四萬部寺から大霧山

2019年01月07日 晴れ 単独

投稿日 2019年01月09日

明けて2019年、ここ関東のお正月は晴天の連続。雨は昨年から降っていませんから、空気も乾燥しています。空気は冷たいものの、陽だまりではなにやら春めいた雰囲気も漂っています。豪雪の地域にすれば天国のような状態です。

この時季はこの時季で、寒いとは言っても晴れたら登山には絶好です。冬枯れの山は明るく、林床は日差しでいっぱい。汗をあまりかかないので登りやすいとも言えます。日が短いのでルートの選定さえ間違わなければのんびり楽しむことができます。

堂平山からの大霧山 茶色の部分は牧草地
2017年2月11日撮影

今回は自宅からも見えている秩父の玄関口にある大霧山(おおぎりやま)を選びました。大霧山は東面は埼玉県の東秩父村。西側は秩父郡皆野町に属します。昔この辺りは秩父(昔は大宮郷)と関東平野の熊谷や川越、飯能との往来にとって重要な地域で、三つの古道が峠を越えていました。熊谷みちは釜伏峠、川越みちは今回訪れた粥新田峠(かいにだとうげ)、飯能への吾野みちは正丸峠をそれぞれ越えていたようで、往時は相当量の荷の往来や秩父札所への参拝客が通行したようです。秩父銘仙なども運ばれたのでしょう。

地質面では皆野の金崎、釜伏峠とこの辺り(三沢)は、三波変成帯の蛇紋岩帯が部分的に露出するところで、良質の蛇紋石を産出し、参考文献のように貴蛇紋石の石板は国会議事堂でも使われたようです。今でも粥新田峠から三沢川沿いに大霧山林道を歩くと、深緑色の蛇紋石が転がっています。

参考文献:

国会議事堂に使用された秩父産蛇紋岩石材の産地

貴蛇紋が採掘された採掘場跡

今回は秩父観音霊場 三十四か所の一番札所 四萬部寺(しまぶじ)から定峰川沿いに歩いて定峰(さだみね)の集落を通過し、旧定峰峠から稜線上を大霧山に至り、川越みちの粥新田峠から三沢川沿いを曽根坂に降り、二十三夜寺に寄ってから四萬部寺に戻りました。GPSの距離で15.9kmとなり、少しロングトレイルとなりましたが冷たい空気の中、陽だまりを探して歩く新年登山となりました。

道すがらには往時の繁栄を忍ぶ石仏や石碑、神社仏閣が多く、また現在でもそこに暮らす人々の生活力が息づいています。冬の寒い日でしたが陽光は暖かく、大霧山山頂からの大展望を味わって、今年の登山を占い、帰りに秩父の街に回って、今回来れなかった友人に「秩父餅」を買って帰りました。

秩父一番札所 四萬部寺から旧定峰峠 大霧山 粥新田峠 二十三夜寺周回
赤実線:歩行GPS軌跡
(国土地理院電子国土地図に情報追加)

通過時刻:
四萬部寺駐車場 9:12
旧定峰峠入口 9:39
定峰神社 9:50
定峰集落(時計付き道標) 10:08
登山道入り口 10:29
旧定峰峠 11:10
小ピーク(ベンチあり) 11:30
大霧山山頂 11:54 (昼食) 12:30 
粥新田峠 12:54
林道大霧山線終点 13:21
高原牧場入口 13:53
二十三夜寺 14:12
高原牧場入口 14:34
曽根坂の一里塚 14:44
四萬部寺駐車場 15:09

所要時間:5時間
総歩行距離:15.9km
累計+高度:968m

国道140号で秩父に入ります。140号から分かれて瑞岩寺の看板を左に見て、尚も進むと狭い辻の旅籠一番に突きあたり、右に曲がると四萬部寺の駐車場です。駐車場は広く、小型車用と大型車用に分かれていますが、小型車だけでも20台くらいは停められるでしょうか。

秩父一番札所 四萬部寺
聖観世音菩薩立像を祭る

旅籠一番側に戻った角の石段の上に山門があります。一番札所 四萬部寺は妙音寺とも呼ばれ、聖観世音菩薩立像が御本尊です。納経所で御朱印をいただきました。当番の男性に30年ぶりに訪れたことと、大霧山に登るなどの話をして出発となりました。

定峰神社、旧定峰峠への入り口 定峰橋バス停の近く
県道11 熊谷小川秩父線から分かれて細い道に入る
分岐点に元禄九年丙子の標石
「左大河原道 右ぢこう道」
大河原とは現在の東秩父村(旧定峰峠越え) ぢこうは慈光寺(高篠峠越え)

