登山の楽しみ

投稿日 2009年10月07日

​山に登る楽しみとは、どのようなものでしょうか。

無限に近いほどの楽しみ方がある中で、一人の若輩者が論じられるほど簡単なものではありません。
それは経験によっても違い、単独か、恵まれた山仲間があるかによっても違います。

ただひとつ、その楽しみは、より山に溶け込み、己の身をさらし、山を知ろうとしたときに深まっていくものと言えます。

谷川岳 越路手前 金山沢出合での野営

山は太陽の恵みをどこよりも真っ先に受け留め、地球上のあらゆる生物に栄養を与える根源でもあります。そんな母なる大地に分け入り、一滴の水の染み出る様を見とどけるとすれば、それは母親の胸に抱かれた幼子のころの追体験とも感じ、いつ登れるとも知れない雄大な岩峰を見上げれば、人を寄せ付けない厳しさを感じます。

山は濃い大気に包まれ、時にはその姿を隠し、時にはその全容を現します。沢は岩肌をキラキラと落ちて深山を流れ下り、落ち葉の淵には魚影が光ます。渓谷には沢の音がとどろき、鳥のさえずりがやむことはありません。大気や水は再び山を訪れ、生き物の命も繰り返されます。

人が自らを自然の一部と感じ、山を深く知り愛することが、山を楽しむことに通じることは間違いありません。


 

(熊五郎)

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