南アルプス 赤石岳 荒川三山周回
2016年07月27 - 30日 晴れのち曇り 3名
投稿日 2016年08月12日
山仲間、熊谷のYさんが熱い視線を注ぐ南アルプス。
南アルプス赤石岳、荒川三山、千枚岳周回ルート
我々は時計回りを選んだ
(国土地理院電子国土地図をカシミール3Dでカットし情報追加)
小屋泊り3泊4日 歩行時間 約6時間/日 総歩行距離 約28km
北部の北岳や甲斐駒ケ岳は登ったことがあるのですが、南部の赤石岳、荒川三山はまだで、ぜひ登ってみたいとのこと。とくに悪沢岳(荒川三山の東岳)はその名前に惚れて、もっとも注目の山とか。そこでおじさん3人の南アルプス登山となりました。
富士見平からの赤石岳
中央の小尾根を挟んで左右にカール状地形がある
右端は小赤石岳と小赤石尾根上部
登山道は小赤石岳の左をへつって、右のカール状をまたぎ、
中央の尾根に乗って稜線に出る
富士見平には戦中遭難した重爆撃機の碑がある
今でこそ南アルプスのほうが通りがよいのですが、我々が小中学生だったころ学んだのは「赤石山地」。その名前の由来となった赤石岳は山脈のほぼ中央に鎮座する雄峰です。今でも年間約4mm隆起(日本最速)しているという赤石山地。200万年前にはすでに3000m級になっていたようです。それを、天竜川、大井川、富士川の各水系が今も休むことなく削り続けて、広大で複雑な山脈を作り上げたようです。
3000mの稜線を目指して赤石岳南東面のカール状地形を登る
上方に先行するパーティー
カール状地形内は高山植物の宝庫
私にとっての南アルプスは青春の山でもあります。すべて野営(テント)で無雪期、積雪期ともに登ってきましたが、いずれも根性で登った、無茶したなぁという感覚が残っている登山ばかりです。それは中央本線の車窓から見た甲斐駒ケ岳に感動したことから始まりましたが、登ってみればそのアプローチの長さ、山の大きさは、容易に人を近づけない山という感覚でした。
赤石岳と小赤石岳のほぼ中間にある小尾根の上部から赤石岳山頂
標高3000m付近
左下はカール状地形
今回登った赤石岳から荒川三山の山域は、34年ほど前に辿ったことのある山域で、そのときの記録も残してあるのですが、記憶に残っている山の様子は、部分的で不明瞭になってしまいました。面白いもので、ほんとうに局所的な風景や自分の行動が部分的に記憶に残っていますが、誰もが写真に撮るような風景などは、意外と覚えていないのです。記憶ってそんなものですね。そんなとびとびの若い頃の記憶を繋げるためにも、今回の山行は意義のあるものでした。
大聖寺平
斜面に荒川小屋への登山道が延びている
ルートは誰もが辿る標準的なルート。椹島(さわらじま)から赤石岳、荒川三山、千枚岳を辿り、椹島に戻る周回ルートです。このルートはゆっくり楽しむには山中3泊4日。関東からのアプローチも含めれば4泊5日はほしいところです。われわれおじさんは、相手が南アルプス、それも3泊ということで二食付きの山小屋泊まりとしました。この周回ルートは赤石岳に先に登る時計回りでも千枚岳に先に登る反時計回りでもたいして差はありません。今回は時計回りとしました。(地図参照)
赤石岳(奥)と小赤石岳(手前)
右の斜面に荒川小屋
雲がかかるあたりは大聖寺平
荒川前岳への道から
このルートのポイントをまとめます。
〇椹島から時計回り(今回採用)に歩くか、反時計回りかは、あまり差はない。
〇危険個所は千枚岳と丸山間の千枚岳寄りの岩稜帯中の二か所。反時計回りの場合下降となる。ロープ等の補助は無い。
〇全ルート道は明瞭だが、大聖寺平はガスが出ると迷いやすいと思われる。小渋川に下降する道に誘導されないように注意が必要。分岐にケルン、標柱あり。丸山は標柱を見逃すと真っすぐ降りてしまう危険がありそうです。千枚岳へは標柱から右下にとります。
〇3000m級の荒天を想定した装備が必要。(天気の変化は激しい)今回はほとんど雨は降らず、暖かい日が続きましたが、朝10時ごろから雲が上がってきてガスがかかりました。荒天で条件が悪ければなれば疲労凍死もあり得ます。
〇水は各小屋で無料。期待できるルート上の水場は、赤石岳上部カール地。荒川小屋と荒川前岳の中間点。千枚尾根清水平の三カ所。
〇夏季、一般車は畑薙湖第一ダム上の夏季臨時駐車場(トイレ、水あり)まで。
〇赤石山頂と中岳山頂の避難小屋はトイレが有料(100円)ですが使えます。
〇臨時駐車場から椹島までは東海フォレストのバス利用(片道3000円。ただし小屋に一泊でもすれば往復無料になる)バスを利用しなければ歩くしかない。
〇小屋は三つ(赤石小屋、荒川小屋、千枚小屋)いずれも東海フォレストが運営。9100円(一泊二食+トイレ利用料)弁当は+1000円。飲料、軽食など。寝具は寝袋に毛布1枚か2枚。
