山里の四季

投稿日 2010年11月02日

​幼稚園のころだったか、

親はキンダーブックや昔話などを買ってくれた。

小学生になっても、その本はあったが、

その絵本的な絵には、ほとんど興味がわかなかった。

それよりは、兄が持っていた図鑑のリアルな四季の絵は、

繰り返し、繰り返し眺めても飽きることはなかった。

その四季の絵には、

同じ場所で、男の子と女の子が仲良く遊んでいる姿を手前に、

その季節の山里の風景が描かれていた。

懐かしい本は、タイトルも著者も判らず、探す手立てはない。

季節は春
遠く、青く霞む山には雪が残る
里は満開の桜でけむる
早苗はそよ風に揺れて、水面には蛙の波紋が広がる
小川の流れはきらきら光る
男の子は花をそっと女の子に手渡す

季節は夏
山々の向こうの青い空に、入道雲が立ち上る
里には祭りの行列
田んぼの上ではトンボが行きかう
草が覆いかぶさった小川
男の子はカマキリを捕まえて、女の子に自慢する

季節は秋
山には赤や黄色の帯がかかった
里の家々には煙がたなびく
稲は頭をたれて、収穫を待つ
林の小道には枯れたススキが揺れる
男の子は畦道で鳴く虫に気づいて、女の子を手招きする

季節は冬
山は白く輝き、いっそう立派に見える
里も白く静まりかえり
梢では、ときおりシジュウカラがチチッとさえずる
小川の流れの丸い石には、こんもり雪帽子
ふたりの居ない雪の田んぼには、ただ兎の足跡

(熊五郎)​

 

コメント(4)

  • よく覚えていらっしゃるんですね。その美しい四季の中で育った二人はどうなったでしょうね。夢がわいてきます。
    「ふるさと」の歌を思い出しました。こうした風景がいまも失われていないことを祈りたいです。 2010/11/2(火) 午前 6:07
  • agewisdomさん、小学校の1,2年だったでしょうか。絵はイメージしかおぼえていません。細かくは想像で思い返してみました。いろいろなところに小動物が描かれており、生き物と共存していた昔の山里の様子が描かれていました。このような絵を見ると生きてる喜びを感じますし、小さい頃だとその場所に飛び込んでしまいます。おそらく教育用の本で、このような本はほとんど保存されていないと思います。(熊五郎) 2010/11/2(火) 午前 7:56
  • 熊五郎さん、こんにちは。キンダーブックとは珍しいですね。熊五郎さんは団塊世代かと推察していましたが、幼稚園の頃にはこの本があったのですね。山里の四季の詩もいいです。昭和の良き時代が彷彿として私の心の中にも甦ってくるような…懐かしさが感じられます。今も「うさぎ追いしかの山…」の故郷の歌が脳裏に甦るのは日本人の心だと思います。今月で80歳を迎えます。傑作ポチ入れます。 [ らくがき楽ちん ] 2010/11/2(火) 午前 11:36
  • らくがき楽ちんさん、80歳になられるんですね。ときおり写真で拝見しますが、私の父に似ていらしゃいます。いつまでもお元気で、ブログでもご活躍ください。私は団塊の世代より若いです。(笑) インターネットで調べましたが、1950年代のキンダーブックは表紙を見るかぎり写実的で暖かみのある絵ですね。一冊一冊は薄いものでしたが、集めて専用のバインダーに閉じてあったのを覚えています。今となっては懐かしい幼少のころの生活です。(熊五郎) 2010/11/2(火) 午後 0:32

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA