稲子湯
投稿日 2018年07月23日
稲子湯
JR小海線の小海駅から町営バスがある 駐車は数台
旅館の奥からしらびそ小屋、中山峠への登山道入り口がある
林道を少し登ったところに登山者用の駐車場がある
先日、久しぶりに八ヶ岳に登ったおり、帰りの風呂として稲子湯(いなごゆ)に寄った。
前回ここを訪れたのは、かれこれ32,3年前になるだろうか。そのころ付き合っていた彼女と八ヶ岳に登ったときの登山口に選んだのである。
稲子湯には小海線の小海駅から町営バスが通じている。32,3年前のことはほとんど覚えていないが、彼女とふたりバスを降りて、ここからみどり池、中山峠へと登って、八ヶ岳南部を縦走したのだった。久しぶりに訪れた稲子湯は、濃い緑の木々の中にひっそりあった。側では沢の流れが音を立てていた。
思い出すのは、この稲子湯の廊下には映画俳優たちの写真が飾られていたことだ。吉永小百合は冬の稲子湯のつららの前で、上品な立ち姿。真行寺君枝は赤いダウンジャケットで雪原に佇んでいる。ここは吉永小百合主演の映画「天国の駅」のロケ地のひとつだったのだ。幾分減ったようにも感じたが、今でもそれらの写真が廊下を飾っていたのはうれしかった。
写真を見た瞬間、昔と同じ写真と確信したのは真行寺君枝の赤いダウンジャケット姿の写真で、ほとんど色あせもしていなかった。その頃はダウンジャケットがもてはやされはじめた頃で、真行寺君枝は流行の着こなしで写真に収まったに違いない。おそらく撮影の合間に、雪原ではしゃいだときのスナップだろう。歳からするとその頃二十代ということになる。真行寺君枝は16才の若さで化粧品会社のポスターを飾った、少し小悪魔的な個性派女優である。
一方、意外と吉永小百合の写真は、こうだったかな程度の印象だった。吉永小百合は落ち着いた雰囲気の和服に、肩にショールを巻いて、白い顔で立っている。まぁ、映画の内容からして、そんなに明るくは写真に収まることもできないし、吉永小百合のイメージもある。
映画「天国の駅」は近くDVDを借りて見てみたいが、ネットで調べた限りでは、戦後初の女性死刑囚をモデルにした物語。吉永小百合主演としては、内容が重苦しい映画のように思え、とても同情できそうにない現実の主人公を、吉永小百合がどう演じきったのか、なかなか想像がしにくい。
前回、彼女と訪れた時は、バスを降りて温泉にも入らずにすぐ歩きはじめたはずだが、これらの写真が記憶に残っているということは、トイレでも借りるために廊下を歩いたのだろうか。今となっては分からないが、旅館の奥に続く登山道の入り口も、わずかに昔の様子を留めていて、若いふたりが森に消えて行く姿が、まぼろしのように頭の中で映像になった。
(熊五郎)
コメント(2)
- 小海線乗ったことありますがどこへ行くためだったのかしら?記憶にありません。
静かな温泉のようですね。 (agewisdom) 2018/7/23(月) 午後 11:17 - > agewisdomさん 小海線、今は二両編成のディーゼルが走っていると思いますが、関東甲信越でも遅くまでSLが頑張っていた線と思います。(熊五郎) 2018/7/24(火) 午前 6:55