予定していた道は旅籠一番の横を入りますが、うっかり間違えて栃谷から定峰川沿いのバス道(県道11 熊谷小川秩父線)を歩くことになりました。のどかな谷合の集落に、目立たない石標が建っているので、そこから斜め上へと登っていきます。けっこう急な簡易舗装の林道を歩くと鳥居が見えてきます。

定峰神社
古来より女性達に厚く信仰される安産の神様
安泰講という女性の講が昭和中ごろまであったそうです
ご祭神はイザナギノ命 イザナミノ命 ククリヒメノ命 (説明板より)

定峰神社です。お参りして引き続き林道を歩きます。やがて明るい斜面の集落が展開します。定峰の集落です。清水武甲の「峠は秩父の心です」の歌碑があります。時計付きの道標が10時8分を示していました。10時8分というと時計の針の配置で最も美しいとされています。ちょっとした幸運にほくそ笑みながら定岳寺に寄り、さらに林道を進みます。

定峰集落にある時計付きの道標
ちょうど10時8分を示している
10時8分は時計の針の配置が最も美しいとされる
正月早々ちょっとツイテいる

旧定峰峠への登山道入り口
白山大権現の石碑がある
ここから林道と別れて山道になる

三叉路出るので、左の小さなお堂のある側へしばらく歩くと小さな道標が山道を示しています。ここから登山道です。概ね植林帯を歩きます。窪んだ道形で往時の往来の多さが伺えます。途中に石垣が数カ所段になっています。民家があったのかとその時は思いましたが、あとで調べて見たらなんと水田の跡でした。今では植林になっています。最後に小尾根を越えると旧定峰峠です。峠の切通しはおそらく馬が越えやすいように切られたのでしょう。

旧定峰峠 小さな石祠がある
昔馬が通過しやすいように削られたか?
左下は白石 経塚 前方は定峰峠方面

峠から稜線の植林帯を大霧山に向かいます。右に有刺鉄線の柵が現れ、東斜面が牧草地になるので樹間から隣の笠山や堂平山が見えます。少し下って登り返すと大霧山の山頂です。

牧草地の上から見る堂平山(右)と笠山

大霧山山頂
三等三角点 大霧山 標高 766.73m
南西から北、北東まで開けた大展望

関連記事:大霧山からの展望

大霧山の山頂は大展望です。南西から北、北東の広範囲が見えています。奥秩父の山々、武甲山、両神山、城峰山、荒船山、御荷鉾山、浅間山、榛名山、赤城山など。武州、上州の山々が並んでいました。眼下に秩父市街。手前には箕の山や秩父高原牧場が広がっています。山頂には三等三角点 大霧山 標高766.73mが設置されています。ベンチもあるので寒くなければゆっくりくつろげる気持ちのいい山頂です。

粥新田峠(かいにだとうげ)
秩父(大宮郷)から川越に通ずる川越みちの峠
秩父札所への参拝や秩父銘仙などの往来があったのだろう
三沢に下る登山道は峠の50mほど手前で分岐している(道標あり)

山頂からはロープのある急斜面を少し下って左に秩父の街見ながら下ると高原牧場入口方面の道標があり、更に50mほど下に粥新田峠があります。東屋があり細い道路が来ています。道標に戻って高原牧場入口に向かって下山します。右に綺麗な牧草地を見て沢筋を渡ると林道大霧山線の終点です。すこし進むと林道になり、蛇紋石の鉱山を見て三沢川沿いの集落となります。寺山子安観音の近くに粥新田峠への旧道の入り口があります。このあと高原牧場入口の交差点(昭和の赤いポストがある)に出ます。

二十三夜寺(真言宗豊山派師慶山医王寺)
本尊は勢至菩薩
赤いお堂が印象的 背後に仁王像の山門がある

すこし遠回りですが関東ふれあいの道の道標が示す二十三夜寺に向け歩きます。常楽寺の前を通過して、畑のあぜ道のような道や藪の中を通過すると二十三夜寺の赤いお堂が見えてきます。箕の山の南面で明るい雰囲気ですが、人気のない境内にしばらく佇んで、仁王様の山門から県道に降りて、四萬部寺までの約2kmの県道を歩きました。

お風呂は不動の湯か新木鉱泉にしようと訪れてみましたが、不動の湯は留守。新木鉱泉は今日から工事休みということでお風呂には入れませんでした。秩父市街に回って水戸屋本店でちちぶ餅を購入して帰途に着きました。水戸屋本店では綾瀬はるか似の女性が対応してくれて、正月早々いい気分での帰路となりました。

(熊五郎)

コメント(2)

  • 粥かいと読むのですね。秩父餅が気になりました。 (agewisdom) 2019/1/9(水) 午前 11:32
  • > agewisdomさん 秩父の名菓 ちちぶ餅は小豆餡入りの柔らかいお餅です。比較的大きめです。おいしいですよ。(熊五郎)  2019/1/9(水) 午後 0:39

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