荒川中岳に続く3000m超の稜線
遠くに南アルプス北部の山々
左から仙丈岳、塩見岳、間ノ岳、農鳥岳
ルートの検討
椹島から赤石小屋までの小赤石尾根(赤石東尾根、小倉尾根など呼び方はいろいろ)または千枚小屋までの千枚尾根は、いずれもほとんど展望のない樹林帯です。途中渡渉はなく、危険な岩稜もありません。このため夏季は多少悪天候でも小屋までは行けると考えます。両小屋はほぼ同標高にありますが、小赤石尾根のほうが急登で距離が短く、千枚尾根のほうが登りが緩く、距離が長めとなります。
赤石小屋からも、千枚小屋からも小屋から1時間ほど登れば森林限界となります。天候の回復が望めない場合、赤石小屋からの場合は富士見平が。千枚小屋からの場合は千枚岳山頂が、天候と体調による進退の最終判断ポイントになるかと思います。稜線に出てからの場合は、エスケープルートが無いため、赤石岳避難小屋、荒川中岳避難小屋への避難を念頭に置いての行動になります。
一日目で椹島から荒川小屋まで入ることも、体力に自信があれば可能かもしれませんが、後半が3000m超の稜線歩きとなるため、荒天の場合リスクが高いと思われます。実際。荒川小屋に19時ごろ着いた人がいましたが、余裕のない登山は避けるべきです。夏山ですので歩行時間は6時間/日くらいにして早めに小屋に入るべきと思います。
荒川中岳の斜面から悪沢岳(荒川東岳)を望む
登山道は鞍部から悪沢岳へと登り返しているのが分かる
椹島周辺は、東海パルプの所有地のようで、約110年前の明治40年ごろ千枚尾根(椹島から千枚岳に至る尾根)蕨段付近の伐採がおこなわれたようですが、今は見事な樹林に戻っています。
森林限界は赤石岳では富士見平あたり。千枚岳直下。
お花畑は、赤石岳のカール状地形、前岳手前の斜面(鹿害保護中)、千枚岳手前の急斜面。特に千枚岳手前(丸山側)のお花畑は見ごたえがあります。前岳手前の斜面は、鹿の食害を防ぐためネットで保護されており、登山道が中を通過しています。南アルプスも鹿の食害が出始めているようです。
悪沢岳への登りから荒川中岳
山頂部に中岳避難小屋が小さく見える
手前は中岳と悪沢岳の鞍部
見かけた動物は、荒川岳西面岩稜での数頭のサル、稜線での雷鳥、アプローチの県道183での鹿。
今回雷鳥に出会ったのは、小赤石岳と赤石岳を結ぶ3000m超の稜線の赤石寄り。小赤石岳から大聖寺平に下る斜面。丸山の手前悪沢岳寄り、の三カ所でした。いずれも子連れのメスでした。赤石岳から大聖寺平に下る斜面の雷鳥は5羽の子を連れていました。
丸山と千枚岳間の岩稜帯にあるお花畑
さまざまな花が咲き乱れる見ごたえのあるお花畑
高山植物(花)は多数見られますが、撮影したものと覚えている範囲で。()内はおおよその場所または地形です。背丈の低い植物[低]は岩稜や砂礫帯などで。背丈の高い植物[高]はお花畑で群生していたりします。
イブキジャコウソウ(岩稜、砂礫帯)[低]
イブキトラノオ(千枚小屋)[高]
イワオウギ(お花畑)[高]
イワカガミ(岩稜、千枚尾根)[低]
イワベンケイ(岩稜)[低]
ウサギギク(樹林)[高]
オンタデ雌株(赤)(砂礫帯、カール)芳香 [高]
オンタデ(白)(砂礫帯、カール)芳香 [高]
クルマユリ(千枚岳直下)[高]
ゴゼンタチバナ(樹林)[低]
コメススキ(岩稜、お花畑)[高]
シシウド(カール、岩稜)[高]
シナノオトギリ(岩稜、砂礫帯)[低]
タカネオダマキ(岩稜)[低]
タカネコウリンカ(カール)[高]
タカネグンナイフウロ(岩稜の日影)[高]
タカネシオガマ(岩稜、お花畑)[高]
タカネツメクサ(岩稜)[低]
タカネナデシコ(お花畑)[高]
タカネビランジ(岩稜)[低]
タカネマツムシソウ(お花畑)
チシマギキョウ(岩稜)[低]
チングルマ?(岩稜) [低]
トモエシオガマ(岩稜、砂礫帯) [低]
トリカブト(草の多い斜面、樹林)[高]
ハクサンフウロ(お花畑)[高]
フシグロセンノウ(椹島)[高]
ベンケイソウ(岩稜)[低]
マルバダケブキ(千枚小屋)[高]
ミソガワソウ(草の多い斜面)[高]
ミネウスユキソウ(岩稜)[低]
ミヤマアキノキリンソウ(お花畑)[高]
ミヤマコゴメグサ、コバノコゴメグサ(岩稜、砂礫帯)[低]
ミヤマダイコンソウ(お花畑、岩稜)[高]
ヤマハハコ(岩稜、砂礫帯)[低]
ヤマユリ(椹島)[高]
ヨツバシオガマ(岩稜、お花畑)[低]
高山性タンポポ(カール)[高]
以上目にとまったもののみ。
丸山と千枚岳間の岩稜帯
ルート上、最も危険な場所
高山植物にうっとりしていると踏み外すかも
