秩父の予備知識

投稿日 2019年02月06日

山に登る者にとって秩父は非常に興味深い山域です。若い時から何度も通って秩父の山々を楽しんできましたが、ここらで整理しておく意味も込めて、秩父のことを私なりに勉強しなおしてみました。ただし、「秩父の予備知識」としましたが、内容はかなり希薄で偏っていますのでご了承ください。正確で詳細な情報は専門のホームページや書物を参照ください。

秩父は盆地ですから360度山に囲まれています。私がソフトを使って計算した限りでは、その周囲は約167km。最高点は埼玉県の最高点でもある三宝山(さんぽうざん)の約2484m。最低点は荒川が関東に注ぎ出る長瀞町最東端の約102m。外周を取り巻く山々の著名なピークは約50前後。峠は30から40箇所といったところでしょうか。正確にはなかなか数えられません。外周以外(秩父内)にある峠も合わせると数え切れません。

秩父の外周
赤点は主な峠

秩父の外周に線を引くと上のようになります。これが秩父の形です。盆地の部分から山岳地帯までさまざまな地形が秩父を構成しています。秩父は荒川の上流部を山々で取り囲んだ閉鎖された領域と言えます。

行政区画としての秩父は秩父郡と秩父市で構成されますが、秩父郡は横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町、東秩父村で構成されています。

ここで面白いのは秩父市が広大で、奥秩父と言われる最奥の旧大滝村や旧荒川村、浦山地区なども含まれている点です。秩父市街はもちろん秩父市なのですが、山の奥へ奥へいくら走っても(例えば両神山の向こう側や荒川最上流部も)秩父市なのです。

秩父市
秩父郡
長瀞町
皆野町
横瀬町
小鹿野町
東秩父村

左の都市部が秩父市街 右が横瀬町(武甲山山頂より2018年11月18日撮影)
遠くの平野は関東平野
荒川は秩父市街を抜けて写真ほぼ中央から関東平野に流れ出る

山域はさまざまな見方がありますが、ざっと下のような感じでしょうか。

長瀞町を囲む山々 陣見山、不動山、宝登山
東端の秩父の入り口の山々
皆野東部三沢川両岸の山々 美の山、大霧山
札所や宝登山に詣でる人たちが越えた山
皆野西部の山々 破風山
結願の寺水潜寺がある山域
東秩父村の山々 堂平山、笠山
外秩父と呼ばれる。小川町、ときがわ町との関係のほうが大きいか?
横瀬側周辺の山々 武甲山、二子山、丸山 
飯能方面からの玄関口の山々
浦山川周辺の山々 矢岳、大平山、蕎麦粒山、天目山
秩父市街に近いが山深い秘境感がただよう
吉田川周辺の山々 城峰山
城峰山が鎮座する山域
赤平側上流部の山々 両神山、二子山
山中地溝帯(の埼玉県側)を挟む山々
大血川周辺の山々 三峰、酉谷山
神秘に満ちた三峰山と東京都の背稜に接する山々
中津川流域の山々(奥秩父北部) 白泰山、三国山、甲武信ヶ岳
埼玉の秘境中津川渓谷の山々
大洞川、滝川流域の山々(奥秩父南部) 笠取山、雲取山、和名倉山
東京都、山梨県と接する最奥の山々

