シャクナゲはツツジの仲間
投稿日 2024年05月26日
奥秩父と言えばシャクナゲの回廊である。奥秩父の山々の稜線にはシャクナゲがそこかしこに咲き乱れ、場所によってはかき分けかき分け通り抜けるようなところやトンネルになっていたりもする。
その奥秩父も場所によってはハクサンシャクナゲだったり、アズマシャクナゲだったりするようだ。専門的なことはわからないが、どうも花の色と雰囲気が違うのでちがうシャクナゲであることは分かる。ほかにも八ヶ岳の一部で見られるキバナシャクナゲというのもあるが、ちょっと場所が限定されている。
埼玉県秩父市大滝 雁坂小屋にて アズマシャクナゲと思われる
2024年05月22日撮影
花の頃、樹林の下生えとして群生したシャクナゲがピンクの花を付けているのは誠に美しい。そんなシャクナゲの花は一つあれば、またひとつ。ここにも、あそこにもと目立って咲いているのが普通だが、先日訪れた奥秩父の雁坂小屋には、ぽつりと一株のシャクナゲが今盛りと咲いていた。ほかにはどこを見渡してもシャクナゲの花らしいものは見当たらなかったのは不思議。それは花からしてアズマシャクナゲだと思う。
そのシャクナゲは、実はツツジの仲間なのはご存じだろうか。「え、葉っぱが全然違うし、花もツツジのように開いておらずにラッパ状なのに」と思うのが普通である。しかし、分類上はツツジ科なのである。
ヤマツツジ
登山でよく見かけるツツジ
関東で1500mくらいまでの山でツツジといえばコレ
栃木県佐野市 大鳥屋山と唐沢山をむすぶ稜線上にて 2018年4月26日撮影
牧野の新日本植物図鑑には、ツツジ科に属するものとして以下を上げている。関東でわりとおなじみのものは朱色にした。(図鑑はすべてひらがな表記だが、記事内ではカタカナを使用) このなかで、オオムラサキは公園や街路樹に見られる代表的なツツジ。ヤマツツジは山でよく見かけるツツジだ。
いそつつじ
ほつつじ
みやまほつつじ
つくししゃくなげ
あずましゃくなげ
きばなしゃくなげ
ひかげつつじ
せいしか
ばいかつつじ
れんげつつじ
むらさきやしおつつじ
あけぼのつつじ
ごようつつじ
みつばつつじ
とうごくみつばつつじ
こばのみつばつつじ
うんぜんつつじ
こめつつじ
おおこめつつじ
きりしま
やえきりしま
やまつつじ
みやまきりしま
さつきつつじ
しでさつき
まるばさつき
りゅうきゅうつつじ
むらさきりゅうきゅうつつじ
おおむらさき
きしつつじ
もちつつじ
えぞつつじ
はこねこめつつじ
どうだんつつじ
べにどうだん
さらさどうだん
べにさらさどうだん
あぶらつつじ
ぢむかで
こめばつがざくら
あせび
あずまつりがねにんじん
こようらくつつじ
みねずおう
つがざくら
あおのつがざくら
いわひげ
ひめしゃくなげ
いわなし
はなひりのき
いわなんてん
ねじき
あかもの
しらたまのき
はりがねかずら
うらしまつつじ
すのき
うすのき
なつはぜ
くろうすご
しゃしゃんぼ
いわつつじ
くろまめのき
こけもも
つるこけもも
あくしば
(シロヤシオは上げられていない。)
まぁ、シャクナゲがツツジ科なのは驚きであるが、上に上げたものの中では、アセビ(馬酔木)や、サラサドウダン、アオノツガザクラなど、まったくツツジに似ても似つかぬものもある。これらはスズランのような花を多数ぶら下げるし、葉っぱの形もまったく違う。アセビ以外はほぼ地面に張り付いているが、ツツジ科であるからなのか低木、つまり草ではなく木である。アセビは1000から1500mくらいの尾根筋に群生しているが、葉につやがあり、花はスズラン状である。庭木としても重宝される。
サラサドウダン
葉っぱはツツジに似ているようだが花はスズランのような吊鐘状
群馬県高崎市 榛名山 二ツ岳山頂にて
2023年6月5日撮影
シラタマノキ(実) ツツジ科の低木
白い実を指でつぶすとサロメチールのようなよい香りがする
長野県東御市 篭ノ塔山にて 2020年9月30日撮影
こう考えると植物の分類というものはどういうものか不思議に思えてくる。おそらく単なる見た目で決めているわけではなく、細かく観察して植物の進化上、この仲間はこのような形になるだろうとか、深い観察と分析の結果決まっているものだろう。笹や竹がイネ科という大分類の一部であったり、イチョウが一科一属一種の孤独な植物で、おいしい銀杏は実ではないので裸子植物だというのも面白い。考え始めるとはまってしまいそうな世界だが、遺伝子による分類が確立しつつあると聞いているので、これまでの分類方法との位置づけが楽しみである。
(雅熊)