嵐山渓谷から大平山、大聖寺、下里から遠山を歩く
2024年01月29日 晴れ 単独
投稿日 2024年02月01日
真冬とはいえ、年が明ければ水仙が咲き、蝋梅が香ってきます。これらの花の香りは正に春の香り。山に登ればどこからともなく春の香りが漂ってきます。
そんな春隣の山として選んだのは埼玉県比企郡嵐山(らんざん)町の嵐山渓谷。そして前回、明覚駅から小川町まで抜けた山行で眼下に見えた下里ののどかな光景に惚れて、その下里を今回歩いてみることにしました。小川町や嵐山町辺りは歴史的にも興味深い土地で、この辺りは青石塔婆などの板碑が多い土地。板碑製作遺跡もあって、興味がそそられます。
まず、嵐山渓谷観光駐車場をお借りし、嵐山渓谷へ。嵐山渓谷は槻川(つきがわ)が狭い岩の渓谷を蛇行するところ。風光明媚な観光名所です。与謝野晶子も訪れたようで、歌碑があります。
「比企の渓 槻の川赤柄の傘をさす松の 立ち竝びたる 山のしののめ」
アカマツを赤柄の笠に見立てています。この頃はまだ嵐山とは呼ばれてなかったのでしょうか。岩の河原に降り、冠水橋を見た後、大平山に登ってみました。大平山の標高は179m。嵐山町の最高所のようです。山頂の手前に東屋とベンチがあって、南側の眺めが楽しめました。
山頂から駐車場に戻り、こんどは小倉城跡を見るため入り口に向かいました。ところが発掘調査のため立ち入り禁止。残念です。戻って遠山の槻川沿いの道を歩いて「遠山の甌穴」へ。甌穴とは川の流れで岩にできた壺状の穴です。最初は小さなくぼみで、そこに小石が入り、水の流れて小石が回転し、周りを削ってやがて大きな穴になるようで、ポットホールとも言われます。
次は下里にある「阿弥陀図像板石塔婆」に寄りました。これは長享2年(1488年)に建てられた月待供養結集板石塔婆とのことです。さすが板碑の里。少し戻って寒沢(かんざわ)に入り、大聖寺(だいしょうじ)に向かいました。寒沢の道はあまり踏まれていませんが、道形ははっきりしています。奥の屈曲するところに大聖寺を指す朽ちかけた道標がありました。尾根を越えると下りになり、大聖寺の墓地が見えてきます。山の中腹にある寺で、小川町のビル群が少し見えていました。残念なことにこの寺にある「六角塔婆」を見落としました。
境内で昼食をいただき、下里に下りました。槻川を渡たると下里分校の道標に誘われて左折。まもなく、旧小川小学校下里分校がありました。今は学校としては使われていないようですが。昭和レトロな校舎が印象的です。
下里の集落を過ぎると田園が広がります。槻川沿いの道をのんびり歩くと、天皇皇后両陛下行幸の碑や、松尾芭蕉の歌碑があります。さらに歩き、割谷(わりや)の「下里・青山板碑製作遺跡 割谷地区」に寄りました。林道を歩き、山道を少し登ると板石を加工した跡があります。小川町や嵐山町の槻川沿いや周辺の山は緑泥片岩の産地です。このあたりの岩や石はほとんど緑色。そのせいか、古い墓石や石仏まで緑色です。緑泥片岩は板状に割れ、加工しやすいため昔から板碑に使われてきました。下里にはいたるところに板碑が建っています。
槻川沿いの道に戻って遠山から駐車場に戻りました。槻川が大きく蛇行する下里や遠山、嵐山渓谷あたりは、なかなか風光明媚。春隣の一日、広がる田園と点在する民家ののんびりした山里の光景を味わいました。
埼玉県比企郡嵐山町 嵐山渓谷観光駐車場から嵐山渓谷、大平山
寒沢から大聖寺、下里、割谷の板碑製作遺跡、遠山を歩いて駐車地に戻る
赤実線:GPS歩行軌跡
(国土地理院電子国土地図に情報追加)
主な通過時刻:
嵐山渓谷観光駐車場 8:27
嵐山渓谷展望台 8:41 (渓谷散策)
大平山 10:03
小倉城址入口(戻る) 10:27
遠山の甌穴 10:47
寒沢入口 11:11
大聖寺 11:51 (昼食)
旧小川小学校下里分校 12:10
割谷の板碑製作遺跡 12:41
芭蕉句碑(下里の滝) 13:21
嵐山渓谷観光駐車場 14:06
総歩行距離 15.5km
所要時間 5時間30分
嵐山渓谷観光駐車場にある案内板
駐車場にはトイレがある
嵐山渓谷は埼玉県比企郡嵐山町の町名発祥の地
嵐山渓谷
槻川が岩の間を蛇行して流れている
嵐山渓谷の半島状台地の中間部にある与謝野晶子の句碑
「比企の渓 槻の川赤柄の傘をさす松の 立ち竝びたる 山のしののめ」
大平山山頂近くからの眺め
遠くに都心方面が見えていた
遠山の甌穴
甌穴とは川の流れで岩にできた壺状の穴
ポットホールともいう
阿弥陀図像板石塔婆
石青山 威徳院 大聖寺
本尊如意輪観音像
天台宗の古刹
下里にある旧小川小学校下里分校
いまは学校としては使われていないが、古い校舎が残っている
下里の滝にある芭蕉の句碑
蛇喰登 幾けバおそろし 雉子乃聲
(へびくうと きけばおそろし きじのこえ)
下里・青山板碑製作遺跡
説明板
下里・青山板碑製作遺跡
切り出せそうな緑泥 石片岩(青石)が露出している
(雅熊)