山上の天気は3日間同じような繰り返しでした。期間中の気圧配置は、台風発生は無く、太平洋高気圧はあまりはっきりしていない状態でしたが、全体的には回復傾向でした。3000m級にしては暖かいと感じました。
7/26 雨後曇り
7/27 曇り(回復傾向)
7/28 夜早朝から晴れ、雲海(下界曇り)、10時ごろからガス出るが晴れ間あり
7/29 夜早朝から晴れ、雲海(下界曇り)、10時ごろからガス出るが晴れ間あり
7/30 夜早朝から晴れ、10時ごろから午後雲が多いが晴れ
気温 荒川小屋前(寒暖計) 7/29 夕刻 19℃
岩稜帯の通過
ロープなどの補助は無い
秩父の藪岩で鍛えた我々にはどうってことないが^-^;
反時計回りだとここが下りになる
行動計画は1日の行動時間6時間、山小屋には14時までに着、朝7時出発で設計
実際には朝食が早い(4:20)場合、早立ちしています。
小屋の夕飯は17時からなので、到着後余裕があり高山山小屋でのひと時が楽しめました。水は各小屋で補給できるので、行動時間6時間分を所持(私の場合は1L)
食糧は行動食のみとし、昼食は小屋の弁当(1000円)を購入しました。
千枚岳山頂 標高2880m
あまり目立つピークではない
ここから千枚小屋までは45分ほどの下り
所要時間(カシミール3Dで計測 おおよそです)
椹島 - 赤石小屋間 標高差 約1420m 沿面距離 約4.6km 6時間20分
赤石小屋 - 赤石岳山頂間 標高差 約580m 沿面距離 約3.1km 3時間00分
赤石岳山頂 - 荒川小屋間 約490m 沿面距離 約3.2km 2時間30分
荒川小屋 - 荒川前岳間 標高差 約450m 沿面距離 約2.4km 2時間00分
荒川前岳 - 鞍部 標高差 約176m 沿面距離 約1.3km 1時間20分
鞍部 - 悪沢岳 標高差 約231m 沿面距離 約1.2km 1時間20分
悪沢岳 - 千枚岳間 標高差 約261m 沿面距離 約2.8km 1時間30分
千枚岳 - 千枚小屋間 標高差 約320m 沿面距離 約0.9km 0時間45分
千枚小屋 - 椹島間 標高差 約1440m 沿面距離 約8.5km 4時間30分
合計沿面距離 約28.0km
ミヤマグンナイフウロ
千枚岳から千枚小屋への道にて
通過時刻
熊谷 7/26 20:00
新東名新静岡IC 23:00
畑薙夏季臨時駐車場 13:00(車中仮眠)
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畑薙夏季臨時駐車場前バス発着場 7/27 7:00
椹島 7:58
椹島 - 赤石小屋 1/5地点(赤石岳小倉尾根基準点)8:57
椹島 - 赤石小屋 2/5地点 10:03
樺段 10:51
椹島 - 赤石小屋 3/5地点 11:40
椹島 - 赤石小屋 4/5地点 12:42
歩荷返し 13:11
椹島 - 赤石小屋 5/5地点(赤石小屋)14:20
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赤石小屋 7/28 5:45
富士見平 6:45
赤石岳南東面カール地形の水場(砲台状地形の上)8:02
赤石岳、小赤石岳間の稜線 9:17
赤石岳 9:50 (昼食)
小赤石岳 10:47
大聖寺平 12:33
荒川小屋 13:10
千枚小屋
小屋手前に冷たくおいしい水が湧く(小屋にも水がある)
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荒川小屋 7/29 5:30
お花畑 6:31
荒川前岳と中岳中間点 7:18
荒川前岳 7:25
荒川中岳 7:48
中岳避難小屋 7:59
中岳と東岳の鞍部 8:40
荒川東岳(悪沢岳)9:38 (昼食) 10:25
丸山 10:59
千枚岳手前のお花畑、岩稜帯 11:30
千枚岳 11:59
二軒小屋分岐 12:22
千枚小屋 12:43
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千枚小屋 7/30 4:50
駒鳥池 5:23
見晴台 6:20
林道 8:16
岩頭見晴らし 8:36
送電鉄塔下 8:48
吊り橋 9:25
椹島千枚岳登山口 9:38
椹島 10:00 - バス 1030
畑薙夏季臨時駐車場前バス発着場 11:27
白樺の湯 11:42 - 13:00
新東名新静岡IC 15:00
熊谷 21:00
お風呂
下山後、畑薙湖畔にある白樺の湯で久しぶりの湯につかり、さっぱりして帰途に着きました。入湯料 510円 食堂あり
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