北アルプス 蝶ヶ岳、常念岳周回ルート
2010年8月2-3日 単独
投稿日 2010年08月07日
安曇野市堀金 三股から蝶ヶ岳、常念岳、前常念岳周回ルートの記録です。
2日 晴れときどき曇り
3日 晴れのち霧、雨
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常念岳と前常念岳(右端)
8月2日の夜、長野県松本市と安曇野市に集中豪雨があった。
その夜、私は北アルプスの蝶ヶ岳キャンプサイトのテントの中に居た。
夕刻、目の高さに入道雲がモクモクと成長し、先端部だけが赤く夕日を受けていた。
その数時間後、ラジオは盛んに松本市と安曇野市に集中豪雨の警報を流していた。
直線で15kmくらいしか離れていないところにゴウゴウと雨が降っていることをまったく感じさせないほど、
蝶ヶ岳の稜線は静かだった。
雨はテントを少しぬらすほど降ったが、強風で有名なこの稜線にはそよ風が吹いていた。
その後ほとんど夜通し、松本方面の稲光がやむことがなかった。
幸い山に雷が来ることはなかった。
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蝶ヶ岳からの穂高 今年の残雪は多めとのこと
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蝶ヶ岳からの槍ヶ岳
蝶ヶ岳は、槍、穂高の絶好の展望台として有名だ。
ここから見る槍、穂高は、その形、スケール、美しさ、どれをとっても最高と言ってよい。
しかも東面であるから、朝日で赤く輝くモルゲンロートの槍、穂高を見ることもできる。
蝶ヶ岳そのものは、丸い特徴のない山体であるが、安曇野から車で少し入り、
装備が軽ければ5時間くらいで、その素晴らしい大展望を味わうことができる貴重な位置にある山である。
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蝶ヶ岳山頂から 蝶ヶ岳ヒュッテとキャンプサイト
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蝶ヶ岳山頂 遠方に槍ヶ岳
北アルプスの山は、登り始めるとすぐに森林限界を出て、
展望のよい尾根歩きになるようなイメージがあるが、
三股から蝶ヶ岳のルートは、稜線が目前に近づくまで樹林を出ない。
下部は雑林、中間部は針葉樹、最上部は丈の低いダケカンバになっている。
稜線上は這い松とガレ場で、二重稜線のような幅の広い稜線に蝶ヶ岳ヒュッテがある。
キャンプサイトはヒュッテ近くのくぼ地にあり、風が防げて快適な場所だ。
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蝶ヶ岳から常念岳への稜線 三角のピークは蝶槍、遠くに大天井岳
蝶槍(ちょうやり)からは少し下って、再び樹林帯に入る。
常念岳を目の前にして、2,3のピークを越える。
鞍部に小さな池があり、ピークの斜面はお花畑になっており、蝶々やトンボが飛び交っている。
面白いのは、最後の鞍部で、突然はっきりと花崗岩が現れることだ。
常念岳は花崗岩でできており、斜面に多く散在する白い岩はほとんどが花崗岩である。
その花崗岩の白が、常念岳の美しさをかもし出している。
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常念岳山頂
常念岳山頂は花崗岩の大きな岩で覆われており、ゆっくり休息するスペースもない。
前常念へは花崗岩の散在する尾根を、岩をピョンピョン飛びながら進む。
残念ながらこのあたりからガスの中に入り、展望がなくなる。
黄色や赤ペンキの目印を確認しながら降りる。
這い松の稜線で二度ライチョウを見たが、いずれもオスだった。
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前常念岳の石室
大きな岩の稜線の先端に前常念の三角点があり、そのすぐ下に赤い屋根の石室がある。
石室から急降下となり、ザレもあるので注意が必要。
やがて樹林帯に入り、約37度もある急勾配を慎重に降りてゆく。
私は石室から三股まで4時間40分を要した。
疲れた身体には、この下りは辛い。
非常に急で長い道だが、沢音が近づいてくると三股は近い。
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以下は、データ。ご参考まで。
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ルート図(カシミール3Dで作画) 長野県安曇野市掘金村 蝶ヶ岳、常念岳周辺
行程と所要時間(写真を撮りながらのゆっくりペースです)
1日目(7時間24分)
04:50 0.00 三股
05:23 0.33 常念への分岐
05:30 1.07 つり橋
07:34 2.04 まめうち平
09:00 1.26 蝶沢
11:20 2.20 最終ベンチ
12:14 0.56 蝶ヶ岳山頂、蝶ヶ岳キャンプサイト
2日目(11時間16分)
05:54 0.00 蝶ヶ岳キャンプサイト
06:31 0.37 横尾分岐
06:42 0.09 2664m
06:58 1.16 蝶槍
07:44 0.46 池
08:01 0.17 2592m
11:14 3.13 常念岳山頂
11:35 0.21 前常念への分岐
12:30 0.55 前常念岳
12:31 0.01 前常念石室
17:10 4.39 三股
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ルート断面図(カシミール3Dで作画)
