奥多摩の尾根を比較する

投稿日 2026年11月01日

奥多摩三大急登尾根の傾斜を比較する
(3D)はカシミール3Dのシミュレーション
(実測)は実際に登ったときのGPS軌跡

これまで秩父や北関東の山を主に登っていたのですが、数年前から奥多摩に目が向くようになって、これまでに約20回ほど奥多摩の山々に通いました。雲取山、酉谷山と長沢背稜線の山々、鷹ノ巣山、六ッ石山、三頭山、御前山、鋸山、大岳山、天地山、御岳山、日の出山、馬頭刈山、川乗り山、本仁田山などなど。ここでは、それらの山に登るために使った尾根の傾斜を比較してみたいと思います。

奥多摩の尾根と言えば「奥多摩三大急登」と言われる、

鷹ノ巣山稲村岩尾根
六ッ石山水根-石尾根間
本仁田山大休場尾根

の三つがあります。このうち鷹ノ巣山稲村岩尾根は長く使用禁止の状態で、今でも登ることができません。私が登ったのははるか昔、GPSの影も形もまだ無いころのことです。二度利用しましたが、一度は稲村岩尾根を往復。二度目は鷹ノ巣沢を遡行したあとの下山に使いました。その頃はまだ若く、さほど急な尾根と感じた記憶はありません。ほかの二つは最近登りましたのでGPSデータがあります。

上のグラフはGPSの軌跡トラックデータ(GPXファイル)で描いています。(実測)は実際に登って測位したデータで描いています。(3D)は地図ソフトのカシミール3Dでシミュレーションしたものです。これを見るとさすがに急登と言われるだけあって傾斜がきついのがうかがえます。傾斜を比べればいずれもよく似ており、六ッ石山水根-石尾根間と本仁田山大休場尾根は約1.7kmで680m登り、距離・傾斜とも酷似しています。稲村岩尾根(3D)は、約2.6kmで高差1000mを登ります。いずれの尾根も傾斜角度はほぼ一定で、途中に緩斜面の踊り場的なものはありません。ひたすら登らせれる尾根と言えます。ただしカシミール3Dの標高データは5m精度ですので、実際とは異なります。

水根-石尾根間と大休場尾根は実際に歩いた実測データでも描いて見ました。ちょっと見にくいですが、カシミール3Dのシミュレーションと似たデータが採れています。よく見ると大休場尾根は途中に一旦緩くなっている部分がありますが、これはGPSの測位の乱れです。ここは実際は暗い急斜面で、当日の天候が悪く測位衛星が不足したものと思います。先に書いたように稲村岩尾根の実測データはありません。実際に登った感じでは、水根-石尾根間は植林帯をもくもくと登る感じで急登と感じました。大休場尾根はあまり利用されていない印象で、天気も悪かったこともあり暗い感じの道でしたが、急登とは感じませんでした。

その尾根を急登と感じるかどうかはその人個人によって感じ方は様々です。ある程度の傾斜でも長ければ急登と感じるかも知れません。上の三大急登では、水根-石尾根間と大休場尾根は距離が短いのでさほど苦にならず終わってしまい、稲村岩尾根は距離が長いので、疲れが出てきて急登と感じるかも知れません。また、短時間でも胸突き八丁のような、手を伸ばせば地面に届くような急斜面は里山でもあります。急斜面でも杣道をうまく利用し電光に登っていくようにうまく付けられた登山道では見上げるような斜面でも、あまり急と感じなかったりもします。

さて、奥多摩のほかの尾根はどうでしょうか。三大急登はいきなりの急斜面と言えますが、多くの尾根もよくいきなりの急登になっていることがあります。それは尾根末端が沢で削られるからで、尾根に取付いてから尾根上に乗るまでの100mくらいの急斜面と格闘することは多いのです。ここで体力を消耗しないようにすることが登山のコツと言えます。

ここでは奥多摩の有名な山に登る尾根を比較してみましょう。登山口を0mとしています。

奥多摩の有名な尾根5つの傾斜を比較してみました
登山口を0mに合わせてあります

ここでは以下の尾根を比較してみました。

棒杭尾根:倉沢谷の奥にある短い尾根で、長沢背稜線の三ッドッケと蕎麦粒山の中間に出る
サルギ尾根:上養沢から大岳山に登る尾根
ヨコスズ尾根:東日原から一杯水避難小屋に至る長い尾根
大休場尾根:安寺沢から本仁田山に登る奥多摩三大急登のひとつ
大ブナ尾根:奥多摩湖から御前山に登る尾根

棒杭尾根は倉沢谷の林道を歩きだけで高差約280m稼ぎます。最奥の棒杭尾根に取付くと約2kmで600m登ります。サルギ尾根は取り付きからいきなり急ですが徐々に傾斜が緩み高岩山から一旦下り、登り返しが急ですがそのあと大岳山までは緩くなります。途中で一服できる尾根と言えます。ヨコスズ尾根は取り付きからいきなり急でしばらく続きます。徐々に傾斜が緩まり上半分は快適なきれいな尾根です。大休場尾根は林道歩きで約200m稼ぎます。そのあと取付いたらいきなり急登がはじまり、あまり雰囲気のよくない暗い斜面の急登となり、上部も急ですが快適となって本仁田山山頂に出ます。苦労して登ったわりに山頂の展望が無いのが残念。大ブナ尾根は御前山に登る有名な尾根です。小河内ダムから最初のピークまでが急だなと分かりますが、取り付くと実際急登がはじまります。途中のサス沢山で展望が得られます。この尾根は登りっぱなしではなく、途中数か所踊り場があります。季節によってはカタクリがみられる美しい尾根です。

グラフが立っている尾根ほど急傾斜なので、このように比べてみると、なるほど大休場尾根が急であることが分かります。ただ、よく見るとほかの尾根でも部分的には同じような急傾斜の部分があり、それが短いか、長いかの違いとも言えます。大休場尾根は距離約1.7kmほどで680mの高差を稼ぎます。同じような傾斜は大ブナ尾根の下部やサルギ尾根の下部にもありますが、約1kmで300mほど稼ぐもののその後緩みます。

尾根は子気味よく高度を稼ぎ、露岩で面白く、適度に展望も開け、気持ちがよければ急斜面も気にならないといったところでしょうか。

(雅熊)

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