秩父外周上の主な山と峠(峠は標高を記していません)
三国山 1834m
三国峠
悪石 1850m
十文字山 2072m
十文字峠 1970m
三宝山 2483m
甲武信ヶ岳 2475m
木賊山 2469m
破風山 2318m
雁坂嶺 2289m
雁坂峠 
水晶山 2158m
古礼山 2112m
燕山 2004m
雁峠
笠取山 1953m 
唐松尾山 2109m
将監峠 
竜喰山 2012m
大常木山 1962m
飛龍山 2069m
三ツ山 1949m
雲取山 2017m
芋ノ木ドッケ 1946m
長沢山 1738m
水松山 1699m
酉谷山 1718m
天目山 1576m
仙元峠 1444m
蕎麦粒山 1473m
日向沢ノ峰 1356m
有間峠
橋小屋ノ頭 1163m
鳥首峠 953m
大持山 1294m
妻坂峠 
武川岳 1052m
山伏峠 
伊豆ヶ岳 851m
正丸峠
旧正丸峠 
サッキョ峠
虚空蔵峠
大野峠
高篠峠 748m
川木沢ノ頭 847m
定峰峠 
旧定峰峠
大霧山 767m
粥新田峠 565m
二本木峠
愛宕山 655m
皇鈴山 679m
登谷山 668m
釜伏峠
釜伏山 582m
賽神峠
仙元峠
植平峠
葉原峠
大平山 539m
金尾山 229m
築坂峠 
大槻峠
陣見山 531m
榎峠 
雨乞山
間瀬峠
不動山 549m
出牛峠
住居野峠
風早峠
奈良尾峠
鐘掛峠
城峰山 1038m
塚山
土坂峠
杉ノ峠
父不見山 1047m
坂丸峠
矢久峠
二子山 1166m
魚尾道峠
志賀坂峠
諏訪山 1207m
蓬莱山 1377m
赤岩岳
赤岩峠
雁坂峠
六助峠
宗四郎山 1510m
倉門山 1572m
広河原越
滝谷山 1659m

秩父の外周を断面図にすると下図のようになります。最高点 三宝山の約2484mから荒川が関東平野に流れ出るところの標高約102mまで。2300m以上もの高低差があり、外周部のほとんどは300m以上の山岳地であることがわかります。

秩父外周の断面

この外周断面図で分かるように、峠は周りより低い点をうまく利用していることがわかります。長野県や山梨県へ越える峠は標高の高いところを越えています。それに対して群馬県や関東平野へ越える峠は比較的低いのです。秩父往還道が関東平野から秩父に入る峠は低く、信州や甲州に出る峠は高いということになります。

水系はほぼ荒川水系のみです。荒川は長瀞町の東端で関東平野に出ますが、秩父域内で分岐する主な支流は下流から以下のようになっています。なお秩父市の一部と群馬県藤岡市との境界が神流川に落ちていますが、こちらは利根川水系です。

荒川
三沢川
日野沢川
赤平川
吉田川
長留川
薄川
小森川
蒔田川
横瀬川
浦山川
安谷川
谷津川
荒川贄川(にえがわ)
大血川
中津川
大洞川
入川(荒川上流部)
滝川(荒川上流部)

地質的には、大体左半分の山岳地帯は秩父帯と呼ばれる約1.2億年から2億年前のチャートや石灰岩などで構成されています。両神山はチャートですが、すぐ隣の二子山は石灰岩の山です。それらは太平洋の南の方の海底に堆積したチャートの上にサンゴ礁が発達し、日本列島にぶつかって取り残された付加帯です。

関東平野に近い東秩父村辺りの南側の山域は秩父から見ると外側に引っ張られて隆起した山域で、引っ張られた分秩父が陥没し、海水が流入して古秩父湾を作っていたようです。その名残はよく円摩された礫を含む礫岩の分布や不整合面の存在で分かります。引っ張られた時のズレ面は盆地南端の断層となっています。また、長瀞から皆野辺りは地下からマグマが貫入して変成された三波川変成帯が出ています

どこでもそうですが、いろいろ勉強してみると面白いものです。秩父は特にその産物や札所巡礼、三峰の信仰などの目的で秩父外からの往来があり、多くの峠が利用されてきたようです。そんな文化的な背景も頭に置いて秩父の山々をめぐるのも一興かと思います。

参考:埼玉県立自然の博物館(長瀞町)

(熊五郎)

コメント(1)

  • とてもおぼえられない。私が勤めたのは飯能、名栗川が流れていました。小鹿野は何人かの生徒のなまえにありました。校歌には「展覧山」が入っていました。 (agewisdom) 2019/2/6(水) 午後 7:40

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