八方尾根の花たち

投稿日 2024年8月6日

長野県北安曇郡白馬村の八方尾根は、下部から中間部の八方池の上まで超苦鉄質岩類、いわゆる蛇紋岩が露出しており、樹林帯が形成されにくいため、尾根の下部から中間部あたりまでは樹木の生えない高山植物帯となっています。蛇紋岩であることがよくわかるのは、八方池山荘のすぐ上の尾根上にある露岩です。リフトを降りた地点からすぐに展望のよい尾根歩きとなり、白馬岳や五竜岳、鹿島槍ヶ岳などを眺めながらの登高となりますが、足もとには様々な高山植物が花をつけ、楽しませてくれます。蛇紋岩帯が終わるとわずかながらカンバの林(下ノ樺、上ノ樺)があり、キンレイカのような木陰を好む花も咲いています。さらに上部は露岩と砂礫地になっており、そのような場所を好むチシマギキョウやミヤマコゴメグサなどの花も咲いています。このように八方尾根は下から上まで景色と高山植物を楽しみながら登れる尾根となっています。

撮影 2024年8月3日 天気は晴れ ほぼ無風
科は特記がないかぎり牧野新日本植物図鑑による
コメントは投稿者の感想

ミヤマホツツジ
つつじ科落葉低木
めしべがすっと延び、小さなランを思わせる花
蕾は先端が赤く染まってかわいい

ウメバチソウ
ユキノシタ科(牧野) ニシキギ科(APG) 多年草
紋章の「梅鉢」に似るも花弁は梅のように丸くはなく、やや尖って卵形
ガクに囲まれた白玉のようなつぼみもかわいい

タカネナデシコ
なでしこ科 多年草
茎が細く弱弱しいこの花が高山の砂礫地帯に咲くことが信じられない

オヤマソバ
たで科 多年草
おやま(御山)は白山のことらしい
たで科の花はかなり厳しい環境でも目撃する

イワウチワ
いわうめ科 多年草
葉はうちわというよりはカップ状である
この肉厚で艶のある葉が常緑であることに驚く

タカネマツムシソウ
まつむしそう科 越年草
園芸種のスカビオサは様々な色があるが、山で見るマツムシソウはほぼこの色で花が大きい
他の花に混ざってお花畑を形成していることもある

キンレイカ
おみなえし科 多年草
下ノ樺にて
林の下などの木陰に点在して咲いていたりする
2,3mmの小さい花の集まり

タムラソウ
きく科 多年草
花がアザミに似るが葉を見ると違う
ハッポウアザミの花はもう少し大きく、下を向いて咲く

イブキジャコウソウ
しそ科 低木
地面に貼りつくようにして咲く
このような個体が点々と分布していることが多い
イブキは伊吹山、ジャコウは香料になることからくるらしい

クルマユリ
ゆり科 多年草
扇雪渓に近い低木林内にて
他の背の高い植物に混じって花だけ出していることが多い、小さなかわいい百合

ハクサンタイゲキ?
とうだいぐさ科 多年草
キョウチクトウのような葉が輪生。すっくと延びた茎の先にうす緑色の総包
科のとうだいはロウソク台(灯台)のことらしい
タイゲキは生薬の大戟

