走はウィルダネスに近いかも知れません。
山小屋のビールの誘惑に負けなければ.....
今晩は天気がいいから、テントを張らず星空を見ながら寝よう
この愛すべき本には、
大自然を歩く人のための道具の紹介と使い方が丁寧に書かれています。
その詳しさと視点の良さには驚かされます。
私はこの本で、一生大事にする道具として、スベア123, シェラカップ、シグボトルなどを選び、今も使っています。
バックパーカーのお荷物の中身
登山者は、食糧をすべて食べつくし、背負って行った道具をすべて使いこなし、眼に飛び込んだ自然の風景を記憶の袋に入れて持ち帰ります。そして、自分の体の信頼性に深く感激するのでしょう。
最後に、この本の付録にある名言集から、いくつか拾います。
「文明社会の人間は、馬車を作った。そして足の使い方を忘れてしまった。」 エマーソン
「人生には、速度を早めることより大切なことがある」 ガンジー
「朝の遅い人は、一日中忙しい」 ベン・フランクリン
「ひとり居る時こそ、最も孤独から遠くへだたった世界である」 エドワード・ギボン
「心をなごますものが三つある。水と、緑なす草原と、女性の美だ」 フランク・ハーバート
(熊五郎)