-三股の駐車場にマイカーを駐車 奥に砂利道が続いている
-砂利道を20分ほど歩くと管理小屋があり、登山届けを出す
-管理小屋から数分で鉄橋があり、常念岳への道を分ける
-すぐにつり橋をわたる。
-少し登ると、このルート最後の水場 力水がある
-広葉樹の森から針葉樹が混ざる道を辿る
-少し平らなまめうち平に出る
-常念、前常念が木々の間から見える。
-はるか高くに蝶ヶ岳ヒュッテの一部が見える
-やがて背の低いダケカンバが現れ、草地となり最終ベンチがある
-草地を登ると、くぼ地に大滝山への分岐がある
-這い松があらわれ、ほどなくキャンプサイトの横に出る
-蝶ヶ岳の山頂は、キャンプサイトの少し上にある。
-蝶ヶ岳ヒュッテとキャンプサイトは50mくらい離れている
-蝶ヶ岳ヒュッテにテン泊の申し込みをする(500円/張)
-水はヒュッテで購入できる(150円/L)
-トイレはヒュッテのもの利用
-キャンプサイトは20張りくらい可能 稜線上のくぼ地にあり、風当たりの面で有利
-蝶ヶ岳から蝶槍までは、這い松の広い稜線(二重稜線のようになっている)
-途中横尾への道を分ける(指導標あり)
-蝶槍の常念側を少し下ると、樹林帯に入る
-鞍部に小さな池がある
-いくつかのピークを越えると、最後の小さな鞍部で突然花崗岩に変わり常念への登りが始まる
-常念への登りはさほど急ではないが長い 右は切れ落ちている
-常念手前の2592mのピーク周辺に花が多い
-常念岳の山頂は岩だらけで狭く安定しない 祠と方位板があるが、三角点はない
-常念山頂から少し下ったところに、前常念への分岐(指導標あり)がある
-前常念の尾根は、花崗岩の大きな岩の上を飛びながら行く
-この尾根の二箇所でライチョウのオスと出遭う
-前常念手前の常念小屋へのトラバース道(分岐点に指導標あり)は現在使用不能
-前常念岳には三角点がある。すぐ下に赤い屋根の石室がある
-ガレ場を黄色、赤の○印、矢印を拾いながら岩とザレの急斜面を下る
-やがて森林限界点となり、樹林に入る
-しばらく急だが、やがて傾斜がゆるくなり、2207m点に出る
-しばらく行くと道は急になり、大きなジグザグで急降下する
-やがて小さなジグザグ道となり、左方向に進む
-沢音がはっきりしてくると三股は近い
-沢に出ると水が得られる。(水場は登山口に近いここだけ)
-間もなく三股の管理小屋近くの分岐に戻る
-コース全体的に指導標は少ないが、前常念と森林限界の間は黄色、赤ペンキの目印が多くつけられており、忠実に拾っていけば迷うことはない。
(熊五郎)
コメント(5)
- お一人でとことこ歩くんですか。男のロマンだなってちょっと思いました。豪雨より上にいるってことになりますか。国際線の飛行機はいつも晴れの中を飛んでいますものね。空気が美味しいでしょうね。 2010/8/7(土) 午後 8:04
- agewisdomさん、写真の稜線は標高2600mですが、これ位の高さになると平地に発達した雷雲は、横からみることになりますね。このときは残念ながら頭の部分だけでした。飛行機は10000mですからほとんど雲の上だと思います。2600mでも空気は薄く感じます。最近のライターは点火しないものがあり、要注意です。実際2つ持っていきましたが、片方はまったく点かず、もう一方は10回に1回程度。もちろん2つとも家では問題なく点きます。当日高山病で歩けなくなった人がいました。ヒュッテには救護施設があり、シーズン中は医者?も待機しているようです。2日目は11時間以上歩きましたから、疲労困憊でした。(熊五郎) 2010/8/7(土) 午後 8:31
- 久しぶりに充実した夏山らしい、山行記を読んだ気がします。熊五郎さんが北アに行くと聞いていたので、前線の接近が気になっていましたが、眼下の雷雨で幸運でしたね。私は、以前南八ヶ岳の行者小屋の前で野営をした際、秋口だったかな?激しい豪風雨に見舞われ、ダンロップのドーム型テントのポールが折れ、最初は折り畳み傘をテント内で広げて、何とかしのいでいましたが、ついにテントの下を豪流が流れ始め、流されそうになったので、小屋に避難した(させられた)経験があります。
熊五郎さんは、ラッキーでしたね。モルゲンロートも美しい。写真を見れば、天幕の数も少なそう。快適な野営だったでしょうね。しかし、三股からの標高差1,400mはかなりきつかったでしょう。特に、下りの37度?!の急勾配!殆ど垂直。スキーならビビッちゃう角度ですよね。とまれ、ご無事で何より。また、表銀座を避けて、常念・蝶という渋いコースを選んだのもこの季節北アにはミーハーが多いので正解。のんびり空中漫歩を、読者としても楽しませて頂きました。自分も早く体調を戻して、山行したいです! [ 朝刊太郎 ] 2010/8/11(水) 午前 10:59 - 追記:トップページに添付されていた、新妻聖子さんの曲を聴きながら、常念・蝶の山行記を読みました。少し精神的に参っていた時だったので、心が安らぎました。有難うございます。 [ 朝刊太郎 ] 2010/8/11(水) 午前 11:14
- 朝刊太郎さん、じっくり読んでいただきありがとうございます。新妻聖子の映画「アンダンテ -稲の旋律-」は癒される映画です。映画の最後に新妻聖子が「稲の旋律」を歌います。そういえば先日「剱岳 -点の記-」がテレビ放映されてましたね。朝刊太郎さんと剱岳に行けることを楽しみにしています。今回の山行は北アルプスとしてその入りやすさから選びました。登ってみてその展望の美しさにびっくりしました。手始めとしてこの山を選んでよかったと思っています。北アルプスは朝刊太郎さんのほうが詳しいと思いますから、一緒に行行けるとよいのですが.... (熊五郎) 2010/8/11(水) 午後 2:29