雁坂トンネル出口から雁坂峠、雁坂小屋
2024年05月22日 曇りときどき晴れ 2名
投稿日 2024年05月23日
日本三大峠のひとつ「雁坂峠」(かりさかとうげ)。他の二つは南アルプス塩見岳近くの「山伏峠」(さんぷくとうげ)と、北アルプスの「針ノ木峠」(はりのきとうげ)です。これらの峠はいずれも2000mを超えています。しかし、これらの峠、前者は2580m、後者は2536mとあまりにも高い。それに位置的に見て実用上どうだったのか疑問が残ります。三大峠の選定基準はよくわかりませんが、三つの中では雁坂峠がもっとも峠らしいといえば峠らしいと思います。それは秩父往還が越えていたからです。
雁坂峠の位置は埼玉県と山梨県の県境。雲取山から金峰山に至るまでの稜線に並ぶ数々の名峰のほぼ中央に位置する峠です。標高は2082m。この峠も申し分なく高いのですが、昔ここを秩父札所巡礼や秩父の繭(まゆ)を甲府まで運んだ要衝路だったということが、重要な峠としてピカイチな理由です。そのように人々が歩いて越えていた秩父往還の最高地点雁坂峠は、つい最近まで交通の便からすると大きな障壁になっていました。雁坂トンネルができるまでは、秩父から延びてきて、甲府に至る国道140号の未開通区間として長い間残っていました。それが雁坂トンネルの開通を見て、車によって簡単に越えられるようになったのはつい最近の話です。
今回はその雁坂トンネルで山梨県側に抜け、料金所のすぐ先にある駐車場をお借りして、雁坂峠、雁坂小屋を往復してきました。埼玉県側の秩父往還の関所がある栃本から雁坂峠を越えて、山梨県側の広瀬まで歩いて、昔の巡礼の気持ちを知りたいところですが、一泊は必要だし体力的に難しい。ということで、今回は山梨県側からのピストンとしました。
雁坂トンネルを山梨県側に出るとすぐに料金所がありますが、それを通過すると左に駐車スペースがあります。駐車スペースの奥に雁坂峠への看板があります。それには峠まで約3時間と書いてあります。身支度を整えて林道を歩き始めます。林道終点の「沓切沢橋」(くつきりさわばし)で山道に入ります。落葉広葉樹の樹林の目の覚めるような新緑。下を流れる水は花崗岩のナメ。美しいことこの上なく。そこに野鳥のさえずりが響きます。
さすが往還道ということで道は斜面に沿って徐々に高度を上げていく沢沿いの道です。この沢は「峠沢」という沢で歩き易さは抜群ですが、途中数か所渡渉があります。また水流のある枝沢を横切ります。とくに奥の「井戸ノ沢」は要注意です。全体的に渡渉が多いので増水時は注意が必要です。井戸ノ沢を通過すると道は笹交じりの急登となり、電光に登ってコバイケイ草が混ざるようになると急登もおしまい。峠が見えてきます。
雁坂峠はいかにも峠という感じ。峠のある稜線を境に天気が違うようです。この日は南寄りの風。山梨県側からの風が峠を越えています。そのせいか、山梨県側は曇っていますが、埼玉県側は晴れていました。風がきつく寒いので、埼玉県側に100mほど下ったところにある雁坂小屋に行ってみることにしました。埼玉県側は山梨県側をひろく覆っていた笹原は無く、苔むした樹林。暗めの林内を下って行くと青い屋根の雁坂小屋がありました。
営業はしておらず無人ですが、水は豊富。トイレは有料で使えます。そのトイレの中を登山道が抜けており、気持ちよさげなテント場もありました。小屋の近くのシャクナゲは今盛りと咲き誇っていました。ピンクの濃いシャクナゲです。昼食を済ませて峠に戻り、来た道を下りました。下山した我々は再びトンネルを抜けて埼玉県側へ。途中の大滝温泉で汗を流して帰途に着きました。
雁坂トンネルのおかげで簡単に雁坂峠に立つことができました。しかし、栃本から延々歩き、峠に至った人々。そしてさらに延々歩いて甲府へと下る秩父往還。いまではそこを国道140号が抜けていますが、往時をしのぶにはやはり栃本から歩いてみなければならないなと感じた山旅でした。峠沢沿いの道はさすがにうまく付けれれた道ですが、渡渉が多いのも事実。沢沿いということで荒れることも予想されます。途中に目立った道標はありませんが、ピンクテープが的確に付けられています。峠沢の下部は花崗岩で、沢は美渓を呈していますが、足元は真砂土。滑べれは数十メートル滑落、沢まで転落という場所は随所にあります。沢の中間から上はすっかり花崗岩は姿を消して、安山岩のような岩質です。奥の急登は笹原の電光です。この日は南風ということで雁坂小屋で13℃ありましたが、2000mの高所なので防寒に注意が必要です。
山梨県山梨市 雁坂トンネル山梨側出口Pから秩父往還道で雁坂峠、雁坂小屋
赤実線:GPS歩行軌跡
(国土地理院電子国土地図に情報追加)
主な通過時刻:
雁坂トンネル山梨側出口P 7:14
沓切沢橋 8:01
井戸ノ沢 9:42
雁坂峠 10:58
雁坂小屋 11:16 (昼食)
雁坂峠 12:13
井戸ノ沢 13:15
沓切沢橋 14:42
雁坂トンネル山梨側出口P 15:23
総歩行距離 12.6km
雁坂トンネル山梨側出口P - 雁坂峠 標高差 800m
所要時間 8時間
雁坂トンネル山梨側出口にある駐車場の奥の登山口 標高約1200m
秩父往還
雁坂峠まで約3時間となっている
沓切沢橋
ここから山道が始まる
登山道は峠沢沿いに徐々に高度を上げていく
落葉広葉樹林のすばらしい新緑
沢は花崗岩のナメ
足元は真砂土で滑りやすいので滑落に注意
井戸ノ沢を通過
井戸ノ沢の看板の前を通過するのが安全
白く霞んだ雁坂峠
向こうは埼玉県秩父市大滝
秩父往還はここを越えている
日本三大峠「雁坂峠」標高2028m
その由来と案内地図がある
左は雁坂嶺、右は水晶山、向こうは雁坂小屋を経て秩父へ
雁坂小屋
この日は無人だった
水は豊富 トイレは有料
ここから秩父往還は栃本へ下る
雁坂小屋のテント場
見える範囲で10張から15張ほど張れるだろうか
帰り、晴れてきて水晶山が見えた
笹にトウヒなどの針葉樹点在する斜面
下山途中
峠沢の谷あいが見える
明るい緑は唐松、暗い緑はトウヒやコメツガなど
(雅熊)