イノモトソウ

 投稿日 2021年02月10日​

埼玉県比企郡越生町黒山三滝付近にて 2021年2月撮影

冬は人里に近い低山を歩くことが多い。寒い日でも手ごろに日和見登山をしようという目論みだが、そんな里山でよく見かけるのがイノモトソウである。

​イノモトソウは「井の許草」と書くようだが、その意味は井戸の近くにあるということらしい。そういえばちょっとじめじめした石垣の基部の隙間から生えているイメージがある。シダ植物だから日影の湿気を好むようだ。

​関東地方では5-600mくらいの低山で、杉の植林帯の林床に群生しているのをよく見かける。あまり高い山にある気はしない。それに夏は他の背の高い草木に隠されるのだろうか。あまり茂っている姿の記憶が無い。ところが冬には我がもの顔でそこらじゅうに生い茂っているのだ。ただ、やはりイノモトソウだけの独壇場ではない。同じ仲間のシダと勢力を競い合ってるようにも見える。​さらに言えば、イノモトソウは群生はしていても、なぜか密生はしていない。一株一株が微妙に離れている。

​イノモトソウには葉の細いのや、葉の付き方が少し違ういくつかの種類があるようだが、いずれもその姿かたちはなかなか風情があってよいと私は思っている。他の植物の根本や岩などと、いい景色を作ってくれる。苔のある茶室の庭や、寺の境内の木陰などにあれば、日本人好みの落ち着きを演出してくれる。

低山のそこかしこに生えているのだが、なかなか完全なものはない。多かれ少なかれ茶色く変色したりして痛んでいるものが多い。常緑の植物だから、あまり入れ替えはないのか。葉を大事に使っているようである。先日、やっと見つけた状態のいい株を写真に収めてみた。

​(雅熊)

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