ミヤマキンポウゲ
きんぽうげ科 多年草
やや艶のある黄色い花で、4,50cmくらいの草丈がある
群生していることもある

ミヤマリンドウ
リンドウ科 多年草
可憐な花はフデリンドウに似るが、フデリンドウは低山でもある
花びらは五枚の裂片となり、その間に交互に小さい裂片が見える

ハクサンフウロ
ふうろそう科 多年草
よく見られる花で、高山のお花畑の立役者
山によってピンクがやや濃い場合もある

チシマギキョウ
ききょう科 多年草
山頂に近い砂礫帯につつましく咲く
大きな岩を乗り越えたら割れ目に咲いていたなんてことも

ミヤマコゴメグサ
ごまのはぐさ科 一年草
高山でよく見る花
花の下唇が三裂で中央にオレンジ色の斑紋がある

ヤマハハコ
きく科 多年草
高山でもよく見かける花で、崩壊地のような厳しい環境でも生えている
ドライフラワーのようなカサカサした感じを受ける

ミヤマアキノキリンソウ
きく科 多年草
葉の色が幾分濃く、花は頂点部に固まって付く
群生はせず砂礫地に散らばって咲いている

タカネニガナ
きく科 多年草
黄色の舌状小花を10から11個つける
11個のものはクモマニガナというようだが判然としない

シロバナタカネニガナ
きく科 多年草
タカネニガナと同じく可憐な花をつける
タカネニガナの白花

ウサギギク
きく科 多年草
500円玉くらいの大きな花
葉の形がうさぎの耳に似ているからという

シラネニンジン
せり科 多年草
高山でよく見かける花
ガスが出て、あたりが白く霞むような状況が似合う花
よく似た花にアマニュウ、ハクサンボウフウ、シシウドなどがある

モミジカラマツ
きんぽうげ科 多年草
花は唐松の葉に似、葉はモミジに似ている
果球が緑色でかわいい

シモツケソウ
ばら科 多年草
落葉低木のシモツケに似た花の草本という意味でシモツケソウ
綿菓子のようにふんわりした花に蕾がまざり不思議な感じを受ける

ホタルブクロ(赤)
ききょう科 多年草
林道の脇などでよく顔を出している
斑点のあるものもときどき見る

ホタルブクロ(白)
ききょう科 多年草
赤よりは少ないように思う
ホタルを入れるなら白がよいかも知れない

タテヤマウツボグサ
しそ科 多年草
八方尾根の下部から中間部まで広範囲に分布している
鮮やかな紫の数十の花群が点々と分布
どの花を見ても食われたように先端が無いように見えるが?

マルバダケブキ
きく科 多年草
林や大きな木の下など、やや日蔭を好むようだ
丸い大きな葉から柄を延ばして花をつける

ヨツバシオガマ
ごまのはぐさ科 多年草
鶴か朱鷺がやや下を向いて羽を広げているように見える
深い鋸歯のある葉が四枚対生する
寄生植物らしく興味深い

マルバイワシモツケ
ばら科 落葉低木
シモツケ同様花を密に付けるが、葉が丸い
山地の露岩帯を好むようだ

ツリガネニンジン
ききょう科 多年草
釣鐘状の薄紫の花がかわいい
ニンジンは根が朝鮮人参ににているからという

チングルマ
バラ科 低木
風当りを避けられる窪地や斜面などに
このように群生して可憐な花をつける

オトギリソウ
おとぎりそう科 多年草
ややスクリュウ状の花弁が印象的
弟切草は兄が秘密にしていた鷹の傷薬を他人にもらしたことで兄に切り殺された弟の悲運の花

カライトソウ
ばら科 多年草
赤紫のブラシ状の花が先端から咲く
どの個体を見ても半分くらい咲いた状態に同期しているのは面白い

クガイソウ
ごまのはぐさ科 多年草
数段の輪生した葉の付き方が面白い
青でもなく紫でもなく、ちょっと不思議な花色

キンコウカ
ゆり科 多年草
拡大すると花も蕾もゆりに似ているから面白い
湿地のような場所に群生していることもある

ニッコウキスゲ(ゼンテイカ)
ゆり科 多年草
群生が見事な花だが時期が遅かったのか数本のみ見られた

ハッポウウスユキソウ
きく科 多年草
うすゆきそうの八方尾根固有種
ミヤマウスユキソウやハヤチネウスユキソウのように大きな花ではなく地味

ハッポウワレモコウ
ばら科 多年草
ワレモコウは標高の低い草地などでも見かけるが、
これは八方尾根の固有種

写真はないが同日現地で確認した花(量は時期によるところも大きい)

コイワカガミ 少ない
ミヤマアズマギク 少ないがところどころに
ハッポウアザミ 広く分布している
オオバギボウシ 尾根の下部に多い 草に紛れて花柄だけ出している
ゴゼンタチバナ 少ない 低木の陰などでつつましく咲いている
ヤマブキショウマ 広く分布している

(雅熊)

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